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ハイブリッド車や電気自動車の整備に整備士を就かせるときに会社が行う特別教育は、2019年10月1日から「低圧電気取扱業務」の特別教育とは別の教育になっています。労働基準協会が開く低圧電気取扱業務特別教育の案内にも、「電気自動車等の整備の業務」はこの教育から除かれていると書かれています。
低圧電気取扱業務特別教育は学科7時間と実技7時間の講習です(開閉器の操作だけを行う人は実技1時間)。2019年10月より後に整備士をこの講習へ出した会社は、受講料を払い、8時間から14時間をかけても、EV・ハイブリッド車に特有の科目を教えたことになりません。
2024年10月1日には対象になる車の電圧の上限も外れました。前に受けた教育がどこまで通用するか、整備士資格でどの科目を省けるかは、受けた時期と持っている資格で変わります。
低圧電気取扱業務特別教育はもともと工場などの電気設備を扱う人を想定した教育です。労働安全衛生規則が挙げる作業は、低圧(直流750ボルト以下、交流600ボルト以下)の充電電路の敷設と修理、配電盤室や変電室にある、充電部分がむき出しの開閉器の操作です。どちらも、対地電圧が50ボルト以下のものと、電信用・電話用など感電の危害のおそれがないものは除かれます。
2019年10月の改正で、この作業の範囲から電気自動車等の整備が抜け、別の号に移りました。今の条文は次のとおりです。
四の二 対地電圧が五十ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備の業務
教育の中身も分かれました。低圧電気取扱業務の学科は配電設備・変電設備や活線作業(電気を通したまま行う作業)の方法が中心です。EV・ハイブリッド車の整備の教育はインバーターや駆動用バッテリーなど車の電気装置と、停電させてから作業する方法を中心に組まれています。
上に書いた対象の条件に当たる、工場の低圧の配線を敷設・修理する作業や、充電部分がむき出しの開閉器を操作する作業は、今も低圧電気取扱業務特別教育の対象です。車の整備の特別教育を受けた人がこれらの作業をするときは、低圧電気取扱業務特別教育が別に要ります。
対象は対地電圧が50ボルトを超える蓄電池を積んだ自動車です。厚生労働省の通達はハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車(エンジンを持たないもの)、燃料電池自動車が含まれるとしています。バッテリー式のフォークリフトなどの荷役運搬機械と、バッテリー式のドラグ・ショベルなどの建設機械も含まれます。
2024年9月30日までは条文に「低圧の蓄電池」とあり、対象は電池の電圧が直流750ボルト以下の車に限られていました。厚生労働省の検討会が2024年3月にまとめた報告書は、当時流通していた電気自動車等の駆動用電池を「最大でも400ボルト程度」としたうえで、750ボルトを超える電池の車が近く一般的になると見込み、上限を外すよう求めました。改正で「低圧の」が消え、750ボルトを超える電池の車も同じ特別教育の対象になっています。
条文は「整備の業務」と書くだけで、高電圧の部品に触れる作業に限るとは書いていません。オイル交換やタイヤ交換のような作業がどこまで含まれるかは、この記事で確かめた条文・告示、基発0612第22号とその別紙、2019年と2024年の検討会の報告書には示されていません。教育の範囲を検討した2019年の報告書は、通常の点検・整備に加え、事故車が持ち込まれたときの点検・整備も対象として扱っています。
2019年の報告書は駆動用バッテリーの部品交換などの修理と丸ごとの交換を、一般の整備士を対象とした特別教育の範囲に含めないとしました。理由は、こうした修理を行うのはバッテリーメーカーの工場か、メーカーから特別に指定を受けた整備工場で、作業者はメーカーから専門の教育を受けているからです。教育の中身から外したもので、条文の対象業務から外したものではありません。
教育の科目と時間は、安全衛生特別教育規程という厚生労働省の告示が決めています。表の時間は最低限で、どの科目も表の時間以上で行うものとされています。
| 区分 | 科目 | 範囲 | 時間 |
|---|---|---|---|
| 学科 | 電気に関する基礎知識 | 電気の危険性、短絡、漏電、接地、電気絶縁 | 1時間 |
| 学科 | 電気装置に関する基礎知識 | 車の仕組みと種類、コンバータとインバータ、配線、駆動用蓄電池と充電器、駆動用原動機と発電機、電気使用機器、保守と点検 | 2.5時間 |
| 学科 | 安全作業用具に関する基礎知識 | 絶縁用保護具、絶縁用防具、絶縁工具と絶縁テープ、検電器、その他の安全作業用具、管理 | 0.5時間 |
| 学科 | 自動車の整備作業の方法 | 充電電路の防護、作業者の絶縁保護、停電の方法、停電電路に対する措置、作業管理、救急処置、災害防止 | 1時間 |
| 学科 | 関係法令 | 労働安全衛生法・施行令・規則の関係する条項 | 1時間 |
| 実技 | 自動車の整備作業の方法 | 絶縁用保護具などの使い方、停電のための操作など | 1時間 |
合わせて学科6時間、実技1時間です。低圧電気取扱業務特別教育は学科7時間で、実技は充電電路の敷設・修理をする人が7時間、開閉器の操作だけを行う人が1時間です。
通達は各科目の範囲に入るものを次のように挙げています。
学科はeラーニングでも行えます。厚生労働省の通達は告示の範囲と時間以上を受けたことが確かめられること、講師と、動画を作る人・監修する人に十分な知識や経験があること、受講者の質問に答える体制があることを条件にしています。実技は講師と同じ場所で対面で行うことが条件です。
前に受けた教育が今も通用するかは、受けた時期と教育の種類で決まります。
| 前に受けた教育 | 受けた時期 | 750ボルト以下の電池の車 | 750ボルトを超える電池の車 |
|---|---|---|---|
| 電気取扱業務の特別教育(低圧電気取扱業務など) | 2019年9月30日まで | 改めて受けなくてよい | 追加の教育が要る |
| 電気自動車等の整備の特別教育(2024年改正前の内容) | 2019年10月1日から2024年9月30日まで | 改めて受けなくてよい | 追加の教育が要る |
| 低圧電気取扱業務特別教育 | 2019年10月1日から2024年9月30日まで | 中身が重なる科目だけ省ける | 中身が重なる科目だけ省ける |
| 電気自動車等の整備の特別教育(今の内容) | 2024年10月1日から | そのままでよい | そのままでよい |
表の1行目と2行目の人を750ボルトを超える電池の車の整備に就かせるときは、2024年の改正で教育の範囲に加わった事項を追加で教えます。改正前の電気自動車等の整備の特別教育の全科目について、十分な知識と技能があると認められた人も同じ扱いです。3行目の低圧電気取扱業務特別教育だけを受けた人は、この追加の教育で済む人に入っていません。通達によると、加わったのは高圧の電気の危険性、絶縁材料の絶縁が高圧で壊れることもあるという性質、耐電圧の性能に合った保護具の選び方、絶縁シートなどの絶縁用防具、サービスプラグ以外の停電の方法です。
この記事で確かめた省令と通達には、750ボルトと比べる電圧に公称値と最大値のどちらを使うかの指定はありません。判断に迷う車は、メーカーの整備書や技術窓口で確かめてください。
2019年10月以降に受けた低圧電気取扱業務特別教育で省けるのは、EVの教育と中身が重なる科目です。低圧電気取扱業務の教育には車の電気装置(学科2.5時間)と自動車の整備作業の方法(学科1時間、実技1時間)にあたる科目がありません。2024年10月以降に受けた低圧電気取扱業務特別教育は、通達の経過措置に挙がっていません。科目を省くかどうかは、次の節と同じく、事業者が本人の知識と技能を見て決めます。
労働安全衛生規則は科目の全部か一部について十分な知識と技能があると認められる労働者には、その科目を省いてよいとしています。通達は自動車整備士についてこの扱いを具体的に書いています。
この資格を持つ人について通達が具体的に示す省略科目は、学科の「電気に関する基礎知識」(1時間)の1つです。対象は次の12の資格で、業務に必要な教育や研修を受けた経歴などから、電気の危険性の基礎知識があると認められる人です。
自動車タイヤ整備士と自動車車体整備士は、この一覧にありません。
一級の整備士でも、資格を理由に通達が省いてよいとしているのはこの1時間だけです。2019年の検討会の報告書は、電気自動車等の仕組みや種類、コンバータやインバータ、モーターなど電気自動車等に特有の構造は整備士の養成課程の教育内容に含まれていないとして、資格を持つ人にも特別教育で基本を身につけさせる必要があるとしています。
特別教育は、会社が社内で行っても、外部の講習に出して行ってもかまいません。どちらの場合も、教育は事業者の責任で行うものです。
講師に資格の決まりはありません。ただし、通達は学科と実技の科目について十分な知識や経験がある人でなければならないとしています。
外部の講習では、例えば千葉県自動車整備振興会の2026年2月6日の回は、案内では9時30分から17時までの1日で、受講料は会員7,000円、会員外12,500円(税込)とされていました。受講対象は自動車整備士の資格を持つ人(自動車タイヤ整備士と自動車車体整備士を除く)で、修了すると修了証が出て、整備士手帳を持つ人には手帳に修了の証明印を押すとしています。
特別教育を受けている時間は労働時間です。厚生労働省は所定労働時間内に行うのが原則で、法定労働時間を超えて行えば割増賃金が要るとしています。外部の講習の受講料や旅費も、事業者が負担するものとしています。
特別教育を行った事業者は、受講者と科目などの記録を作り、3年間保存します。
特別教育をせずに労働者をEV・ハイブリッド車の整備に就かせた場合、違反した人は6か月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金です。違反が会社の業務として行われたときは、会社にも50万円以下の罰金が科されます。
2026年10月の時点では、特別教育の義務は事業者が雇っている労働者に対して負うもので、人を雇わずに1人で整備している人にはかかりません。
2027年4月1日からは労働安全衛生法の改正で、個人事業者と、一定の人数以下の労働者を使う事業者(法人なら代表者や役員)が自分で作業する場合、労働者と同じ場所で特別教育の対象の業務に就くときは、自分も特別教育を受けなければならなくなります。例えば、法令で定める人数の条件を満たす会社の社長が従業員と同じ場所で対象の整備の業務に就く場合や、人を雇わない個人の整備士が他社の労働者と同じ場所で対象の整備の業務に就く場合が当たります。
高電圧の部品に触れる危険は、雇われているかどうかで変わりません。2019年の報告書は、整備の現場ではメーカーの整備要領書に従ってサービスプラグを外し、電圧が下がってから作業していることを前提に教育の中身を決めています。1人で整備する人も、整備要領書の停電の手順と保護具の決まりに従って作業します。
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