台風30号の前に車をどこに置くか―冠水した道で水が入る場所と、宮古・八重山の車検の予約
台風30号(チャンパー)は10月23日15時の時点で与那国島の南南東約80kmにあり、大型で非常に強い勢力です。気象庁が同日15時50分に出した予報では、26日15時に九州の西へ進みます。宮古と八重山の自動車検査場は22日13時から閉まっています。
26日15時の予報円は半径300kmあり、九州のどこにどれだけ近づくかはまだ絞れていません。
冠水した道は浅く見えても危険です。JAFの試験では、水深30cmに時速30kmで入ったセダンのエンジンルームに多量の水が入り、60cmでは時速10kmでもエンジンが止まりました。
本文では、水がどこから入って何を壊すかと、そこから決まる車の置き場所を見ます。宮古・八重山で車検の予約日が閉鎖に当たった人の扱いも載せます。
台風30号の位置と予報
10月23日15時50分の気象庁の発表です。風速は中心付近の最大風速で、括弧内は最大瞬間風速です。
| 日時 | 位置 | 中心気圧 | 最大風速(瞬間) | 予報円の半径 |
|---|
| 23日15時(実況) | 与那国島の南南東約80km | 950hPa | 45m/s(60m/s) | ― |
| 24日3時 | 与那国島の西南西約70km | 950hPa | 45m/s(60m/s) | 55km |
| 24日15時 | 与那国島の北約200km | 975hPa | 35m/s(50m/s) | 95km |
| 25日15時 | 東シナ海 | 990hPa | 25m/s(35m/s) | 210km |
| 26日15時 | 九州の西 | 996hPa | 20m/s(30m/s) | 300km |
| 27日15時 | 伊豆諸島近海(温帯低気圧) | 1004hPa | ― | 370km |
23日15時の暴風域は中心から北へ330km、南へ280kmです。23日21時から24日3時までの予報では、進む速さが「ゆっくり」で、この間は非常に強い勢力のままです。
気象庁の「風の強さと吹き方」では、平均風速20〜30m/sの「非常に強い風」で、走行中の車は「通常の速度で運転するのが困難になる」とされています。30m/s以上の「猛烈な風」では「走行中のトラックが横転する」です。瞬間風速は平均の1.5倍程度になることが多く、大気が不安定なときは3倍以上になることもあります。
乗り降りでドアを持っていかれる
JAFは軽ワゴンの運転席ドアに送風機で20・30・40m/sの風を当て、成人男性1人が降りられるかを試しています。この試験では、真横から40m/sの風を受けたときはドアが開かず、降りられませんでした。後ろから40m/sの風を受けたときは、開けた瞬間にドアが180度近くまで開き、ヒンジとストッパーが壊れました。20m/sと30m/sでは、押さえながら降りられています。
風が後ろから当たる側のドアは、開けた瞬間に持っていかれると考えておきます。周りの車や人にぶつかるおそれもあります。
置き場所は水の高さと飛ぶ物で選ぶ
浸水するおそれのある場所から離す
国土交通省が国内の乗用車メーカー8社に調べた結果では、水深が車の床面を超えると、車内に水が入って電気装置が壊れたり、マフラーから水が入ってエンジンルームが傷んだりするおそれがあります。車高の低い車ほど影響を受けやすいとされています。
床面は、水が来ても壊れないという線ではありません。国土交通省は、水深が床面より下でも、速度が出ていれば巻き上げた水や波が吸気口から入るおそれがあるとしています。止めておく車も浸水するおそれのある場所そのものから離します。アンダーパス、川沿い、海岸沿いのほか、地下駐車場や半地下の車庫のような周りより低い場所は避けます。浸水しやすい場所は市町村のハザードマップで確かめられます。
海沿いは塩水で燃えることがある
2004年8月に台風16号で香川県高松市に高潮が来たあと、海水に浸かった車が次々と自然発火しました。海水の塩分が車内の配線をショートさせ、その熱で燃えたものです。
キーを切っていても、バッテリーがつながっていれば電流は流れています。水が引いたあとも火が出るのはこのためです。海水をかぶるおそれのある岸壁や、海沿いの低い駐車場には置かないようにします。
飛ぶ物の近くを避ける
気象庁の表では、平均風速15〜20m/sで看板やトタン板が外れ始めます。20〜30m/sでは屋根瓦が飛ぶものがあり、看板が落ちたり飛んだりします。屋根瓦の家、トタン屋根、看板の風下には車を置かないようにします。
八重山の検査場が閉鎖を決めた理由にも、強風で検査機器が揺れて落ちるおそれと並んで、フロントガラスが割れる可能性が書かれていました。
ガラスは場所によって割れ方が違います。フロントガラスは2枚のガラスの間に樹脂の膜を貼った合わせガラスです。日本ではフロントガラスを合わせガラスにすることが義務づけられていて、割れても破片が飛び散りません。ドアガラスやリヤガラスには強化ガラスが多く使われていて、割れると破片が細かくなります。強化ガラスが割れて脱落すると、そこから雨が入り込むおそれがあります。
冠水した道で、水はどこから入るか
速度で入る水の量が変わる
JAFは2010年にセダンとSUVで、2024年に電気自動車(BEV)、ハイブリッド車(HV)、ガソリンの軽自動車で、冠水した道を作って走らせています。
| 水深 | 速度 | 結果 |
|---|
| 30cm | 時速10km | 5台とも走り切った。セダンはフロントグリルから水が直接入らなかった |
| 30cm | 時速30km | 5台とも走り切ったが、セダンはエンジンルームに多量の水が入った。BEVとHVはボンネットの中に水が入り、BEVはアンダーカバー、HVはホイールカバーと牽引フックが外れた。軽は車内とボンネットの中に水が入った |
| 60cm | 時速10km | セダンは31m地点でエンジンが止まった。SUV・BEV・HV・ガソリンの軽は走り切った(軽はエアクリーナーの一部が濡れた) |
| 60cm | 時速30km | SUVは10mでエンジンが止まった。BEVは複数の警告灯が点いた。HVと軽はエアクリーナーが完全に濡れ、軽は車内に大量の水が入った |
| 60cm | 時速40km | 軽は28.5m地点で止まり、車内に大量の水が入った。HVは走り切ったあとにエンジンが止まった。BEVは複数の警告灯が点いた |
2010年の試験で使ったセダンはトヨタ マークII、SUVは日産 エクストレイルです。60cmで時速30kmのセダンは10kmで止まったため試していません。2024年の試験は、プロのスタントマンが運転し、一定の条件で走れるようにして行われています。JAFは、走行の可否は実際の災害時とは異なる場合があると断っていて、走り切れた場合でもボンネットの中や車内に水が入った例が多くありました。
同じ深さでも、速度が上がると車が巻き上げる水と波が増えます。国土交通省も、水深が床面より下でも、速度が大きいと巻き上げた水や波が吸気口からエンジンに入り、エンジンが止まるおそれがあるとしています。
吸気口から水が入るとエンジンが止まる
SUVが10mで止まった原因について、JAFは吸気の取り入れ口からエンジンの中に水が入ったためと見ています。
浸水した車はエンジンをかけない。JAFは冠水した車でいきなりエンジンキーを回したりエンジンボタンを押したりしないよう、国土交通省は水が引いた後もエンジンをかけないよう求めています。
マフラーは水圧でふさがれる
JAFは深い水の中ではエンジンの吸気口が水を吸うだけでなく、排気管が水圧でふさがれてエンジンが止まることもあるとしています。国土交通省も、水深が床面を超えるとマフラーから水が入り、エンジンルームが傷むおそれを挙げています。
床面を超えると窓とドアが動かなくなる
水深が床面を超えると、車内に水が入り、電気装置が壊れるおそれがあります。国土交通省が挙げる不具合は、パワーウインドウや自動スライドドアが動かなくなること、エンジンやモーターが止まって再始動できなくなることです。
ドアは水深がドアの下の端にかかると、外の水圧で内側から開けにくくなります。ドアの高さの半分を超えると、内側からほぼ開けられません。タイヤが完全に沈むと、車体が浮いて動けなくなるおそれもあります。水の流れがあれば、車ごと流されるおそれがあります。
BEVとHVの場合
JAFの2024年の試験で、BEVは60cmでもモーターが止まりませんでしたが、複数のシステム故障の警告が出ました。JAFは「エンジンがないから大丈夫」と安易に冠水した道に入るのは危険だとしています。
HVもエンジンを積んでいるので、ガソリン車と同じく、速度が上がるとエンジンルームに水が入って止まるおそれがあります。国土交通省は、BEVやHVは駆動用バッテリーに水が入ると車が止まるおそれがあるとしています。
冠水した道には入らない
冠水した道は濁っていて、深さが見えません。マンホールのふたが外れていたり、側溝が見えなかったりします。国土交通省は、水深や道路の端がわからない場所には進入しないよう求めています。JAFも、たとえ浅く見えても入るのは大変危険で、迂回するよう呼びかけています。上の試験の深さや速度は、通ってよい条件ではありません。
水位が上がってから車で避難するのも、JAFは大変危険だとしています。避難に車を使うなら、水が来る前に動きます。冠水した道で車が動かなくなったら、国土交通省は早めに脱出するよう求めています。
水の中を走ってしまった車は、走り切れていても、電気装置が傷んでいるおそれがあります。国土交通省は運転できても整備工場で点検を受けるよう求めています。
ワイパーとカバー
ワイパーを立てるかどうかを台風に向けて定めた資料は、国土交通省の別紙にもJAFの注意事項にもありません。国土交通省は、車ごとの注意事項は車に備えられたオーナーズマニュアルを見るよう求めています。扱いは自分の車の取扱説明書に従います。
ボディカバーを強風のときに掛けてよいかは、トヨタの純正カーカバーの取扱書にも書かれていません。掛けるかどうかは使っているカバーの取扱説明に従います。同じ取扱書は、ほこりが付いたまま使うと塗装を傷付けるおそれがあるとして、車体とカバーの裏のほこりを取り除いてから使うよう求めています。
二輪車については、くるまのニュースによると、ヤマハ発動機が2026年6月2日に公式SNSで「台風にはバイクカバー無しが基本!」と呼びかけ、カバーがあると風の力を受けて転倒しやすくなるとしました。ギアは1速に入れ、センタースタンドよりサイドスタンドを勧めています。
給油と充電は風が強まる前に
ガソリンを満タンにしておくと、エアコンを動かし、スマートフォンを充電し、ラジオを付けた状態で約2日間過ごせたという実験結果を、内閣府が紹介しています。
自家発電設備を備え、停電の間も給油を続けるスタンドを「住民拠点SS」といいます。2026年3月31日時点で、全国約30,000か所のスタンドのうち14,215か所が住民拠点SSです。場所は資源エネルギー庁のサイトの地図で調べられます。ただし、設備が壊れるなど停電以外の理由で給油できないこともあります。
EVとプラグインハイブリッド車は、充電を先に済ませておきます。停電すると、充電器で充電できなくなるおそれがあります。
宮古・八重山で車検の予約日が閉鎖に当たったら
検査場を運営する自動車技術総合機構の10月22日11時45分の発表に、再開の日時は書かれていません。
宮古は22・23日の予約を受け直せる
沖縄総合事務局の宮古運輸事務所は次のように出しています。
10月22日、23日の予約車両はそれぞれ29日、30日まで同一ラウンドにて再受検が可能ですが、状況により対応が変わる場合があります。
22日に予約していた車は29日まで、23日の車は30日までに、予約していたのと同じラウンドで受け直せます。扱いが変わることもあるとしているので、行く前に宮古運輸事務所(0980-72-4990)に確かめてください。
八重山は閉鎖の文書に予約の扱いが無い
八重山運輸事務所が10月22日に出した閉鎖の文書には、閉鎖の時刻と理由はありますが、予約していた車をどう扱うかは書かれていません。予約していた人は八重山運輸事務所(0980-82-4772)に問い合わせることになります。
軽自動車は別の窓口
軽自動車の検査は軽自動車検査協会が行っています。宮古分室と八重山分室は、23日は窓口も検査場も終日閉まっています。沖縄事務所は通常どおりの予定です。協会の23日8時30分の発表に、予約をどう扱うかは書かれていません。
満了日が近い車
車検は、有効期間が切れる日の2か月前から受けても、残りの期間を失いません。再開の日時は出ていないので、再開後も有効期間のうちに受けられるかは分かりません。満了日が近い車は、宮古・八重山の運輸事務所に扱いを問い合わせてください。
満了日が閉鎖の間に過ぎた車は、そのまま公道を走れません。検査場まで走らせるには、市町村などで臨時運行許可を受け、仮ナンバーを借ります。許可は継続検査を受けに行くといった目的と、期間・経路を決めたうえで出ます。期間は必要な最少の日数で5日が上限、経路は出発地からの必要で合理的な最短の道です。申請には、運行の期間中に有効な自賠責保険の証明書が要ります。
運輸事務所の窓口も、暴風警報が出たあとは閉まります。
水に浸かってしまったら
宮古・八重山の検査場の再開と八重山の予約の扱いを、整備士オンラインは追っていきます。
出典
一次情報
準一次情報
二次情報
© 2025 合同会社エン・リンクス. All rights reserved.
本サイトの著作権、商標権、その他の知的財産権は合同会社エン・リンクスに帰属します。 商用利用に関する権利は当社が独占的に保有しています。