バッテリー上がりは冬のトラブル——かかりが悪くなる予兆もあるし、夏は心配ない。そう思っているドライバーは多く、実際、JAFのロードサービスで最も多い出動理由はバッテリー上がりで、件数が積み上がるのも冬です。2025年度は過放電バッテリーと破損/劣化バッテリーを合わせて997,116件、全体の43.17%を占めました。
ところが同じデータを月ごとに開くと、6月から8月にかけて倍近くに増えている項目が別にあります。しかもこちらは、かかりが悪くなるという予兆をほとんど出しません。気づくのは、お盆の渋滞や出先の駐車場でエンジンがかからなくなったときで、JAFを呼べば非会員の応急始動は21,700円です。
今年は8月1日までに、35℃以上を記録した観測地点が487地点、40℃以上が11地点あります。高温がバッテリーの中で何をしているのか、走り出す前にどこを見れば足りるのか——数分の点検で決まります。
以下は、JAFが月ごとに公開している2025年度の一般道路・四輪のデータのうち、バッテリーに関わる3項目です。

「過放電バッテリー」は6月の48,771件が底で、1月の88,320件が頂点。バッテリー上がりは冬に多いという印象は、この項目から来ています。
推移が違うのは「破損/劣化バッテリー」のほうです。6月の10,175件から、7月13,955件、8月18,228件と、2か月で1.79倍になります。救援の総件数も夏に増えるため、構成比で見ても6.60%、8.14%、9.59%と上がります。しかもこの項目は、そのあとも夏前の水準へ戻りません。構成比は9月10.81%、10月11.23%とさらに上がり、年度末の2026年3月になっても件数は14,361件と、6月の10,175件を大きく上回ったままでした。
前年度も同じ形でした。2024年6月の9,550件が8月に17,412件で、1.82倍です。連休どうしを比べても差は出ていて、2025年のお盆(8月9日〜18日・10日間)の破損/劣化バッテリーが一般道路で6,489件・構成比9.22%だったのに対し、ゴールデンウイーク(4月26日〜5月7日・12日間)は日数が長いにもかかわらず5,290件・7.31%でした。
バッテリー本体のほかにもう1つ、8月が年間の最多になる項目があります。「発電機/充電回路」で、2025年8月の4,268件は4月の1,744件の2.45倍。前年度も8月の4,628件が年間最多でした。夏に集中しているのは、充電する側の故障です。
この分類はJAFが出動理由として記録したもので、故障診断の結果ではありません。それでも、夏に増えたのは「電気を使い切った」ではなく「壊れた・劣化した」側で、これは2年度とも変わりません。
まず液が減ります。走行中の充電でバッテリーの容量を超える電気が入ると液の中の水が酸素ガスと水素ガスに分解され、そこへ自然蒸発が重なります。液の減りは設置温度が高いと速く、電池工業会は液が短期間で多く減る条件の筆頭に「バッテリーの設置温度が高い場合」を挙げています。夏を名指しした注意もあります。GSユアサは「高温下での使用が続くと液減りを起こしやすくなります。特に夏場は液量の管理を徹底してください」と書いています。
減った先で何が起きるかが問題です。
液面が下がると極板の上端が液から出て、露出した金属部分の劣化が進み、劣化した部分で火花が出るようになり、その火花が内部にたまった水素ガスに引火する。電池工業会はこの4段階を示したうえで、液量が不足していると爆発が大きくなることがある、と付け加えています。一度液が減って極板が露出したバッテリーは、補水しても短期間でまた減ります。ここまで来たら交換です。
劣化そのものも速まります。寿命が尽きる原因として、GSユアサは高温環境による劣化を挙げ、電池工業会も寿命が短くなる使用状況に「高温下での使用が多い」を含めています。
高温は劣化を早めますが、劣化が進むあいだも性能は落ちません。パナソニックの説明はこうです。
温度が高いと性能は上がりますが、バッテリーの劣化が早くなり、寿命は短くなります。

エンジン始動に必要な電流は夏で約90〜120A、冬で約150〜190Aと、冬は夏の1.5倍ほど。バッテリーの容量も、電解液温度25℃なら100%あるものが0〜10℃では80〜90%まで落ちます。夏は、弱ったバッテリーでも足りてしまう季節です。
つまり、多少弱っていても、セルモーターは夏のあいだ普通に回ります。回り方で判断できない理由は、もう1つあります。近年増えているバッテリー上がりの形を、GSユアサはこう書いています。
また、最近は「バッテリーの突然死(寿命)」によるバッテリー上がりも多くなっています。これは車両およびバッテリーの性能が向上したことで、寿命末期までエンジン始動ができるため、ドライバーがバッテリーの劣化に気が付かないためです。
JAFも、夏と冬をつなげて書いています。「夏季の厳しい使用状況を乗り越えても、その使用状況から冬季になって弱ったバッテリーがトラブルを起こすことも考えられます」。月別データで破損/劣化バッテリーが夏に増えたまま年度末まで戻らないのは、この向きと合っています。
アイドリングストップ車では、アイドリングストップが働かなくなることが電圧低下の症状の1つに数えられています。ただし夏はこれを予兆として使いにくい。ホンダはN-BOXの再始動条件に、「バッテリーの放電量が多いとき」と並べて「エアコン使用中で設定温度と車内の温度差が大きくなったとき」を挙げています。炎天下では設定温度との温度差が大きくなりやすく、後者の条件がよりわかりやすくなります。
夏の電気の使い方は、発電量が落ちる場面と重なります。オルタネータはアイドリング中も発電しますが、エンジンの回転数が低いぶん量は減る。GSユアサの解説では、一定速度での走行時に比べて40%程度になることもある、とされています。渋滞と信号待ちでは、発電量が落ちた状態で電装品を回し続けることになります。
主な電気負荷は、エアコンが10〜20A、灯火類が6〜18A、電動スライドドアが8〜10A、ステレオ等が2〜6A、ワイパーが2〜3A。夏の夜に雨が降って渋滞していれば、エアコン、ヘッドライト、ワイパー、オーディオ、カーナビが同時に動き、ブレーキランプも頻繁に点きます。JAFはこの状況を、エンジンがかかっていてもバッテリーを消耗する例として挙げています。
走る距離が短ければ、崩れた収支は取り戻せません。シビアコンディションの目安として電池工業会が示しているのは、1回の走行距離が8km程度と短い走行の繰り返し、走行距離の30%以上が30km/h以下、年間20,000km以上の3つです。夏の買い物と送迎は、はじめの2つに当てはまります。収支を戻すための走行充電の目安は、1〜2週間に1回、1時間以上です。
止まっているあいだも電気は出ていきます。暗電流は一般に10〜30mA、エンジンの始動限界は容量の60〜70%程度の放電までです。仮に容量27Ahのバッテリーで暗電流が30mAなら、約23〜26日で始動できなくなる計算です。ドライブレコーダーの駐車監視を後付けしていれば、この日数はさらに縮みます。
充電制御車とアイドリングストップ車は、設計の時点で放電気味に使われる車です。充電制御車に通常のバッテリーを載せると回生充電だけでは足りず、放電気味のまま使われ続けてバッテリー上がりや内部劣化を招く可能性がある、とGSユアサは説明しています。アイドリングストップ車のほうは、停止中の電力供給と再始動の大電流放電が繰り返されるため専用バッテリーが要ります。パナソニックは、一般のバッテリーを使うと寿命が短くなるとし、アイドリングストップが正常に動作しなくなるおそれも挙げています。
液量から始めます。手順は、側面から液面線が見えるかどうかで分かれます。
側面から見える場合は、水で湿らせた布で液面線の周囲を清掃し、液量がUPPER LEVELとLOWER LEVELの間にあることを確認します。乾いた布は使いません。静電気で引火爆発するおそれがあるためです。液面が2本の線の中間より下がっていたら、ただちにUPPER LEVELまで精製水(市販のバッテリー補充液でも可)を補充し、液口栓をしっかり締めます。
側面から見えない、またはUPPER LEVELの表示がないバッテリーは、上部の液口栓を外して注液口をのぞきます。フタから注液口の中へ伸びている筒(スリーブ)の下端が最高液面線にあたるので、液面がそこに届いていなければ下端まで補充します。
インジケーターが付いていても、それだけで済ませないよう電池工業会は求めています。インジケーターが表示しているのは6セル中の代表1セルの液比重と液量だけだ、とパナソニックが説明しています。同社は「エンジン始動の可否を表示するものではありません」と念を押しています。表示の意味は3通りに分かれます。
| インジケーターの表示 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| 周り青/中央赤 | 液比重・液量ともに良好 | そのまま使用 |
| 周り白/中央赤 | 液比重が低下 | 充電する。戻らなければ交換 |
| 周り赤/中央白 | 液量が不足 | 速やかに補水する。補水せず使い続けると爆発のおそれ |
表示が黒くなって読めない場合は、使用を続けずに交換します。
電圧は、エンジンを止めてから5〜10分置いて測ります。走行直後は高く出るためです。同じ電圧でも、使用年数によって読み方が変わります。
| 使用年数 | 10.5V以下 | 10.5〜12.3V | 12.4V以上 |
|---|---|---|---|
| 1〜2年未満 | 単なる放電の可能性が高い | 充電で回復可能 | 正常 |
| 2〜3年以上 | 極板の脱落で化学反応が弱まっており交換が必要 | 充電で使える可能性はあるが早めの交換を検討 | 正常 |
エンジン回転時は13.5〜14.7Vが正常値です。13V未満ならオルタネータ、Vベルト、レギュレーターなどの不具合で発電量が不足している可能性があり、16V以上ならレギュレーターの故障で過電圧になっています。8月に増える「発電機/充電回路」は、この範囲を外れた車で起きる種類の故障です。
外観と液面だけでは内部の状態は分かりません。テスターは内部抵抗や負荷をかけたときの電圧の落ち込みを見ますが、劣化していなくても単に放電しているだけで結果が悪く出ることがあり、そこを切り分けるには比重計が要ります。6セルすべての比重を測ったときの読み分けは3通りです。
| 比重の出かた | 判定 |
|---|---|
| セルによりバラツキが出る(最高値と最低値の差が0.04以上) | 寿命 |
| すべてのセルの比重が低い | 放電 |
| 1セルだけ比重が低い | 短絡 |
比重の絶対値は充電状態に対応します。20℃換算で1.280が100%、1.240が75%、1.200が50%、1.160が25%、1.120が0%です。
見る時期の目安もあります。液量点検は1か月ごとの実施を勧め、長距離走行の前と高速道路に乗る前には必ず行うよう、GSユアサは求めています。8月の帰省は、その両方にあたります。
制御弁式(VRLA)と呼ばれる、液量点検や補水ができないバッテリーもあります。ここまでの液面の手順は当てはまりません。この型は必ず付属の取扱説明書に従うよう、電池工業会は求めています。液を補充できないタイプへの急速充電も、膨れや爆発の原因になるとしてGSユアサが禁じています。ハイブリッド車の12V補機用バッテリーは、上がるとハイブリッドシステムを起動できません。救援は車両の取扱説明書に従います。
バッテリーの液量は、法律で決まった点検項目です。自動車点検基準の別表第2(自家用乗用自動車等の日常点検基準)は、点検箇所「バッテリ」に対して点検内容を1行だけ置いています。
液量が適当であること。
頻度は、道路運送車両法第47条の2第1項が「自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に」としています。事業用自動車と車両総重量8トン以上の自家用自動車などには同条第2項が適用され、頻度は1日1回、運行の開始前です。電池工業会はこの日常点検について、少なくとも1か月に1回、または走行距離や運行時の状態から判断した適切な時期に、と補っています。
1年ごとの定期点検はどうか。同じ点検基準の別表第6(自家用乗用自動車等の定期点検基準)で、電気装置のバッテリの欄に書かれているのは1つだけです。
ターミナル部の接続状態
容量も、比重も、内部の劣化も、法定の点検項目に入っていません。
車検を通した車も、1年点検を受けた車も、バッテリーが弱っていないことは確かめられていません。
乗用車・バス・トラック・タクシー・建機・農機に載っている鉛蓄電池の爆発件数は、電池工業会が毎年集計しています。2024年度は23件で、内訳は乗用車7件、バス・トラック・タクシー11件、建機・農機他5件。2017年度の42件を頂点に減ってきましたが、2020年度以降も16〜24件で推移しています。
同じ年度の原因の内訳は、液切れが52%、その他が35%、液口栓の目詰まりが9%、外部の短絡が4%。半数は、液が切れたまま使い続けて起きています。
高温が条件に入る事故がもう1つあります。
硫化水素の発生です。
電池工業会はこう説明しています。
鉛バッテリーが寿命に近い場合、補水されずに液量が不足している場合、過充電を続けた場合、鉛バッテリーが高温の状態の場合など、複数の条件が重なると、充電によってバッテリー液である硫酸が還元されて硫化水素が発生します。
挙げられた条件のうち、高温と液量不足は夏に同時に揃います。硫化水素は腐卵臭で気づけますが、高濃度では嗅覚の麻痺が起きるといわれている、と電池工業会は注記しています。車室内やトランクにバッテリーを積む車では、発生したガスを車外へ出す排気ホースが正しく付いているかも確認します。パナソニックは、車両側にガス抜き用ホースがある場合、L形プラグを根元まで確実に取り付けるよう求めています。異臭がしたら充電を止め、換気し、そのバッテリーは使いません。
ブースターケーブルをつなぐ順序は4段階です。トラブル車のプラス端子、救援車のプラス端子、救援車のマイナス端子、そして最後がトラブル車のエンジン本体やフレーム。最後をトラブル車のマイナス端子に付けないのは、そこで火花が飛び、バッテリーから出た水素ガスに引火するおそれがあるためです。つなぐ前にトラブル車の液量を点検し、LOWER LEVEL以下なら補水しておきます。ハイブリッド車の救援は、車両の取扱説明書に従います。
JAFを呼ぶ場合、昼間・一般道での応急始動作業は、会員なら無料、非会員は21,700円です(税込、2024年4月1日改定)。
2年以上使ったバッテリーが上がった場合は、交換を検討するようGSユアサは勧めています。充電で戻ったように見えても続かないことがあります。放電したまま置かれると、極板に硫酸鉛が固着します(サルフェーションと呼ばれる状態です)。こうなったバッテリーは、十分に充電すれば一応使えるが長時間の使用に耐えることは期待できない、と電池工業会は書いています。寿命はおおむね2〜3年と、GSユアサもパナソニックも古河電池も書いています。GSユアサは、交換の目安も同じ2〜3年としています。
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