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    低圧電気取扱業務特別教育でEV・ハイブリッド車を整備できるか―電気自動車等の整備の特別教育の時間数、前に受けた教育の扱い、整備士資格で省ける科目、記録と罰則

    整備士オンライン編集部
    2026年10月21日 19:39
    約37分
    低圧電気取扱業務特別教育でEV・ハイブリッド車を整備できるか―電気自動車等の整備の特別教育の時間数、前に受けた教育の扱い、整備士資格で省ける科目、記録と罰則

    目次

    低圧電気取扱業務特別教育でできる作業
    対象になる車と作業
    学科6時間と実技1時間
    前に受けた教育の扱い
    整備士資格で省ける科目
    誰が教えるか
    記録の保存と罰則
    出典
    一次情報(法令・告示)
    一次情報(厚生労働省の通達・資料)
    準一次情報(講習の実施団体)
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    ハイブリッド車や電気自動車の整備に整備士を就かせるときに会社が行う特別教育は、2019年10月1日から「低圧電気取扱業務」の特別教育とは別の教育になっています。労働基準協会が開く低圧電気取扱業務特別教育の案内にも、「電気自動車等の整備の業務」はこの教育から除かれていると書かれています。

    低圧電気取扱業務特別教育は学科7時間と実技7時間の講習です(開閉器の操作だけを行う人は実技1時間)。2019年10月より後に整備士をこの講習へ出した会社は、受講料を払い、8時間から14時間をかけても、EV・ハイブリッド車に特有の科目を教えたことになりません。

    2024年10月1日には対象になる車の電圧の上限も外れました。前に受けた教育がどこまで通用するか、整備士資格でどの科目を省けるかは、受けた時期と持っている資格で変わります。

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    低圧電気取扱業務特別教育でできる作業

    低圧電気取扱業務特別教育はもともと工場などの電気設備を扱う人を想定した教育です。労働安全衛生規則が挙げる作業は、低圧(直流750ボルト以下、交流600ボルト以下)の充電電路の敷設と修理、配電盤室や変電室にある、充電部分がむき出しの開閉器の操作です。どちらも、対地電圧が50ボルト以下のものと、電信用・電話用など感電の危害のおそれがないものは除かれます。

    2019年10月の改正で、この作業の範囲から電気自動車等の整備が抜け、別の号に移りました。今の条文は次のとおりです。

    四の二 対地電圧が五十ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備の業務

    教育の中身も分かれました。低圧電気取扱業務の学科は配電設備・変電設備や活線作業(電気を通したまま行う作業)の方法が中心です。EV・ハイブリッド車の整備の教育はインバーターや駆動用バッテリーなど車の電気装置と、停電させてから作業する方法を中心に組まれています。

    上に書いた対象の条件に当たる、工場の低圧の配線を敷設・修理する作業や、充電部分がむき出しの開閉器を操作する作業は、今も低圧電気取扱業務特別教育の対象です。車の整備の特別教育を受けた人がこれらの作業をするときは、低圧電気取扱業務特別教育が別に要ります。

    対象になる車と作業

    対象は対地電圧が50ボルトを超える蓄電池を積んだ自動車です。厚生労働省の通達はハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車(エンジンを持たないもの)、燃料電池自動車が含まれるとしています。バッテリー式のフォークリフトなどの荷役運搬機械と、バッテリー式のドラグ・ショベルなどの建設機械も含まれます。

    2024年9月30日までは条文に「低圧の蓄電池」とあり、対象は電池の電圧が直流750ボルト以下の車に限られていました。厚生労働省の検討会が2024年3月にまとめた報告書は、当時流通していた電気自動車等の駆動用電池を「最大でも400ボルト程度」としたうえで、750ボルトを超える電池の車が近く一般的になると見込み、上限を外すよう求めました。改正で「低圧の」が消え、750ボルトを超える電池の車も同じ特別教育の対象になっています。

    条文は「整備の業務」と書くだけで、高電圧の部品に触れる作業に限るとは書いていません。オイル交換やタイヤ交換のような作業がどこまで含まれるかは、この記事で確かめた条文・告示、基発0612第22号とその別紙、2019年と2024年の検討会の報告書には示されていません。教育の範囲を検討した2019年の報告書は、通常の点検・整備に加え、事故車が持ち込まれたときの点検・整備も対象として扱っています。

    2019年の報告書は駆動用バッテリーの部品交換などの修理と丸ごとの交換を、一般の整備士を対象とした特別教育の範囲に含めないとしました。理由は、こうした修理を行うのはバッテリーメーカーの工場か、メーカーから特別に指定を受けた整備工場で、作業者はメーカーから専門の教育を受けているからです。教育の中身から外したもので、条文の対象業務から外したものではありません。

    学科6時間と実技1時間

    教育の科目と時間は、安全衛生特別教育規程という厚生労働省の告示が決めています。表の時間は最低限で、どの科目も表の時間以上で行うものとされています。

    区分科目範囲時間
    学科電気に関する基礎知識電気の危険性、短絡、漏電、接地、電気絶縁1時間
    学科電気装置に関する基礎知識車の仕組みと種類、コンバータとインバータ、配線、駆動用蓄電池と充電器、駆動用原動機と発電機、電気使用機器、保守と点検2.5時間
    学科安全作業用具に関する基礎知識絶縁用保護具、絶縁用防具、絶縁工具と絶縁テープ、検電器、その他の安全作業用具、管理0.5時間
    学科自動車の整備作業の方法充電電路の防護、作業者の絶縁保護、停電の方法、停電電路に対する措置、作業管理、救急処置、災害防止1時間
    学科関係法令労働安全衛生法・施行令・規則の関係する条項1時間
    実技自動車の整備作業の方法絶縁用保護具などの使い方、停電のための操作など1時間

    合わせて学科6時間、実技1時間です。低圧電気取扱業務特別教育は学科7時間で、実技は充電電路の敷設・修理をする人が7時間、開閉器の操作だけを行う人が1時間です。

    通達は各科目の範囲に入るものを次のように挙げています。

    • 配線には駆動用バッテリーからモーターまでの配線と、12ボルトバッテリーなどからエアコンなどへの配線(サービスプラグなどを含む)
    • 駆動用蓄電池にはバッテリー内部の電解液などの化学物質の知識
    • 絶縁用保護具には絶縁手袋と絶縁用の靴。停電させる操作をするときに、耐電圧の性能が合ったものを選ぶ知識も含む
    • 絶縁用防具には絶縁シート、検電器にはサーキットテスターと絶縁抵抗計、その他の安全作業用具には保護眼鏡
    • 停電の方法にはサービスプラグの取外し・取付け・管理のほか、車の構造に応じたサービスプラグ以外の方法で高電圧の回路を停電させる操作
    • 停電電路に対する措置には残っている電荷を確実に放電させること

    学科はeラーニングでも行えます。厚生労働省の通達は告示の範囲と時間以上を受けたことが確かめられること、講師と、動画を作る人・監修する人に十分な知識や経験があること、受講者の質問に答える体制があることを条件にしています。実技は講師と同じ場所で対面で行うことが条件です。

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    前に受けた教育の扱い

    前に受けた教育が今も通用するかは、受けた時期と教育の種類で決まります。

    前に受けた教育受けた時期750ボルト以下の電池の車750ボルトを超える電池の車
    電気取扱業務の特別教育(低圧電気取扱業務など)2019年9月30日まで改めて受けなくてよい追加の教育が要る
    電気自動車等の整備の特別教育(2024年改正前の内容)2019年10月1日から2024年9月30日まで改めて受けなくてよい追加の教育が要る
    低圧電気取扱業務特別教育2019年10月1日から2024年9月30日まで中身が重なる科目だけ省ける中身が重なる科目だけ省ける
    電気自動車等の整備の特別教育(今の内容)2024年10月1日からそのままでよいそのままでよい

    表の1行目と2行目の人を750ボルトを超える電池の車の整備に就かせるときは、2024年の改正で教育の範囲に加わった事項を追加で教えます。改正前の電気自動車等の整備の特別教育の全科目について、十分な知識と技能があると認められた人も同じ扱いです。3行目の低圧電気取扱業務特別教育だけを受けた人は、この追加の教育で済む人に入っていません。通達によると、加わったのは高圧の電気の危険性、絶縁材料の絶縁が高圧で壊れることもあるという性質、耐電圧の性能に合った保護具の選び方、絶縁シートなどの絶縁用防具、サービスプラグ以外の停電の方法です。

    この記事で確かめた省令と通達には、750ボルトと比べる電圧に公称値と最大値のどちらを使うかの指定はありません。判断に迷う車は、メーカーの整備書や技術窓口で確かめてください。

    2019年10月以降に受けた低圧電気取扱業務特別教育で省けるのは、EVの教育と中身が重なる科目です。低圧電気取扱業務の教育には車の電気装置(学科2.5時間)と自動車の整備作業の方法(学科1時間、実技1時間)にあたる科目がありません。2024年10月以降に受けた低圧電気取扱業務特別教育は、通達の経過措置に挙がっていません。科目を省くかどうかは、次の節と同じく、事業者が本人の知識と技能を見て決めます。

    整備士資格で省ける科目

    労働安全衛生規則は科目の全部か一部について十分な知識と技能があると認められる労働者には、その科目を省いてよいとしています。通達は自動車整備士についてこの扱いを具体的に書いています。

    この資格を持つ人について通達が具体的に示す省略科目は、学科の「電気に関する基礎知識」(1時間)の1つです。対象は次の12の資格で、業務に必要な教育や研修を受けた経歴などから、電気の危険性の基礎知識があると認められる人です。

    • 一級大型自動車整備士、一級小型自動車整備士、一級二輪自動車整備士
    • 二級ガソリン自動車整備士、二級ジーゼル自動車整備士、二級自動車シャシ整備士、二級二輪自動車整備士
    • 三級自動車シャシ整備士、三級自動車ガソリン・エンジン整備士、三級自動車ジーゼル・エンジン整備士、三級二輪自動車整備士
    • 自動車電気装置整備士

    自動車タイヤ整備士と自動車車体整備士は、この一覧にありません。

    一級の整備士でも、資格を理由に通達が省いてよいとしているのはこの1時間だけです。2019年の検討会の報告書は、電気自動車等の仕組みや種類、コンバータやインバータ、モーターなど電気自動車等に特有の構造は整備士の養成課程の教育内容に含まれていないとして、資格を持つ人にも特別教育で基本を身につけさせる必要があるとしています。

    誰が教えるか

    特別教育は、会社が社内で行っても、外部の講習に出して行ってもかまいません。どちらの場合も、教育は事業者の責任で行うものです。

    講師に資格の決まりはありません。ただし、通達は学科と実技の科目について十分な知識や経験がある人でなければならないとしています。

    外部の講習では、例えば千葉県自動車整備振興会の2026年2月6日の回は、案内では9時30分から17時までの1日で、受講料は会員7,000円、会員外12,500円(税込)とされていました。受講対象は自動車整備士の資格を持つ人(自動車タイヤ整備士と自動車車体整備士を除く)で、修了すると修了証が出て、整備士手帳を持つ人には手帳に修了の証明印を押すとしています。

    特別教育を受けている時間は労働時間です。厚生労働省は所定労働時間内に行うのが原則で、法定労働時間を超えて行えば割増賃金が要るとしています。外部の講習の受講料や旅費も、事業者が負担するものとしています。

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    記録の保存と罰則

    特別教育を行った事業者は、受講者と科目などの記録を作り、3年間保存します。

    特別教育をせずに労働者をEV・ハイブリッド車の整備に就かせた場合、違反した人は6か月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金です。違反が会社の業務として行われたときは、会社にも50万円以下の罰金が科されます。

    2026年10月の時点では、特別教育の義務は事業者が雇っている労働者に対して負うもので、人を雇わずに1人で整備している人にはかかりません。

    2027年4月1日からは労働安全衛生法の改正で、個人事業者と、一定の人数以下の労働者を使う事業者(法人なら代表者や役員)が自分で作業する場合、労働者と同じ場所で特別教育の対象の業務に就くときは、自分も特別教育を受けなければならなくなります。例えば、法令で定める人数の条件を満たす会社の社長が従業員と同じ場所で対象の整備の業務に就く場合や、人を雇わない個人の整備士が他社の労働者と同じ場所で対象の整備の業務に就く場合が当たります。

    高電圧の部品に触れる危険は、雇われているかどうかで変わりません。2019年の報告書は、整備の現場ではメーカーの整備要領書に従ってサービスプラグを外し、電圧が下がってから作業していることを前提に教育の中身を決めています。1人で整備する人も、整備要領書の停電の手順と保護具の決まりに従って作業します。

    整備士の資格をこれから取る人と、取らせる会社は、自動車整備士の技術講習が「総合」に替わる―後期の受付日、県ごとの開講時期、修了した講習はどの試験に効くかで講習の受付日と開講時期をご覧ください。

    出典

    一次情報(法令・告示)

    • e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(第36条第4号・第4号の2、第37条、第38条、附則〈令和元年厚生労働省令第33号〉第2項) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000032
    • e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(第59条、第119条、第122条) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057
    • e-Gov法令検索「労働安全衛生法」2027年4月1日施行の版(第42条第3項、第59条第4項) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057/20270401_507AC0000000033
    • 厚生労働省 法令等データベース「安全衛生特別教育規程」(第6条、第6条の2) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74085000&dataType=0&pageNo=1

    一次情報(厚生労働省の通達・資料)

    • 厚生労働省労働基準局長「電気自動車の整備の業務等に係る特別教育に係る労働安全衛生規則等の改正について」(基発0612第22号、2024年6月12日。北海道労働局の掲載) https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/001852091.pdf
    • 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案及び安全衛生特別教育規程の一部を改正する件(案)の概要(電気自動車等の整備業務に係る特別教育の見直し)」(第161回安全衛生分科会資料) https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001249530.pdf
    • 厚生労働省「電気自動車等の整備業務に必要な特別教育のあり方に関する検討会 報告書」(2024年3月25日) https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001232807.pdf
    • 厚生労働省「電気自動車等の整備業務に必要な特別教育のあり方に関する検討会 報告書」(2019年4月26日) https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000505516.pdf
    • 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案及び安全衛生特別教育規程の一部を改正する件(案)の概要」(2019年の改正) https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001631596.pdf
    • 厚生労働省「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」の改正について(2026年9月2日、改正後の通達を別添) https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001752584.pdf
    • 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「安全衛生キーワード 特別教育」 https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo50_1.html
    • 厚生労働省労働基準局長「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について」(基発0514第1号、2025年5月14日) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9164&dataType=1&pageNo=1
    • 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法 改正の主なポイントについて」 https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001513749.pdf

    準一次情報(講習の実施団体)

    • 千葉県自動車整備振興会「電気自動車等の整備業務特別教育のご案内」 https://caspa.or.jp/koushu/education/EV_sp.pdf
    • 東京労働基準協会連合会 八王子労働基準協会支部「低圧電気取扱業務特別教育【学科+実技1時間】開催のご案内」 https://toukiren.or.jp/shibu/hachiouji/2025/2025kousyuu/2025teiatsu.pdf

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