8月7日の10時から、スキャンツール補助金の申請受付が始まります。税別72万円の兼用機を1台入れていれば、戻るのは最大で24万円です。
先着順と聞けば初日に構えたくなります。実際、直前の回は受付開始と同じ日に終わりました。ところが同じ補助率で行われたその前の2回は、どちらも申請期限のほうを延ばしています。
今回が3回のどれに近いのかは、8月3日の時点では誰にも分かりません。先に分かっているのは、国土交通省の報道発表には載っていない条件のほうです。
申請できるのは、次のどちらかを満たす事業者です。
1つめは、道路運送車両法第78条の認証を受けた自動車特定整備事業者。ただし電子制御装置整備を含む特定整備の認証を受けた者か、電子制御装置整備を含む特定整備の認証を申請している(これから申請する場合を含む)自動車分解整備事業者に限られます。
2つめは、自社が保有する自動車関連施設で整備事業を行う者で、電子制御装置整備の認証を申請している(これから申請する場合を含む)ことが条件です。この道を通る場合、3級自動車整備士と自動車タイヤ整備士以外の自動車整備士が配置されていることが要ります。ここでいう自動車関連施設とは、専ら自動車または自動車部品・燃料の販売か修理を行うための施設です。土地・家屋を借りている場合も「保有」に含まれます。
つまり電子制御装置整備の認証をまだ受けていない工場も、今後申請する予定であれば対象に入ります。申請時に出す宣誓書に「今後、電子制御装置整備の認証を申請します」の項があり、ここに署名する形です。
認証書そのものを提出できない場合は、代わりに自動車整備士であることの証明を出します。ここは資料によって書き方が違います。公募要領は「自動車整備士である証明(自動車整備士技能検定合格証書の写し又は地方運輸局による当該資格を証する書面)又は整備士手帳」として級を限定していませんが、事務局のFAQは「1級または2級の自動車整備士である証明」と書いています。どちらで通るかは事務局のコールセンター(03-4446-4346)で確かめるのが確実です。なおこれは提出書類の話で、2つめの道で触れた配置整備士の要件とは別のものです。
添える書類は、法人なら発行後3か月以内の現在事項全部証明書の写し、個人事業主なら発行後3か月以内の住民票の写しか運転免許証の写しです。これに加えて在籍が分かる書面(直近の給与明細、名刺等のいずれか)が要る場合が2つあります。法人で、その整備士が現在事項全部証明書に名前の載らない人であるとき。個人事業主で、その整備士が申請者本人ではないときです。
補助の対象になるスキャンツールは、事務局が公開している「補助対象機器一覧」に載っているものに限られます。同じ型式でも一覧に記載がなければ申請できません。ただし一覧は更新されることがあり、事務局も随時最新情報を確認するよう案内しています。今日載っていない機種が、次の版で載る可能性は残ります。
この一覧は58ページあります。掲載されている製品にはすべて「型式試験番号」の欄があり、JASEA-KS 形式の番号が入っています(資料内には表記のゆれもあります)。OBD検査用スキャンツールとして日本自動車機械工具協会の型式試験に通った機器、という意味です。OBD検査の型式試験を受けていない故障診断機は、整備用として優秀でも一覧に載らず、対象になりません。報道発表が「一定の要件を満たすスキャンツール」と書いているのは、この線のことです。
研修も同じで、補助対象研修一覧に載っているものだけが対象になります。一覧にはツールメーカー2社と、自動車整備振興会が北海道から沖縄までブロック別に並んでいます。「記載が無い自動車整備振興会は対象なしとなります」と但し書きがあるので、地元の振興会が載っているかどうかは自分で見る必要があります。研修費の上限は2万円、補助率は1/3なので、受講料6万円で頭打ちです。
研修には定員があります。たとえばG-TRAININGは各回10名です。受講してから申請する仕組みなので、席が先に埋まれば予算が残っていても間に合いません。
報道発表は「OBD検査のみ対応のスキャンツールは1/4」と書いていますが、公募要領の書き方はもう少し正確です。設備費のうち「検査専用のものを除く」スキャンツールが1/3、「検査専用のものに限る」ものが1/4。補助対象機器一覧には製品ごとに「整備用との兼用」か「検査専用」かの列があり、そこがそのまま補助率になります。
金額にすると差は小さくありません。国土交通省が令和8年7月1日時点でまとめた販売状況の資料から、希望小売価格を並べるとこうなります。
| 機器(希望小売価格・税別) | 用途 | 補助率 | 戻る額(上限) |
|---|---|---|---|
| G-SCAN Z Entry 57万円 | 検査・整備兼用 | 1/3 | 19万円 |
| G-SCAN Z Standard 72万円 | 検査・整備兼用 | 1/3 | 24万円 |
| G-SCAN Z Tab LV Standard +マルチアダプター 86万円 | 検査・整備兼用 | 1/3 | 28万6,600円 |
| OBD検査専用ツール MaxiVCI V200Pro 6.45万円 | 検査専用 | 1/4 | 1万6,100円 |
補助額の基礎になるのは実際に払った額です。公募要領は「値引きがなされた場合は、当該値引き後の価格に基づいて交付申請を行ってください」と書いています。上の表は希望小売価格のまま買った場合の上限で、値引きが入ればそのぶん補助額も下がります。消費税を除いた本体価格から計算し、100円未満は切り捨てます。
1事業場あたりの上限は設備費30万円です。複数台をまとめて申請できるので、1/3で上限まで受け取るには合計で税別90万円以上になります。
周辺機器の取得費は補助対象から外れます。販売店へ振り込むときの手数料も対象外で、販売店が手数料を負担した場合はその分の値引きがあったものとみなして補助対象経費から除きます。
故障診断用ソフトの月額・年額の利用料も、事業期間中に発生して支払いが済むものは対象です。ただし導入開始日から1年を超える分は按分して除きます。
一覧に載っている機器を使うために要る追加購入機器も、補助対象期間内に買って同じ申請にまとめれば経費に計上できます。ただし追加購入機器だけでの申請はできません。
対象になるのは、令和8年4月1日から令和9年1月29日までに購入・受講し、支払いまで終わっているものです。受付開始前の4月や5月に入れた機器も、一覧に載っていれば申請できます。すでに買った工場が今から確認する価値があるのはここです。
複数台でも複数事業場でも申請できますが、上限は事業場ごとに設備費30万円・研修費2万円、合わせて32万円です。事業者単位でも機器単位でもありません。
過去に補助を受けた工場も、諦める前に条件を読む価値があります。重ねて申請できないのは同じ機器・研修についてであって、工場そのものが除かれるわけではありません。同じ事業場でも、今年あらたに買った別の機器なら申請できます。事業場が別であれば、過年度に同じ機器・研修で補助を受けていても申請できます。
ただし線引きは年度ではなく機器・研修の単位です。事務局のFAQは、この補助金(被害者保護増進等事業費補助金)で同じ機器や研修について交付を受けている場合、同じ事業場では年度を問わず同じものを重ねて申請することはできない、としています。令和8年2月から6月を対象期間としていた令和7年度補正の回で補助を受けた機器も、同じものなら今回は申請できません。
公募要領はこれに加えて、令和8年度以降に始まった国の他の補助金制度で交付を受けた機器・研修との重複を禁じています。申請者が満たすべき要件にも「同一事業において、国が交付する他の補助金を受けないこと」があるので、機器さえ重ならなければ何でも通る、とは読めません。
リースで導入した機器は対象外です。この補助金は「購入」に対するもので、事務局のFAQも明確に否定しています。導入方法を決めていない工場は、ここで結論が変わります。
機器とセットの情報端末にも条件があります。申請の時点でWindows 11が入っていることが必要で、提出する写真でも確認されます。Windows 10のままでは対象外なので、申請前に上げておくことになります。端末を主にスキャンツール以外の目的で使うことも認められておらず、宣誓書で目的外使用をしない旨を約束します。
補助を受けて買った機器のうち取得単価が50万円以上のものには、購入の日から5年の保有義務が付きます。その間に処分するならTOPPANの承認が要り、原則として補助金の一部を返すことになります。
受付期間は令和8年8月7日10時から令和9年1月29日17時までです。申請は補助金ホームページの申請システムにログインして行います。使えるのはPCのブラウザだけで、スマートフォンやタブレットは動作保証の外。紙の郵送や持ち込みも受け付けていません。
経費の種類にかかわらず全員が出すのは4つです。交付規程様式第1号様式(申請システムでの入力)、経費使用明細書、認証書、そして宣誓書。経費使用明細書は事務局サイトからExcelをダウンロードして機器ごとに記入し、アップロードするものなので、システム上の入力だけでは終わりません。認証書を出せない場合の代わりは、さきほどの「対象になる事業者の2つの道」で触れたとおりです。
ここに、申請する経費に応じた書類が加わります。設備費なら、補助対象経費の請求書の写し、支払を証する書類(領収書等)の写し、そして補助対象機器の写真。請求書は消費税を別に表示したもので、メーカー名・名称・型式・品番・ソフトウェアのバージョンなど購入したものが判別できることと、補助対象の経費と対象外の経費が分かれていることが要ります。写真は、通信インターフェースや情報端末を含めて申請するならそれらの写真も併せて添え、情報端末はWindows 11が入っていると分かるものにします。研修費なら、研修受講証明書等の写しと受講費の支払を証する書類が加わります。
なお受付終了日について、国土交通省の報道発表と整備事業者向けページは「令和9年1月29日(火)」と書いていますが、公募要領と事務局の資料は「(金)」です。2027年1月29日は金曜日で、日付そのものは食い違っていません。
補助金の振込は、審査完了後、11月中旬以降に順次始まる予定です。買った月に戻ってくる性質のお金ではありません。
この補助金は毎年度そのまま繰り返されているわけではなく、回ごとに補助率も上限も対象も変わっています。直近4回を並べます。
| 回 | 受付開始 | 補助率 | 1事業場あたりの上限 | 対象範囲 | 受付の結末 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和6年度補正 | 2025年3月31日 | 1/3 | 設備15万円・研修1万円 | 一定の要件を満たすスキャンツール | 期限を2月13日まで延長し、満了で終了 |
| 令和7年度当初 | 2025年11月25日 | 1/3 | 設備15万円・研修1万円 | 一定の要件を満たすスキャンツール | 期限を2月13日まで延長 |
| 令和7年度補正 | 2026年5月29日 | 1/2 | 設備50万円・研修2万円 | 米国車対応のみ | 受付初日に予算上限で終了 |
| 令和8年度当初(今回) | 2026年8月7日 | 1/3、検査専用は1/4 | 設備30万円・研修2万円 | 一定の要件を満たすスキャンツール | ― |
初日で消えたのは令和7年度補正の回です。事務局は「ご案内していた受付期間締切前ですが、…補助金交付申請額が予算上限(100%)に達したため終了しました」「想定を遥かに上回る申請申込みをいただいた」と告知しました。予定していた締切は1か月先の6月30日でした。
ただしこの回は米国車に対応したスキャンツールに限った回で、補助率は1/2、設備費の上限は50万円、予算は1億0292万4千円です。対象機種も補助の厚みも今回とは違います。
同じ1/3で行われた前の2回は、逆でした。
令和7年度当初の回は、受付開始から4週間の12月21日時点で予算消化率4.2%、6週間の1月9日時点で8.6%でした。事務局が期限の延長を告知したのは、この最初の公表値より前の12月17日です。締切は1月30日から2月13日へ動きました。
令和6年度補正の回は、もう少し進みました。開始から7か月あまり経った11月9日時点で39.3%、12月21日時点で46.1%、延長後の期限を1か月後に控えた1月12日時点でも49.1%です。半分に届かないまま、こちらも期限を2月13日まで延ばしたうえで、期間満了により終了しました。ただし2回とも、受付が終わった時点の最終的な消化率は公表されていません。
3回のうち2回が最後の公表時点で余っていたからといって、今回も余るとは言えません。理由が3つあります。
1つは上限額です。今回の設備費の上限30万円は、上限15万円だった過去2回の倍にあたります。1件あたりの交付額が倍になれば、同じ申請件数でも消化は倍の速さで進みます。
2つめは、消化率どうしを金額で比べられないことです。国土交通省の実施要領は改正のたびに過去年度の行が差し替わるため、現行版に残っているのは令和7年度補正と令和8年度の予算額だけです。令和6年度補正と令和7年度当初の予算額が分からない以上、「49.1%」「8.6%」がそれぞれ何円分だったのかはたどれません。
3つめは、初日で終わった回が米国車対応限定だったことです。狭い対象に厚い補助を付けた回と、広い対象に薄い補助を付けた回では、申請の集まり方が違って当然です。
つまり手元にあるのは、正反対を向いた前例が2種類あるという事実だけです。今回がどちらに近いかを、8月3日の時点で判断できる材料はありません。
公募要領の申請受付の項は「受付期間、予算額及び申請に係る留意事項については以下のとおりです」と書き出しますが、続く表には受付期間と留意事項の2列しかなく、金額がありません。事務局のサイトにも出ていません。
金額が書かれているのは、国土交通省が公開している交付要綱実施要領の別表です。令和8年度の補助金の間接補助額は、設備費と研修費をあわせて3億6246万4千円と記載されています。
上限いっぱいの32万円で割れば約1,130事業場分になります。研修だけの申請や検査専用機の申請が混じれば件数は動くので、規模の見当をつけるための概算です。
報道発表には書かれていない条件のうち、申請の可否を分けうるのがこれです。公募要領は申請者が満たすべき要件の5番目に「一級自動車整備士が在籍していること。(補助金優先採択を希望する場合のみ)」を挙げ、注でこう説明しています。
補助金優先採択とは、被害者保護増進等事業費補助金(先進安全自動車の整備環境の確保事業の部)の申請受付期間において、申請多数により一部申請を不採択とする必要がある場合に一級自動車整備士が在籍している事業者であることを証明している申請者を優先的に採択するものです。
一級整備士がいる工場にとって、先着順は完全な早い者勝ちではありません。今年度の公募要領が提出書類として挙げているのは「【補助金優先採択を求める場合】一級自動車整備士が在籍していることを証明する書類」の一行です。
前年度の事務局資料は、この運用をもう少し具体的に書いていました。予算上限に達した場合でもシステム上は受付を行うことがあり、そのうえで優先採択の要件を満たす事業者を優先し、それ以外を不受理とする、という書き方です。必要書類として1級整備士の証明のほかに、法人なら発行後3か月以内の現在事項全部証明書の写し、個人なら住民票の写しか運転免許証の写し、証明書に名前が載らない整備士なら直近の給与明細や名刺までを挙げていました。今年度も同じ書類を求められるかは、公募要領からは読み取れません。
事務局サイトは支援策ごとの予算消化率(概算値)を出しています。更新は毎週月曜の14時、祝日なら翌営業日の14時です。
ただし表示されるのは締め日時点の数字で、8月3日現在は「データ取得日:2026年7月30日(木)23:59」と添えられています。スキャンツール分は受付前で止まっているので、この締め方がそのまま続くとは限りません。過去の回では日曜23時59分の締めが多く、その運用なら8月10日14時の更新に8月7日から9日までの動きが載ります。8月6日ごろの締めのままなら、8月10日は0%のままです。どちらなのかは、表示されているデータ取得日を見て判断することになります。
公募要領は、消化率が90%を超えた時点で表示を「受付終了間近である旨を示す表示」に切り替えると書いています。予算超過が起きればTOPPANの判断で受付を締め切ります。
ここで一点だけ注意が要ります。予算額を超える恐れがある場合でも申請システムはいったん受け付けることがあり、超過後の申請は後日不受理になります。システムが受理した画面が出ても、それは交付の確約ではありません。
スキャンツールそのものは、すでにかなり行き渡っています。ナルネットコミュニケーションズが2025年11月に提携整備工場1,919か所へ行った調査では、1,844か所が導入済みで保有率は96.1%でした。最も新しい機器の導入時期は「1年以内」と「1〜3年以内」が合わせて1,336工場、72.5%を占めています。同社はこれについて、2024年10月のOBD検査開始をきっかけとした購入が多かったことが伺われる、と述べています。
この調査の母集合は同社の提携工場であって、全国の整備工場ではありません。それでも、OBD検査が国産車で2024年10月、輸入車で2025年10月に始まり、対象車が車検のたびに増えていく流れは変わりません。今回の補助金の対象がOBD検査の型式試験を通った機器に限られているのも、その線の上にあります。
だから8月7日に向けてできる準備は2つです。自分の工場が2つの道のどちらに当たるかを確かめること。そして手元の機種が一覧のどこにあるかを見ておくこと。兼用か、検査専用か、そもそも載っていないか。申請開始は8月7日の10時です。整備士オンラインは消化率の動きを追っていきます。
過去回の予算消化率、申請期限の延長、優先採択の必要書類は、令和7年度および令和6年度補正予算の各事務局サイトの当時の掲載内容(Internet Archive 保存分)によります。