大規模な地震が発生した後、自動車整備工場のピット(作業場)に持ち込まれる被災車の中で、実は見た目以上に深刻で多いのが「車の下回り(お腹)の損傷」です。
地震によってできた舗装の大きな段差、隆起したマンホール、道路上に散乱する瓦礫やコンクリート片。これらを乗り越えた際、車の底面は激しい衝撃を受けます。
バンパーやボディの傷なら走ることに直接の支障はありませんが、「下回りのダメージ」は一歩間違えると車火災や一酸化炭素中毒など、命に直結するトラブルを引き起こします。
今回は、日々車の下回りを点検しているプロの整備士の目線から、地震後の「底回りトラブルの見抜くサイン」と「現場でできる応急点検」を解説します。
車のお腹には、走る・止まる・排気するための重要なパーツが露出しています。衝撃を受けた際、特に危険なのが以下の2点です。
マフラーはエンジンから出た高温の排気ガスを車外の後方へ逃がすパイプです。
段差でマフラーを打ちつけ、途中の接続部が外れたりパイプに穴が開いたりすると、車体の真下に排気ガスが漏れ出します。
地震後に車内で暖をとったり車中泊をしたりする際、下から漏れた排気ガスが車内の隙間から進入し、気付かないうちに一酸化炭素中毒を引き起こす危険性が急増するのです。
車底にはガソリンを送る燃料パイプや、ブレーキ液が通る金属パイプが走っています。これらが瓦礫などに引っかかって破れ、ガソリンが漏れ出すと、マフラーの熱で即座に車両火災へ発展します。また、ブレーキパイプが切れるとブレーキペダルがスカスカになり、完全に制動力を失います。
下回りを打った後、車に乗っていて以下のような異変を感じたら、下回りが損傷している可能性大です。
整備工場やロードサービスが稼働していない被災地でも、自分でできる簡易的なチェック手順です。
⚠️ 点検時の注意点
- 必ず平坦で安全な場所に車を止め、サイドブレーキを引いてエンジンを切ってください。
- 余震で車が動く危険があるため、絶対に車の下に体全体潜り込まないでください。スマートフォンで下を撮影するか、しゃがんで覗き込むだけに留めましょう。
車の後ろや横から地面近くを覗き込み、マフラー(長い金属パイプ)が地面に向かって斜めに垂れ下がっていないか、引きずりそうになっていないか確認します。
車の下の地面に液体が滴り落ちていないか確認します。落ちている液体の「色」と「匂い」で見分けます。
もしマフラーが外れかけて地面に擦りそうな場合、そのまま走ると路上にマフラーが引っかかり、引きちぎれて大事故になります。
ボディの凹みや傷は後回しでも命に別状はありませんが、「下回りのダメージ」は命や車の寿命に直接関わります。
大きな段差や瓦礫を乗り越えてしまった後は、「変な音がしないか」「変な匂いがしないか」「変な液体が落ちていないか」を意識し、愛車が出す下回りのSOSにいち早く気づいてあげましょう。