法定点検(12ヶ月点検)は受けないとどうなるか―義務と罰則の条文、車検との違い、車種ごとの周期、記録簿、費用、ステッカー
法定点検は、車検とは別に法律で決められた定期点検です。自家用の乗用車なら、車検のない年に受けるのが12か月点検です。受けるのは車の使用者の義務で、車検に合格しても、この点検を受けたことにはなりません。
新車保証の期間中に壊れた部品でも、決められた点検をしていなかったことが原因なら無料では直さない、と保証書に書いているメーカーがあります。
受けなかったときにどうなるかは、点検を義務づけた条文には書かれていません。車検の前の点検を後回しにした車や、点検の記録を持っていかなかった車は、そのことが記録に残ります。
受けないとどうなるか
12か月点検を受けなかったことには道路運送車両法の罰則の定めがありませんが、点検は車の使用者の義務で、受けていないことはメーカー保証で無料修理を断られる理由になることがあります。
道路運送車両法は、使用者に車の種類と用途で決まった周期(自家用の乗用車は1年ごと)の定期点検と、点検整備記録簿への記入を義務づけています。法律の最後にまとめられた罰則の条文は、どちらの義務の違反も挙げていません。日常点検の義務も同じです。
罰則の条文には、国が出す整備命令に従わなかったときが挙がっています。車が国の基準(保安基準)に合わない状態、または合わなくなるおそれがある状態のとき、地方運輸局長は使用者に整備を命じることができます。命令に従わないと50万円以下の罰金の対象で、従わない車に出される使用の停止に違反すると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。整備命令は、点検を受けたかどうかとは別に、車の状態を見て出されます。
ブレーキや灯火などが基準に合わず、交通の危険を生じさせるおそれのある車を運転することも、道路交通法が禁じていて、罰則があります。
緑ナンバーのトラックやバスなど事業用の車には、別の決まりと処分があります。運送事業者には、道路運送車両法の点検に加えて、車の使い方に合わせた点検の基準を自分で作って点検することが求められています。近畿運輸局がトラック運送事業者向けに定めた処分の基準では、12か月点検をしていない車は、初違反(今回の違反を確認した日から過去3年以内に、同じ営業所で同じ違反による行政処分等がない場合)で1台につき10日車(停止する車の台数と日数を掛けた数)の車両停止が基準です。初違反で基準日車等が10日車以下の場合に限り、違反を防ぐ注意と監督を尽くしていた証明があった場合などは、10日車を警告に軽くできる定めもあります(複数台が未実施のときの扱いは、公示からは読み切れません)。最初の車検証の有効期間が2年の車の最初の12か月点検はこの基準から外れ、すべての車で定期点検をまったくしていない場合は別の基準で処分されます。
保証については、トヨタの保証書(自家用乗用車、2026年1月30日付)が次のように書いています。
法令ならびにトヨタが指定・推奨する、定期点検整備・日常点検の未実施および定期交換部品の未交換に起因する不具合は保証修理いたしません。
同じ保証書は、定期点検整備をしたことを記録したメンテナンスノートなどの記録簿を持っておくことを、持ち主が守る事項に挙げています。ホンダの二輪車の保証の案内は、メンテナンスノートに書かれた定期点検整備を受けなかったこと(不備や未記入を含む)が原因の不具合について「保証修理いたしかねることがあります」としています。ほかのメーカーの車は、メンテナンスノートの保証の欄で条件を確かめられます。
車検との違い
車検は、検査を受けたその時点で車が国の安全・環境の基準に合っているかを、国が必要最小限だけ確かめるものです。次の車検までの安全を保証するものではないので、使用者が日常点検と定期点検をすることが別に義務づけられています。国土交通省は次のように書いています。
検査(車検)と点検・整備はリンクするものではなく、検査(車検)に合格したことをもって、点検・整備を省略できるものではありません。
自家用の乗用車では、車検と車検の間の年に受けるのが12か月点検(1年点検)、車検の時期に受けるのが24か月点検(2年点検)です。
24か月点検は車検の後でもよい
24か月点検を車検の前に受けるか後に受けるかは、持ち主が選べます。車検を先に受けて点検を後に回すやり方を、国土交通省は「前検査(後整備)」と呼んでいます。点検整備が済んでいなくても車検は受けられ、その場合は車検のあと速やかに点検整備をして、結果を記録します。
整備工場に車検を頼むと、工場は24か月点検と整備をしてから検査を受けるか、指定工場なら自分の検査設備で検査をします。車検を受けることだけを仕事にしている代行業者は点検整備をしないので、頼む前に確かめるよう中部運輸局が案内しています。
車検証とステッカーに残る記録
車検のときには、点検整備記録簿を見せることになっています。記録簿で点検整備をしたことが確かめられなかった車は、車検証の備考欄に「点検整備記録簿記載なし」と記録されます(電子車検証はICタグに記録)。点検を済ませていても、記録簿を持っていかなければ同じ扱いです。あとから訂正はできません。この記録は、軽自動車以外が2014年2月、軽自動車が2015年1月に始まりました。
記録簿を見せなかったなどで点検の実施が確かめられなかった車は、検査標章(車検ステッカー)の裏の余白にも「法定点検未実施(車検時)」と印字されます。軽自動車以外は2020年4月から、軽自動車は2024年1月から始まり、二輪車、被けん引車、前面ガラスの無い大型特殊自動車は対象外です。整備工場に車検を頼んだ場合でも、記録簿を出せなければ印字されます。
国土交通省は、前検査で車検を受けたすべての持ち主に、点検整備が必要なことを伝え、車検のあとに実施したかを尋ねるアンケートはがきを送っています。軽自動車は軽自動車検査協会が発送します。
車検で基準に合わない箇所が見つかると、使用を停止する必要がある場合を除き、その箇所を書いた有効期間15日の「限定自動車検査証」が渡されます。その箇所が劣化や摩耗によるもので、自家用の乗用車なら24か月点検をしていなかったと記録簿などで分かると、国は点検と必要な整備をするよう勧告できます。劣化や摩耗による不合格の箇所が1か所でもあれば勧告の対象で、勧告したことは車検証の備考欄に記録されます。勧告の件数は、国土交通省の集計で2025年度が404件でした。
点検の周期は車の種類と用途で決まる
点検の周期と項目の数は、車の種類と用途で次のように分かれます。
| 車の種類と用途 | 点検の周期 | 点検項目の数 |
|---|
| 自家用の乗用車と、車検のある自家用の軽自動車(いずれも三輪を除く。軽の貨物車・軽のキャンピングカーを含む)、黒ナンバーの軽貨物 | 1年ごと(2年ごとに項目が増える) | 1年ごと29、2年ごと60 |
| 自家用の二輪車(125cc超) | 1年ごと(2年ごとに項目が増える) | 1年ごと35、2年ごと54 |
| 自家用の貨物車(4ナンバー・1ナンバー。軽を除く)、自家用の特種用途車(8ナンバーのキャンピングカーなど。軽と二輪を除く)、自家用の幼児の送迎専用車(軽を除く)、自家用の三輪自動車、自家用の大型特殊自動車、車検のない自家用の軽自動車(二輪を除く)、下の3か月の行に入らないレンタカー(乗用車、車検のある軽自動車など。二輪を除く)。いずれも車両総重量8トン以上の車と乗車定員11人以上の車を除く | 6か月ごと(12か月ごとに項目が増える) | 6か月ごと24、12か月ごと86 |
| 二輪車のレンタカー | 6か月ごと(12か月ごとに項目が増える) | 6か月ごと35、12か月ごと54 |
| 事業用のバス・トラック・タクシー、自家用で車両総重量8トン以上または乗車定員11人以上の車、レンタカー(二輪を除く)のうち、貨物車・幼児の送迎専用車・特種用途車(いずれも軽を除く)、人を運ぶ三輪自動車、大型特殊自動車、車検のない軽自動車(二輪を除く) | 3か月ごと(12か月ごとに項目が増える) | 3か月ごと51、12か月ごと101 |
最初の車検証の有効期間が3年の車(新車の自家用乗用車など)は、2年目も1年ごとの項目で点検し、3年目(最初の車検のころ)に2年ごとの項目で点検します。
黒ナンバーの軽貨物(軽自動車での運送業)は事業用ですが、道路運送車両法では運送事業の車から外されているので、表の1年ごとの区分に入ります。運送事業者としては別に、車の使い方に合わせた定期点検の基準を自分で作って点検し、記録を残すことが求められています。
排気量125cc以下の原付は、この点検の義務の対象外です。
12か月点検で見るところ
自家用の乗用車の12か月点検は29項目で、そのうちブレーキまわりが10項目、エンジンまわりが5項目です。
| 装置 | 12か月点検で見るところ |
|---|
| ブレーキ | ペダルの遊びと効き、駐車ブレーキの引きしろと効き、ホース・パイプの漏れと取付け、ブレーキ液の漏れ、パッドの摩耗とディスクとのすき間(ドラム式はライニングの摩耗とすき間) |
| タイヤ・ホイール | タイヤの状態、ホイールナット・ボルトの緩み |
| エンジン | 排気の状態、エアクリーナーエレメントの状態、オイル漏れ、ファンベルトの緩みと損傷、冷却水の漏れ |
| 動力伝達 | クラッチペダルの遊び、トランスミッションの油漏れと油量、プロペラシャフト・ドライブシャフトの連結部の緩み |
| 電気 | 点火プラグの状態、バッテリーのターミナルの接続(ディストリビューターのある車は点火時期とキャップも) |
| その他 | パワーステアリングのベルト、マフラーの取付け、OBD(車載式故障診断装置)の診断結果、ガスを燃料にする車のガス漏れ |
バッテリーで見るのはターミナルの接続だけで、容量や劣化の具合は12か月点検の項目に入っていません。
OBDの診断結果は2021年10月に加わった項目で、スキャンツールを使い、車のコンピューターが記録した故障の有無を読み出します。エンジン、ブレーキ、ABS、エアバッグ、衝突被害軽減ブレーキなどの警告灯の点検で代えることもできます。大型特殊自動車、被けん引車、二輪車は対象外です。
24か月点検は、この29項目に、ハンドルの操作具合、かじ取りのロッドやアームのがた、ホイールアライメント、ホイールベアリングのがた、ショックアブソーバー、ブレーキディスクの摩耗、排気ガスを減らす装置、車枠と車体などの31項目を加えた60項目です。
前回の点検(または車検証の交付)からの走行距離が1年あたり5,000km以下の車は、29項目のうち11項目を省けます。ブレーキパッドの摩耗、タイヤの状態、ホイールナットの緩みもこの11項目に入っています。省けるのは、前回のその点検を受けるべき時期に受けていた場合だけです。
点検は使用者が自分でしてもよく、国の認証を受けた整備工場に頼むこともできます。
12か月点検とは別に、ライトの点灯やブレーキの効きなどを目で見て確かめる日常点検も使用者の義務です。自家用の乗用車は、走行距離や使い方から判断した時期に行います。
点検整備記録簿
点検整備記録簿は、点検の結果と整備の内容を書き残すもので、メーカーが渡すメンテナンスノートに付いています。使用者は記録簿を車に備え置き、点検や整備をしたら書き込みます。書くのは、点検の年月日と結果、整備の概要と終えた年月日、登録番号(軽自動車は車両番号)、点検したときの総走行距離、点検や整備をした人の氏名と住所です。使用者が自分で点検した場合は住所を省けます。
整備工場に頼んだ場合はふつう工場が書き込みますが、書いて残す義務を負うのは使用者です。
保存期間は書いた日から、1年ごとの点検の車(自家用の乗用車など)が2年、3か月・6か月ごとの点検の車が1年です。国土交通省は、できるだけ長く残して車の「生涯記録簿」として使うよう勧めています。
車検を受けるときは記録簿を見せます。運輸支局や軽自動車検査協会で受けるときは、紙の記録簿が要ります。
ふだんの保存は、スマートフォンなどに記録したデータや、記録簿を読み取った画像を持ち歩く形でもかまいません。クラウドに置いておく方法も、運輸局などから見せるよう求められたときにその場で画面に出せるなら、車に備え置いたことになります。電池切れや電波の状況、操作に慣れていないといった理由で表示できなければ、点検整備をしていないものとして扱われます。
費用の目安
全国の平均として日本自動車整備振興会連合会(日整連)が最新の結果に挙げているのは、2015年7〜9月に車検以外の定期点検3万7,046台分を集めた調査です。1年点検の平均は次のとおりでした。
| 車 | 基本点検技術料の平均 | 1台あたりの合計の平均 |
|---|
| 軽自動車 | 8,251円 | 13,448円 |
| 乗用車 1.0〜1.5L | 9,563円 | 15,072円 |
| 乗用車 1.5〜2.0L | 10,453円 | 17,368円 |
| 乗用車 2.0〜2.5L | 11,552円 | 19,038円 |
| 乗用車 2.5L〜 | 12,253円 | 21,824円 |
基本点検技術料は、決められた項目を点検するだけの料金です。合計は、これに点検で見つかった箇所の整備技術料と、部品・油脂代を加えたものです。基本点検技術料の平均はその項目の金額が記入された車だけで割り、合計の平均は調べた全台数で割っているので、内訳を足しても合計とは合いません。6か月点検は、自家用ライトバン(1.5L)の合計の平均が11,643円でした。この調査は、OBDの診断結果が点検項目に加わった2021年10月より前のものです。
いまの料金の例として、スズキの販売会社4社が2026年10月10日の時点でサイトに出している12か月点検の料金(税込)は次のとおりです。
| 販売会社 | 軽自動車 | 登録車(小型車・普通車) |
|---|
| 岐阜スズキ販売 | 11,000円 | 13,200円(〜2.0t) |
| スズキ自販群馬 | 13,200円 | 15,400円(〜1,800cc)、16,500円(RV車) |
| スズキ自販長野 | 14,080円 | 15,180円(小型車クラス)、16,280円(普通車・ミニバンクラス) |
| スズキ自販東京 | 16,500円 | 18,700円(小型車)、20,900円(普通車) |
軽自動車の料金は、この4社の間で1.5倍の開きがあります。長野の料金はブレーキ洗浄と補充の油脂代を含むとしていて、同じ名前の点検でも、料金に含まれる作業は会社ごとに違います。オイル交換は4社とも別の料金です。
点検・整備済みステッカー
フロントガラスの助手席側の上にある丸いステッカーは「点検・整備済みステッカー」です。日整連の冊子によると、定期点検整備をした車であることを示し、次の点検の時期が外から分かるように年月を表示しています。裏面には、点検整備をした整備工場の名前や次の点検の時期などが書かれています。
運転席側の上(2023年7月以前に車検を受けた車は中央の上)に貼られているのは検査標章(車検ステッカー)で、車検の有効期間を示すものです。表示することが法令で決まっていて、表示しなければ車を走らせられません。点検・整備済みステッカーを貼るよう求める規定は、道路運送車両法とその施行規則、保安基準、自動車点検基準のどれにもありません。
出典
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