日本自動車工業会が公開している給電機能つきの車の一覧には、ガソリンで走るハイブリッド車がいくつも並んでいます。アクア、シエンタ、ノア、セレナ、フォレスター。
国土交通省と経済産業省は2026年8月4日、「災害時における電動車等から医療機器への給電活用マニュアル」を改定しました。2022年3月に作られたものの改定版です。
車のコンセントは1500Wまで使え、人工呼吸器の消費電力は100〜200Wです。定格消費電力が1500W以下でも動かないおそれのある機器があり、改定版はその機器についての注意書きを、2022年版から書き換えました。
2022年版が扱っていたのは、主に車室内の100Vコンセントから医療機器へつなぐ場合でした。改定版は、実際に給電試験をした経路として3つを挙げています。①車室内の100Vコンセント、②充電端子(CHAdeMO)につないだ外部給電器、③EVバイクから外した交換式バッテリーと専用給電器です。

表題に「等」の一字が入ったのは、この③が加わったためです。マニュアルは電動車とEVバイク用交換式バッテリーをまとめて「電動車等」と呼んでいます。
一方で、医療機器への給電を扱う表からは、家の分電盤へ直接つなぐ固定型給電器が外れています。マニュアルの前半、電動車の外部給電機能を説明するページには載っていますが、医療機器の章では、固定型を経由する場合の注意事項がありません。
なお、2022年版のPDFはいまも国土交通省のサイトからダウンロードできます。表紙を見れば分かります。表題が「電動車等から」で「(改定版)」が付き、日付が「令和8年8月」なら改定版。「2022年3月25日」とあるものは旧版です。
今回の版から、2022年版にあった車種の一覧表が無くなりました。代わりに日本自動車工業会のサイトを見るよう案内しています。
一覧は「2026年4月15日時点における各社ホームページの情報を基に作成」とされ、12社75車種が載っています。同じ車名でもハイブリッドとプラグインハイブリッドは別の行です。トラックやバスも同じ表に入っています。
見る列は4つです。
| 列 | 何の列か |
|---|---|
| AC100V・1500Wコンセント | 車本体のコンセント。①に当たる |
| AC100V・1500Wコンセント(非常時給電システム付) | 同じく①。この2列のどちらかに印があれば①が使える |
| AC外部給電 | 給電器をつなぐ場合の列 |
| DC外部給電 | 同上 |
外部給電器を使う②がどちらの列に当たるかは、この一覧では分かりません。一覧は列の意味を説明していないためです。②の条件はマニュアルの側にあって、充電端子(CHAdeMO)があり、そこから電気を取り出せること。自分の車が該当するかは、一覧からリンクされた車種ページかメーカーに確かめます。
印は、◎が標準装備、○がオプション、( )付きはグレードによって違うことを表します。自分の車種の行に印があっても、グレードによってはコンセントが付いていないことがあります。一覧は各車種の公式ページへリンクしており、「対象グレード等はリンク先にてご確認願います」と断っています。また、※が付いているものは走行中の給電ができません。
②の外部給電器を使う経路については、対応する車の書き方が変わりました。2022年版は「充電端子(CHAdeMO)を持つ車」。今回の版は「充電端子(CHAdeMO)を持つ、放電の機能を備えた電気自動車等」です。充電のための端子が付いていても、そこから電気を取り出せるとは限りません。今回の版はその条件を書き分けています。なお、ここでいう充電端子にシガーソケットやUSBポートは含まれません。
改定版には、給電試験で確認した機器の一覧が新しく載りました。外部給電器は5機種が機種名で挙がっています。
| 機種名 | メーカー | 定格出力 | AC100Vの口数 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| EVPS-L1 | 豊田自動織機 | 9,000W | 6口(1,500W×6口) | メーカー販売終了済 |
| Power Mover | ニチコン | 4,500W | 3口(1,500W×3口) | メーカー新規受注終了品 |
| Power Mover Lite | ニチコン | 3,000W | 2口(1,500W×2口) | |
| POWER EXPORTER e: 6000 | 本田技研工業 | 6,000W | 4口(1,500W×4口) | |
| POWER EXPORTER 9000 | 本田技研工業 | 9,000W | 6口(1,500W×6口) | メーカー販売終了済 |
5機種のうち3機種には、マニュアル自身が販売終了・新規受注終了の注記を付けています。
手元の給電器がこの表にない場合について、マニュアルは表に注を付けています。給電する医療機器や電気製品によっては電源を入れたときに一時的に大きな電流が流れ、外部給電器の製品化時期や機器のバージョンによっては正常に作動しないおそれがあるので、事前に稼働可否を確認してください、という注です。
交換式バッテリーのほうは、本田技研工業のMobile Power Pack e:(容量1,314Wh)と、そこから電気を取り出す専用給電器Power Pod e:(定格出力1,500W、AC100Vのコンセントは2口)が対象です。1,314Whを人工呼吸器の消費電力で割ると、200Wの機器で6.5時間、100Wの機器で13時間。ただしこれは変換の損失も気温もバッテリーの状態も見込まない上限で、実際にはもっと短くなります。
3つの経路の注意事項は、大部分が同じ文章です。経路ごとに違うのは、酸素濃縮器の書き方、給電が止まったときの操作、1500Wの数え方、従うべき取扱説明書、残量の見方です。
| 経路 | 酸素濃縮器についての記述 |
|---|---|
| 車室内の100Vコンセント | 設定流量が7L/分を超えるような高流量での使用において、稼働しない、もしくは運転が停止するおそれ |
| 外部給電器 | 設定流量によらず、正常に稼働しない、もしくは運転が停止するおそれ |
| 交換式バッテリー | 酸素濃縮器を名指しした記述はない(機器によっては正常に作動しないおそれ、という一般の注意のみ) |
2022年版は、酸素濃縮器が出てくるどちらの箇所でも「設定流量が7L/分を超えるような高流量での」と限っていました。改定版はこの限定を2箇所で外しています。1つは上の表の外部給電器の経路。もう1つが、経路をまたぐ注記です。対象の医療機器を挙げたページの注は、流量に触れずに「酸素濃縮器の使用においては、稼働しない、もしくは運転が停止するおそれがある」と書いています。5L/分で使っている場合も、事前に確かめる必要があります。
どの経路でもマニュアルが求めているのは同じで、平時に一度つないで、動くかどうかを確かめておくことです。
1500Wの数え方は、経路で違います。車室内のコンセントから給電する場合は、つなぐ機器を合わせて1500W以内。コンセントが2口ある車でも、口ごとに1500Wずつ使えるわけではありません。外部給電器と交換式バッテリーは「コンセント1口あたり」1500W以内です。どちらも超えると保護機能が働き、AC給電が自動で停止することがあります。
マニュアルが挙げる目安では、酸素濃縮器は10L/分の設定で400W、吸引器が100W、人工呼吸器が100〜200W。3つ足しても700Wで、1500Wに収まります。
定格消費電力が1500W以下でも、電源を入れたときに一時的に大きな電流が流れて正常に作動しないことがある、とマニュアルは繰り返し書いています。平時に一度つないで確かめておくよう求めているのは、このためです。合計が1500Wに収まっていても、酸素濃縮器は動かないことがあります。車室内のコンセントなら7L/分を超える高流量で、外部給電器なら流量にかかわらず、というのがマニュアルの書き方です。
アース線のある医療機器を使うときは、アース端子を備えたコンセントにプラグを差し込み、アース線をアース端子につなぎます。
従う取扱説明書も経路で違います。今回の版からは医療機器のものに加えて車両のものが入り、外部給電器を介するなら給電器の取扱説明書、交換式バッテリーならバッテリーと専用給電器の取扱説明書が加わります。
給電がどれくらい続くかについて、今回の版は数値を出しません。2022年版には車種ごとに「2.5日(40kWh)」といった給電可能時間の表がありましたが、その表ごと消えました。代わりに、給電の続く時間はバッテリーや燃料の残量で変わるので使う前に残量を確かめてほしい、という一文が入りました。ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車では、ガソリンの残量でも決まります。
給電が止まったときは、接続している電気製品の合計が1500W以内であることをまず確かめます。ここまでは共通で、そのあとの操作は経路で違います。車室内のコンセントから給電していたなら、もう一度車両のACスイッチを押します。外部給電器を介していたなら、各外部給電器メーカーの取扱説明書の指示に従います。交換式バッテリーから給電していたなら、バッテリーと専用給電器の取扱説明書に従います。車室内のコンセントの経路については、詳しい対応は自動車メーカーごとに違うとして、各メーカーの給電方法を停電の前に確かめるよう、マニュアルが書き添えています。
給電を始めるときに車でやることは、2022年版とほぼ同じです。シフトをPに入れてパーキングブレーキをかける。地面が固く平らな場所に駐車し、できれば輪留めを置く。
ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車は、給電中にエンジンが動くことがあります。だから、換気のできない車庫の中や、囲まれた場所では使わないでください。排気ガスがたまり、酸素が足りなくなるおそれがあります。雪が積もって囲まれた状態も同じです。エンジンが動きうるのでボンネットは閉めておきます。この換気とボンネットの2項目、それに次の外気温の項目には、車室内の100Vコンセントから給電する場合、という条件がマニュアルに付いています。ただし外部給電器を使う場合も、電気を取り出す先は車です。車を囲まれた場所に置いたまま給電器だけを外に出す場合も、排気の危険は残ります。
配線については3つ。コードリールを使うならコードを全部引き出す(巻いたままだと発熱することがあります)。たこ足配線はしない。3つめが屋外へ引くときの水対策で、雨がかからないようにし、コンセントが濡れたら乾かしてから使い、コードはドアに挟まないようにします。
気温でも止まります。炎天下で車内が高温になるとAC給電機能が自動で停止することがあり、その場合は車両を日陰へ移すかエアコンで室内温度を下げます。逆に外気温が−30℃といった極低温では給電機能が働かないことがあり、走らせて車両を温めると使えることがあります。
マニュアルは前提を書いています。災害などで停電して、ほかに安定した電源がないときは、これを参考に給電を検討してほしい、という一文です。
医療機器は電力会社の商用電源につなぐ前提で設計されていて、電動車のAC給電機能は商用電源と完全に同じではありません。商用電源につないだときと同じ安全・性能は保証されない、と理解したうえで使ってください——この断りが3つの経路すべてに付いています。そして、医療機器の動きに影響が出る可能性は残るので、給電するときは医師、医療関係者、本人、本人の親族などと相談したうえで使ってください、と続きます。
順番も書かれています。外部バッテリーに給電できる場合は、外部バッテリーへの給電を優先する。3つの経路すべてにこの一文があります。ただしマニュアルは、この外部バッテリーが何を指すかを書いていません。手元の予備電源が当てはまるかは、医療機器の取扱説明書で確かめることになります。
機器が止まった場合の手当てが、新しく入りました。医療機器の異常停止に備えてバッグバルブマスク(手で押して肺に空気を送る器具)や手動式吸引器などを用意し、人工換気などを行える人がすぐに対応できる体制を整えておくことが勧められています。この一文が3つの経路すべてに加わりました。
在宅で人工呼吸器・酸素濃縮器・吸引器を使う場合には、外部バッテリーに加えて災害時のバックアップ電源をできるだけ多く準備しておくことも重要だ——マニュアルは対象の医療機器を挙げたページにもこう書いています。
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