「ガソリン車のアイドリングはマナー違反だし危険。でも、EVなら排気ガスも出ないし無音だから、一晩中エアコンつけっぱなしでも正解だよね?」
今年もやってきた、SNSで定期的に話題になるこの説。結論から言えば、ガソリン車よりはるかに安全で快適ですが、「正解」とするには無視できない落とし穴がいくつかあります。
EVオーナーやこれから車中泊を始めたい人に知ってほしい、「EV車中泊のリアル」を解説します。
まず、EVが車中泊において「最強」と言われる理由は明確です。ガソリン車にある「死のリスク」と「迷惑」が解消されるからです。

これが最大のメリットです。マフラーがないため、雪で車が埋まろうが、無風状態だろうが、排気ガスが車内に逆流して死亡する事故は物理的に起きません。「命の安全」という意味では、EVのシステムONは正解に最も近いです。
ガソリン車のようなエンジンの微振動や、ハイブリッド車のような「静寂→突然のエンジン始動音」がありません。あくまでファンの回る音がする程度。周囲のキャンパーにとっても、騒音被害は最小限に抑えられます。
テスラ(キャンプモード)やヒョンデ(ユーティリティモード)、国産EVの一部(マイルームモード等)には、「走行機能を切って空調と電源だけを生かす機能」が備わっています。これを使えば、より安全に車内を快適に保てます。
では、何も考えずに朝までエアコンをつけて良いかというと、話は別です。ここがSNSではあまり語られない「落とし穴」です。
特に「冬の暖房」は電気を大量に消費します。
翌朝、移動しようとしたらバッテリーがギリギリで、最寄りの充電スポットまで辿り着けない……という「電欠」の恐怖があります。

車種によっては、システムをONにしている間、デイライト(昼間走行灯)やメーターパネルが消灯できない車があります。
自分は眩しくて眠れず、周囲の車やテントにはヘッドライトのような光を浴びせ続けることになります。目張りが必須です。

昨今の電気代高騰、および急速充電器の有料化により、「一晩中エアコンを稼働させる電気代」は決して安くありません。一晩の快適さのために数千円分の電気を使うなら、安い宿に泊まった方がマシ、という本末転倒な事態になりかねません。
もし寝ている間に大雪で立ち往生したり、地震が起きたりした場合、バッテリーを空調で使い果たしていると「移動するエネルギー」も「スマホを充電するエネルギー」も失います。
「EVならつけっぱなしOK」ではなく、以下の運用こそが正解と言えます。

EVの巨大なバッテリーに100%依存してTシャツ1枚で寝るのではなく、基本はしっかりしたシュラフ(寝袋)で保温する。その上で、「氷点下にならない程度」に弱く空調を入れる、あるいは「電気毛布(消費電力が非常に少ない)」だけを使うのが、最も賢いEV車中泊のスタイルです。
EVは間違いなく車中泊に向いていますが、「エネルギーの使いすぎは、翌日のリスクになる」ことを忘れてはいけません。