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トヨタのピクシス エポックの取扱説明書(2018年1月版)は、指定の冷却水を「トヨタ純正スーパーロングライフクーラント」とし、交換時期を「2年ごと(初回は3年)」としています。一方、自動車用ケミカルメーカーの日本ケミカル工業は、ある自動車会社のスーパーLLCの例として「初回 7年または16万km」を挙げています。
冬の前には、交換時期とは別に濃度が問題になります。濃度の低い冷却水が凍ると体積が増え、シリンダーブロックやラジエーターが壊れることがあります。冷却水を水で足せば、そのぶん濃度は下がります。
自分の車の冷却水はいつ替えどきで、何度まで凍らないのか。
冷却水はエンジンの中を回って熱を受け取り、ラジエーターで外へ逃がしてまたエンジンへ戻る液です。水だけでもエンジンは冷やせますが、凍ればエンジンが壊れ、冷却系統の中に錆が出ます。そのため自動車の冷却水には、凍りにくく錆を防ぐ液を水で薄めたものが使われます。この液がLLC(ロングライフクーラント)で、クーラントや不凍液とも呼ばれます。
LLCの規格は日本産業規格のJIS K 2234「不凍液」です。液冷式のエンジンの冷却液に使う、エチレングリコールを主成分とする液が対象で、冷却液の凍結と冷却系統の腐食を防ぐために使います。使うときの濃度は、水溶液にしたときの体積で30〜60%です。1965年にできた規格で、2018年の改正で使われなくなった「1種 AF」を廃止し、今は「2種 LLC」だけが残っています。
日本ケミカル工業はLLCの中身を次のように説明しています。
| 成分 | 入れる理由 |
|---|---|
| エチレングリコール | 凍らないようにする主成分 |
| 防錆剤 | 鉄、アルミ、黄銅などの金属を錆びさせないため、数種類を配合 |
| 水 | 冷やす力を確保する |
| 染料 | オイルなどほかの液体と見分け、リザーバータンクの液面を見やすくする |
日本ケミカル工業の説明では、スーパーLLC(SLLC)は「LLCをさらに高性能・長寿命化した不凍液」です。日本の自動車メーカーの液は、LLCに赤や緑が多く、スーパーLLCにピンクや青が多いとしています。
ただ、液の名前と交換時期の長さはそろっていません。冒頭のピクシス エポック(2018年1月版)は「スーパー」の付く液を指定していて、交換時期は2年ごと(初回は3年)です。反対にマツダは交換時期の長い液の名前に「ゴールデン」を付けていて、「スーパー」は付けていません。交換時期は液の名前ではなく車ごとの資料で確かめることになります。
公開されている資料から拾えた交換時期は次のとおりです。ホンダと日本ケミカル工業は、距離と年数のうち早く来たほうで交換するとしています。
| 資料 | 液 | 初回 | 2回目から |
|---|---|---|---|
| ホンダ メンテナンスガイド(ガソリン・自家用乗用車、2025年2月) | 記載なし | 20万kmまたは11年 | 12万kmごとまたは6年ごと |
| マツダ CX-30 取扱説明書 | 純正ロングライフクーラント | 3年 | 2年ごと |
| マツダ CX-30 取扱説明書 | 純正ロングライフクーラント(ゴールデン) | 18万kmまたは9年 | 10万kmごとまたは4年ごと |
| トヨタ ピクシス エポック 取扱説明書(2018年1月版) | トヨタ純正スーパーロングライフクーラント | 3年 | 2年ごと |
| 日本ケミカル工業が挙げる自動車会社の例 | スーパーLLC | 7年または16万km | 4年または8万km |
マツダのCX-30は、同じ車種で液が2種類あります。ラジエーターキャップかその近くに「FL22」のマークがあれば、ゴールデンを使う車です。
交換時期が書いてある場所は、メーカーと資料の版で違います。ピクシス エポックの2018年1月版は、取扱説明書の「サービスデータ」の表に載せ、詳しくは別冊の「メンテナンスノート」を見るよう書いています。トヨタの現行の取扱説明書(カローラの2026年5月版など)の「メンテナンスデータ」は、指定の液と凍結保証温度、容量を載せていて、交換時期の欄はありません。日産はよくある質問で、油脂類の交換時期はメンテナンスノートで確かめるよう案内しています。
減っていなくても交換するのは、使ううちに液そのものが傷むからです。ウォーターポンプメーカーのGMBは、LLCを長く使うと防錆剤が減り、主成分のエチレングリコールが蟻酸に変わることを、ウォーターポンプのインペラー(羽根車)やボディが腐食する原因に挙げています。部品メーカーのアステモの技術資料も、傷んだ冷却水が酸性になり泡を消す力が落ちることを、インペラーの腐食や侵食の原因にしています。
冷却水を入れる回路は、エンジンの1つだけとは限りません。取扱説明書とよくある質問に載っている例です。
| 車 | 回路と容量(参考値) | 指定の液 |
|---|---|---|
| トヨタ カローラ ハイブリッド(2026年5月版) | ガソリンエンジン5.5L、パワーコントロールユニット1.5L | どちらもトヨタ純正スーパーロングライフクーラント |
| 日産 セレナ e-POWER(C27型、2WD) | エンジン冷却水 約7.6L(エアコンの仕様により約6.3L)、インバーター冷却水 約4.5L | どちらも日産純正スーパーロングライフクーラント |
| マツダ CX-30(SKYACTIV-X、SKYACTIV-D) | エンジンのほかに水冷式インタークーラー1.6L | 純正ロングライフクーラントまたはゴールデン |
| トヨタ bZ4X(2023年10月版) | ラジエーター6.1L(4WD車は7.6L)、ヒーターシステム4.5L | ラジエーターはトヨタ純正駆動用バッテリークーラント、ヒーターはトヨタ純正スーパーロングライフクーラント |
bZ4Xのラジエーターの液はスーパーロングライフクーラントとは別の液です。トヨタは純正品か同等の性能の液を使うよう求め、純正品以外を入れた場合は駆動用バッテリーの安全性を保証できず、最悪の場合は電池の短絡や損傷につながるおそれがあるとしています。車から抜いた液は、純正品でも使い回さないよう書いています。
足す液を決めるのは、車が指定している液の名前です。日産はリーフ(ZE0型)とセレナ(C27型)のよくある質問で、日産純正スーパーロングライフクーラントを必ず使うよう書いています。トヨタは純正の液を勧め、それ以外を使う場合は「指定銘柄に相当する品質のもの」を使うよう書いています。マツダのCX-30は、先に書いたとおりFL22のマークで液が分かれます。
ホンダのメンテナンスガイドは油脂や液類を補給するときの注意として「銘柄やグレードの違うものを混用しないでください」と書いています。
色は見分けるための染料の色で、先に挙げた色の説明も「多い」という言い方です。色だけでは指定の液かどうかは決められません。
カローラ ハイブリッド(2026年5月版)の取扱説明書は、オーバーヒートしたときの手順の中で、冷却水がない場合の応急措置として水を足すよう書いています。手順は、ハイブリッドシステムが十分に冷えてから漏れと液量を確かめて補給するもので、冷却水はゆっくり入れるよう注意しています。高温出力制限の表示が出たときの手順では、水を足したらできるだけ早く販売店で点検を受けるよう書き、水温計がレッドゾーンに入ったときの手順は、ファンが回っていれば最寄りの販売店で点検を受けるところで終わります。ほかの車や回路で水を足してよいかは、それぞれの取扱説明書で確かめます。bZ4Xのラジエーターには、前の節のとおり専用の液が指定されています。
日本ケミカル工業は凍結の原因に「水道水等の補充による、冷却液の濃度低下」を挙げています。
メーカーごとの防錆剤の系統の違いは、冷却水の色を扱った記事をご覧ください。
濃度は冷却水の体積のうちLLCの原液が占める割合です。濃度ごとの凍結温度は、資料によって表示が違います。
| 濃度 | 日本ケミカル工業の説明 | トヨタ純正スーパーロングライフクーラント |
|---|---|---|
| 30% | −15度前後 | −12℃ |
| 50% | −35度前後 | −35℃ |
30%の欄は、トヨタの表示が−12℃、日本ケミカル工業の説明が「−15度前後」で、同じではありません。トヨタの取扱説明書は指定の液の凍結保証温度を「メンテナンスデータ」の欄に載せています。
売られているLLCには、原液と、指定の濃度に調製済みの液があります。ホンダの純正用品では、ウルトララジエーター液(原液)は「指定濃度に希釈して使用してください」、ウルトラeクーラントは「指定濃度に調製済みなので、希釈せずそのままご使用ください」とされています。調製済みの液をさらに水で薄めると、濃度は指定より下がります。
日本ケミカル工業は、濃すぎると逆に凍結温度が上がり、薄すぎると錆を防ぐ力が足りなくなる場合があるとしています。JIS K 2234はエンジンの冷却液として30〜60%で使う液を定めていて、アステモは車のメーカーが指定する濃度(30〜50%)で使うよう書いています。ピクシス エポック(2018年1月版)の規定の濃度は30%で、寒冷地では50%です。車の規定の濃度と指定の液は、回路ごとに取扱説明書で確かめます。
凍ると、冷却水の体積が増えてシリンダーブロックやラジエーターが壊れることがあります(日本ケミカル工業)。GMBは、凍った冷却水でウォーターポンプのインペラーが空回りし、オーバーヒートにつながることも挙げています。
原液を薄める水について、ホンダは上水道の水(軟水)を使うよう書いています。日本ケミカル工業も水道水以外の水を使うことを錆の原因に挙げています。
トヨタはピクシス エポックの取扱説明書(2026年8月版)で、冬を迎える準備として、エンジンオイルやウォッシャー液と並べて、冷却水も外気温に合ったものを使うよう書いています。
リザーバータンクの液面は、エンジンが温まると上がり、冷えると下がります。ホンダのメンテナンスガイドは、液面が上限(MAX)と下限(MIN)のあいだにあるかを見て、下限より下がっていれば上限まで足すよう書いています。そのうえで、減り方が著しいときは水漏れが考えられるとして、必ず販売店で点検を受けるよう書いています。
エンジンやラジエーターが熱いうちは、ラジエーターキャップやリザーバータンクのキャップを開けないでください。冷却水には圧力がかかっていて、高温の蒸気や冷却水が噴き出すおそれがあります(ホンダ、トヨタ)。
漏れる場所としてトヨタはラジエーターのコア(放熱部)やホースを、GMBはラジエーター、ラジエーターホース、ヒーターコアを挙げています。
ウォーターポンプにはもともと冷却水がわずかに外へ出る仕組みがあります。冷却水で満たされたポンプ室と軸受け(ベアリング)のあいだは、回りながら水を止める部品(メカニカルシール)で仕切られています。GMBによると、シールの当たり面を潤した液は蒸気になり、ポンプ本体の水抜孔から外へ出ます。アステモは、本体の上に蒸気穴、下にドレン穴があり、わずかな冷却水が外に出ることがあると説明しています。新しいポンプを付けた直後に出る蒸気は、当たり面がなじむと止まるとGMBは書いています。
水抜孔やドレン穴からの水漏れの原因には、傷んだ冷却水、冷却水に混じったごみやスラッジ、塗りすぎた液状ガスケット、冷却水が足りないままの運転などがあります(GMB、アステモ)。
アステモのウォーターポンプの交換を判断する診断の例では、ドレン穴や取付面の漏れ跡を目で確かめたうえで、ラジエーターキャップテスターで100kPaをかけて20分おく水圧試験で漏れた場所を確かめます。水圧試験で漏れがなければ、続いてエンジンを暖機し、20分のアイドリングで回して漏れを確かめます(回転試験)。そこでも漏れが見つからなければ、一時的な水漏れか正常な蒸気漏れと判断します。100kPa・20分は同社の資料の条件で、実際の作業の圧力と手順は車種ごとの整備要領に従います。
ウォーターポンプを替えるときは、古いポンプを付けたまま冷却水を入れ替えて系統を洗い、ポンプを替えたあとは冷却水を新品にするよう、GMBとアステモの両方が書いています。
冷却水はエンジンの中で減ることもあります。国土交通省に届けられたリコールの不具合の説明には、ヘッドガスケットの気密が損なわれて冷却水が燃焼室に入り、点火プラグが濡れ、最悪の場合はエンストしたり始動できなくなったりするもの(二輪車)と、燃焼ガスが冷却水路に入ってリザーバータンクから冷却水を吹き返し、最悪の場合は冷却水がなくなってオーバーヒートに至るもの(コンバインの原動機)があります。
市販の漏れ止め剤は、冷却水に入れないよう車と部品の両方のメーカーが書いています。日産はリーフについて、走行用モーターやインバーターが壊れるおそれがあるとしています。トヨタは冷却水用の添加剤を使わないよう書き、アステモは漏れ止め剤が冷却水の中の異物になり、メカニカルシールを傷めるとしています。
自家用乗用車の12か月点検では、冷却水の漏れが点検項目に入っています。点検の項目と周期は法定点検(12ヶ月点検)は受けないとどうなるか―義務と罰則の条文、車検との違い、車種ごとの周期、記録簿、費用、ステッカーを、冬の前のタイヤの準備はスタッドレスタイヤの交換時期―地域ごとの初雪・初氷の平年日、店が混む時期、夏タイヤに戻す目安、去年のタイヤの確かめ方をご覧ください。
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