大地震が発生した際、倒壊の恐怖や避難所の混雑、プライバシーの確保、ペット同行などを理由に、多くの人が選択するのが「車中泊避難」です。
ちょうど10年前の2016年の熊本地震では、避難者の約7割が車中泊を経験したとされる一方、車内での滞在が原因でエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)を発症し、尊い人命が失われるという非常に痛ましい悲劇が起きました。
車はプライベート空間を守れる「心強いシェルター」になる反面、正しく過ごさなければ時に命を脅かす危険な空間に変貌します。過去の教訓を無駄にしないために、車中泊避難に潜むリスクと、命を守るための必須ルールを徹底解説します。
エコノミークラス症候群とは、狭い座席で長時間同じ姿勢を続けることで足の血流が滞り、静脈の中に血の塊(血栓)ができる病気です。
立ち上がった瞬間などにその血栓が血液の流れに乗って飛び、肺の血管を詰まらせてしまう(肺塞栓症)と、激しい胸の痛みや息切れを引き起こし、最悪の場合は突然死に至ります。
車中泊を選択せざるを得ない場合は、以下の予防策を必ず実践してください。
座席をリクライニングしただけでは、足が下に下がったままになり危険です。
「夜間に外のトイレへ行くのが面倒」「混雑しているから」と水分を我慢すると、血液の粘度が高まり血栓ができやすくなります。
座っている間も、定期的(1〜2時間に1回)に足の血流を良くする体操を行いましょう。
💡 車内でできる簡単フットケア
- つま先立ち運動: かかとを上下に20回動かす。
- 足首まわし: つま先で円を描くように足首を左右に回す。
- ふくらはぎの揉みほぐし: 下から上に向かって手で軽くマッサージする。
可能であれば、日中は車から出て周りを少し歩く(散歩する)のが最も効果的です。
長時間の車中泊が予想される場合、ふくらはぎを適度に締め付けて静脈の血流を助ける「着圧ソックス」の着用が極めて有効です。車載防災セットや避難バッグの中に、家族分の着圧ソックスを1足ずつ常備しておくことを強くおすすめします。
車中泊でのもう一つの致命的なリスクが「一酸化炭素中毒」です。
車中泊避難の隠れたデメリットは、避難所にいないため「自治体や支援団体から存在を把握されにくい」点にあります。その結果、水や食料、支援物資が届かず、医療支援から取り残されてしまうケースが多発しました。
車中泊は、正しく環境を整えれば災害時のストレスを和らげる貴重な避難手段となります。
しかし、熊本地震で起きた惨事を二度と繰り返さないために、「水分をとる」「足を平らにして寝る」「定期的に運動する」という基本を徹底し、自分と家族の命を守りましょう。