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警告灯が消えていても、車のコンピューターには故障の記録が残っていることがあります。この記録がDTC(故障コード、ダイアグコード)で、「P0300」のような5文字の英数字で表されます。
2024年10月からは、車検のOBD検査がこのコードを読んでいます。2026年4〜6月に指定工場で行ったOBD検査では、自動ブレーキやABSなど安全装置のコードが見つかって不適合と判定された車が2,640台ありました。集計した自動車技術総合機構は、整備の途中で記録されたコードが消されないまま残っていた可能性を挙げています。
コードが分かっても、どの部品が壊れたかまでは決まりません。コードを消すと、原因が直っていなくても警告灯がいったん消えることがあり、コードと一緒に消えるものもあります。その中には車検で読まれる記録も入っています。
エンジンやブレーキを制御するコンピューター(ECU)は、センサーの信号をもとに制御しながら、自分の制御に異常がないかを見張っています。この自己診断の機能が車載式故障診断装置(OBD)です。断線やセンサーの異常を見つけると、OBDはその内容を英数字のコードでECUに記録します。このコードがDTC(Diagnostic Trouble Code)です。
コードを読むには、運転席の下あたりにある差し込み口(データリンクコネクタ)に診断機(スキャンツール)をつなぎます。スキャンツールには自動車メーカーが自社の車の整備のために作る専用のものと、工具メーカーが作り複数のメーカーの車に使える汎用のものがあります。
警告灯とコードは別のものです。OBDは異常を見つけるとコードを記録しますが、メーターの警告灯を点けて運転者に知らせるのは、安全上重大な異常に関わるものなど一部のコードだけです。警告灯が点いていない車にも、コードが記録されていることがあります。
2009年版の国の技術基準が定めていた、ガソリン車とLPG車の排出ガスのOBD(J-OBDII)の基準では、触媒を傷めるほどの失火を見つけると、警告灯を点けたままにせず点滅させることになっています(燃料を止めて触媒を守る車は、点滅させなくてもよいとされています)。整備工場には点灯だったか点滅だったかも伝えます。
いまの基準では、ガソリン・LPG・軽油を燃料とする車両総重量3.5t以下の車や軽自動車など(3.5tを超えても、専ら乗用で定員9人以下の車を含む)の排出ガスのOBDは、WLTP-OBDという別の基準に移っています。どの基準が当てはまるかは、車の型式と時期によって違います。この記事でJ-OBDIIの基準として挙げる数字が、新しい車にそのまま当てはまるとは限りません。
コードの形は、国際規格のISO 15031-6と、米国自動車技術会(SAE)の規格SAE J2012が決めています。OBD検査に使う国の技術基準も、故障コードの決め方としてこの2つの規格を挙げています。
SAE J2012の2013年3月改訂版によると、コードは英字1文字と、それに続く4文字でできています。
| 位置 | 表すもの |
|---|---|
| 1文字目 | 系統。P=パワートレイン、C=シャシー、B=ボデー、U=ネットワークと車両統合(ECUどうしの通信など) |
| 2文字目 | 規格が意味を決めた共通コードか、メーカー独自か、規格の予約範囲か(次の表) |
| 3文字目 | 系統の中のどの領域か |
| 4・5文字目 | 領域の中の個々のコード |
3〜5文字目は16進数で、0〜9のほかA〜Fも入ります(例: P042A)。
2文字目の数字の意味は1文字目の英字によって違います。
| コード | 区分 |
|---|---|
| P0、P2 | 共通コード |
| P1 | メーカー独自 |
| P3 | P3000〜P3399はメーカー独自、P3400〜P3999は規格(ISO/SAE)の予約範囲。未使用という意味ではないので、個々のコードの意味はメーカーの資料で確かめる |
| B0、C0、U0 | 共通コード |
| B1、B2、C1、C2、U1、U2 | メーカー独自 |
| B3、C3 | 規格の予約範囲 |
| U3 | メーカー独自と、規格の予約範囲が混ざる |
Pのコードの3文字目は装置のまとまりを表します。規格は、共通コードで100番台と200番台が燃料と空気の計量、300番台が点火系か失火というように分けていて、メーカー独自のコードもできるだけ同じまとまりに合わせるよう勧めています。P0300なら、パワートレインの共通コードで、点火系か失火に関わる異常です。規格は改訂が続いていて、最新の版は2025年9月に出ています。手元のコードの意味は共通コードの一覧かメーカーの資料で引きます。
コードの後ろにハイフンと2桁が付いた7桁の形もあります。国交省がメーカーに特定DTCを届け出てもらう様式の記入例には「P0341」「P0589-15」「C0051-62」が並んでいます。ハイフンの後ろの2桁は同じコードの中で異常の症状をさらに細かく分ける番号です。
車両総重量3.5tを超えるディーゼル車(乗車定員9人以下の乗用車を除く)の排出ガスのOBDは、ISOかSAEの共通コードで表しにくいとき、SAE J1939などの規格に従ったコードを使ってもよいと国の技術基準で認められています。トラックのコードがこの形に当てはまらないときは、メーカーの資料で確かめます。
共通コードはどのメーカーの車でも同じ意味で使う約束のコードです。共通コードの番号と内容はSAE J2012の付属の一覧(SAE J2012-DA)にまとめられていて、コードから意味を引けます。ただし、米メリーランド州環境局が2009年に出した解説は、一部のメーカーが共通コードの意味を変えて使っているとして、コードの意味を確かめるよう勧めています。
P1やB1のようにメーカー独自の区分に入るコードは、そのメーカーだけが使うコードです。形は共通コードと同じでも、意味はメーカーが決めるので、メーカーの整備資料で引きます。
国交省の検討会の最終報告書は、排出ガスのOBDは故障の見つけ方と記録のしかたが法規と規格で統一されている一方、自動ブレーキなど安全装置のOBDではメーカーごとに違うとしています。コードについても法規や規格で共通に定義されている排出ガス関係のものと、メーカーが自由に定義しているものがあると書いています。安全装置のコードの意味を調べるには、メーカーの情報が要ります。
自動車技術総合機構(以下、機構)は、整備に使うスキャンツールがOBD検査の対象装置のすべてのコードを読み取るものであれば、整備で見つからなかったコードがOBD検査で見つかることはない、と答えています。裏を返せば、安全装置のECUまで読めないツールで確かめた車では、整備で見えなかったコードがOBD検査で初めて出ることがあります。
最終報告書はOBDにできないことを次のように整理しています。
報告書は例として、カメラが前方の映像をとらえられないことを示すコードを挙げています。このコードだけではカメラの故障か、一時的なガラスの曇りかを区別できません。
コードで分かるのは、どの系統でどんな異常が起きたかです。どの部品を直すかは、コードを手がかりに点検して決めます。国交省の電子制御装置整備の講習テキストは、自動ブレーキの警告灯が点いたときの点検の例として、計器で補機バッテリーの電圧を測ること、ケーブルやセンサーの接続不良や破損を目で見ること、スキャンツールでダイアグコードを確かめることの3つを挙げています。
排出ガスのOBDはコードと一緒に、異常を確定したときの車の状態を保存します。これがフリーズフレームデータです。2009年版のJ-OBDIIの基準は、次の13項目を保存して読み出せるようにすることを求めています(その車に無い部品やシステムの項目は除きます)。
計算エンジン負荷、冷却水温度、エンジン回転数、スロットル絶対開度、車速、燃料圧力、吸気温度、吸気管圧力、吸入空気量、フィードバック状況、燃料補正量、点火時期、二次空気の状態
冷却水温度、車速、エンジン回転数を見れば、エンジンが冷えていたか、走っていたかアイドリング中だったかが分かり、異常が起きた場面を絞り込めます。フリーズフレームはコードを消すと一緒に消えることがあるので、消す前に保存しておきます。
最終報告書は排出ガスのOBDの例として、コードの状態を3つに分けています。
| 状態 | 意味 |
|---|---|
| 仮故障 | 異常な信号を見つけたが、故障とはまだ確定していない |
| 現在故障 | いま不具合が起きている |
| 過去故障 | 以前に不具合が起き、いまは復旧している |
2009年版のJ-OBDIIの基準では、エンジンをかけ、走り、止めるまでを1回ずつ含む期間を1回のドライビングサイクルと数えます。アイドリングストップでエンジンが自動で止まり、またかかる分は数えません。1回のドライビングサイクルで異常を見つけると、OBDはまず仮故障として一時記録し、次に診断したドライビングサイクルでも同じ異常を見つけたときに本故障と確定して警告灯を点けるのが原則です。誤診断のおそれがない場合は1回目で確定してよく、誤診断を避けるために必要な場合は、警告灯を点けるまでに2回を超えるドライビングサイクルをかけてもよいことになっています。
警告灯が消えることと、コードが消えることは別です。同じ基準では、本故障で警告灯が点いたあと、続く3回のドライビングサイクルで同じ異常が出なければ警告灯を消してよいとしています。記録を消してよいのは、警告灯が点いたあとの40回以上のウォームアップサイクル(冷却水の温度が始動時より22℃以上上がり、70℃以上になる運転)のどれでも同じ異常が出ず、警告灯も消えていたときです。警告灯が消えたあとも、コードはしばらく残ります。
安全装置でも、警告灯が消えたあとにコードが残ることがあります。国交省は指定工場向けの判定フローの中で、スピードメーターの検査のあとにABSの警告灯が点き、その後警告灯が消えても特定DTCが残る現象を例に挙げています。
スキャンツールの画面で現在と過去がどう表示されるかは、一律ではありません。機構などが検査場で行った実証実験の資料には、現在故障と過去故障の区別はメーカーなどによって異なると注記があります。最終報告書は、コードは原則として時間の概念を持たないので、いまの異常か過去の異常かを判断できないことがある、とも書いています。
OBD検査の対象は2021年10月1日(輸入車は2022年10月1日)以降に型式指定を受けた新型車で、車検証の備考欄に「OBD検査対象」とある車です。ただし、型式指定の日から2年、かつ初回登録(軽自動車は初回検査)を受けた月の前月の末日から10か月がたつまでは対象になりません。二輪自動車、大型特殊自動車、被牽引自動車は対象になりません。
検査ではエンジンをかけた状態(ハイブリッド車と電気自動車はREADYの状態)で検査用スキャンツールをつなぎ、ECUに記録されている情報を読み出して、機構のOBD検査用サーバーに照会します。
特定DTCはそのコードだけで、その装置が保安基準に合わなくなっていると分かるコードです。安全装置のコードは停車した状態の診断で記録されるものに限られます。どのコードを特定DTCにするかは、自動車メーカーが決めます。
最終報告書は、走ってはじめて記録されるコード、故障かどうかを確かめている途中のコード、カメラの曇りかもしれないコードのように、それだけでは故障と言えないコードを特定DTCに含めないとしています。逆に、修理や部品交換のあとの調整(エーミングなど)をしていないことを示すコードと、連携するECUのソフトのバージョン違いを示すコードは、装置が適切に働かない状態を示すとして特定DTCに含めます。
| 装置 | 不適合になる場合 |
|---|---|
| 自動ブレーキ、ABS、横滑り防止装置などの安全装置 | その装置の特定DTCが1つ以上記録されている |
| 排出ガスの装置 | OBDが働くのに十分な電圧がない/警告灯を点ける信号が出ている/対象の監視のすべてについてレディネスコードが1つも記録されていない/特定DTCが1つ以上記録されている/判定に要る情報を読み出せない |
排出ガスの条件はその車に適用される基準によって変わります。警告灯の信号は基準が定める条件で点くもの(重量ディーゼル車では作動モード4のもの)に限られ、レディネスコードの条件は、協定規則第154号か別添48のⅣの基準が適用される車について、決められた監視項目で判定します。読み出せない場合の不適合は、旧来のJ-OBDIの基準が適用される車には当てはまりません。
レディネスコードは、排出ガスのOBDが触媒や酸素センサーなどの診断を済ませたことを示す記録です。診断の条件がそろうまで走らないと完了しない項目がある一方、走っている間いつも診断している項目は、はじめから完了と表示されます。
機構の集計では、2026年4月1日〜6月30日に指定工場のOBD検査で不適合になった要因は次のとおりです。1台に複数の要因があれば、それぞれで1台と数えています。どれも検査で不適合と判定された台数で、最終的に車検に通らなかった台数ではありません(機構は「不適合あり」の台数を、最終の合否に関わらず期間中に1回でも不適合と判定された車として数えています)。
| 不適合の要因 | 台数 |
|---|---|
| 安全装置の特定DTC | 2,640 |
| 排出ガス: レディネスコードなし | 2,019 |
| 排出ガス: 通信不成立 | 1,893 |
| 排出ガス: 電圧不足 | 367 |
| 排出ガス: 特定DTC | 59 |
| 排出ガス: 警告灯の信号 | 56 |
機構はこの資料で、排出ガスの要因のうち警告灯の信号と特定DTC以外は、検査の準備が整っていなかったことが原因の可能性があり、正しい方法でやり直せば適合したと考えられるとしています。レディネスコードなしについては、コードを消したあと、レディネスコードが記録される前に検査した可能性を挙げています。安全装置の特定DTCについては、整備の途中で記録されたコードが、整備のあとで消されないまま見つかった可能性を挙げています。
不適合になったときの次の手は、原因によって分かれます。特定DTCや警告灯の信号のように故障が原因なら、修理しなければ車検に通りません。修理は地方運輸局長などの認証を受けた整備工場で行います。電圧不足、通信不成立、レディネスコードなしのように準備が整っていなかったのが原因なら、条件を整えて検査をやり直します。
法定点検にも、2021年10月1日から「車載式故障診断装置の診断の結果」の点検(OBD点検)が加わっています。こちらはOBD検査の対象かどうかに関係なく、二輪自動車、大型特殊自動車、被牽引自動車を除いて、OBDを積んだすべての車が対象です。
スキャンツールでコードを消すと、原因が直っていなくても警告灯がいったん消えることがあります。フリーズフレームデータも消えることがあり、排出ガスのOBDのレディネスコードには未完了に戻る項目があります。消して警告灯が消えたことは、直ったことの確かめにはなりません。原因が残っていれば、診断の条件がそろったときにコードはまた記録されます。最終報告書は、安全装置のコードは故障が再び起きれば記録し直されるのが一般的だとしています。
コードはバッテリーを外したときに消えることもあります。最終報告書は、コードが消える条件はメーカーごとにばらばらで、修理していなくてもバッテリーの取り外しやスキャンツールの操作で消える可能性があると書いています。
OBD検査が排出ガスのレディネスコードを見るのは、故障を直さないままコードだけを消して受検することを防ぐためです。走らないと記録されないレディネスコードもあり、すべてを求めると合格できない車が多く出るので、上に書いた判定の対象になる監視項目のうち、少なくとも1つが完了していることを確かめる形にしています。未完了に戻った項目がまた完了するのに要る走り方は、車種と項目ごとに違います。レディネスコードの記録に時間がかかる車種があり、そのことは自動車メーカーが周知済みだと、国交省の会合資料に書かれています。
自分でコードを読んだ場合は、表示されたコードをすべてと、読めればフリーズフレームデータを、写真かメモで残します。原因を確かめる前には消さず、その記録を持って整備工場に相談します。整備工場には警告灯が点いた日と、点灯だったか点滅だったかも伝えます。すでに消してしまったときは、消したことも伝えます。OBD検査の対象の車で車検が近いときは、車検を受ける整備工場に伝えておきます。車検の前にはデータリンクコネクタにつないでいるドライブレコーダーなどの機器を外しておきます。
整備で消す場合、最終報告書は、コードをもとに故障箇所を特定し、必要な修理や部品交換をしたあとにコードを消す流れを示しています。国交省の講習テキストも整備を終えるときの処理として故障コードの消去を挙げています。スピードメーターの検査のように、整備のあとの作業でコードが記録されることもあるので、OBD検査の直前にもコードを確かめます。消したあとは、OBD検査の前に、判定の対象になる監視項目の完了状態を確かめます。認証工場が事前にOBD確認をして車検場のOBD検査を省略してもらう場合、レディネスコードが1つしか完了していない車は、サーバーが検査が必要と判定するので省略されません。
自分の車がOBD検査の対象か、いつの車検から要るかはOBD検査の対象車両―対象になる条件、輸入車の扱い、車検証・型式一覧・特定DTC照会アプリでの調べ方をご覧ください。整備工場がスキャンツールを入れるときに使える国の補助金は、令和8年度スキャンツール補助金―4月にさかのぼる対象と、補助率を1/3と1/4に分ける線で確かめられます。
整備士オンラインはOBD検査の対象装置の追加と、不適合の要因の集計を追っていきます。
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