2026年、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。マウンドに、そして打席に立つ大谷翔平選手の背中を押し、スタジアムの空気を一変させるあのイントロ。
重厚なベースと、静寂を切り裂くようなソウルフルな歌声。名曲「Feeling Good」です。
世界中のファンが「大谷にふさわしい神曲だ」と称賛する中、我々自動車整備の世界に身を置く人間は、ある種の「既視感」に襲われます。
「この高揚感、どこかで、いや、リフトの上で感じたことがあるぞ」と。
実はこの曲、今から13年前、日本のセダン市場に革命を起こそうとした「ホンダ・アコード(CR6型)」のテレビCMで、すでにその圧倒的な存在感を放っていたのです。
「Feeling Good」は、もともと1964年のミュージカル『グリース・ペイントの叫び、群衆の匂い』のために書き下ろされた楽曲です。その後、1965年に伝説のジャズシンガー、ニーナ・シモンがカバーしたことで、世界的なスタンダード・ナンバーとなりました。
なぜ、この古いジャズが、最新のハイテクマシンや現代のアスリートに選ばれるのでしょうか?
時計の針を13年前、2013年に戻してみましょう。当時の整備業界は、本格的なハイブリッド時代の到来に戦々恐々としていた時期でした。
そこで登場したのが、9代目アコード(CR6型)です。
ホンダは、従来の「エンジンの補助としてのモーター」という概念を捨て、「モーターが主役、エンジンは発電機」という革新的なi-MMDシステムを市販車に本格投入しました。
【当時のCM演出】
洗練された夜の街並みを、音もなく、しかし力強く加速していくアコード。背景に流れるのは「Feeling Good」。
「上質」と「力強さ」、そして「新しい時代の幕開け」を、この楽曲が見事に演出していました。
当時のホンダのクリエイターは、大谷翔平というスターが現れる10年以上前から、「静かな自信から爆発する力強さ」というこの曲の本質が、日本人が求める“理想のヒーロー像”に合致することを見抜いていたのです。
さて、我々整備士の現場には、今まさにこの「2013年式アコード」が車検やメンテナンスで入庫しています。
走行距離が伸び、ブッシュ類に亀裂が入り、ハイブリッドバッテリーの劣化も気になる年式です。見積もりを見て「もう古いし、買い替えかな」と漏らすお客様に、プロとしてこんな話を添えてみてはいかがでしょうか。
「お客様、このアコードが発売された時のCM曲、実は今、WBCで大谷翔平選手が登場曲に使っているんですよ。13年前の車ですが、ホンダが『時代を変える』と意気込んで作った車。大谷選手と同じ志を持った、今見ても色褪せない名車ですよね」
単なる「修理」を「価値の再確認」に変える。これこそが、AIにはできない、現場を知るベテラン整備士にしかできないマーケティングです。
「Feeling Good」という楽曲、そして2013年のホンダの演出。それらが2026年の大谷翔平選手と重なったのは、決して偶然ではありません。
本物だけが持つ「タイムレスな価値」は、10年や20年の歳月では揺るがないのです。
戦うフィールドは違えど、我々もプロフェッショナルとして、常に最高の結果を出すために準備を整えます。
次にあなたがリフトを上げ、古いアコードのアンダーカバーを外すとき。あるいは、テレビの前で大谷選手の打席を見守るとき。
少しだけ耳を澄ませてみてください。
そこには、「13年前のエンジニアの情熱」と「現代のヒーローの闘志」を繋ぐ、最高のメロディが流れているはずです。
もし、大谷選手のファンだというお客様のアコード(CR6/CR7型)が入庫したら、以下のポイントを重点的にチェックし、「Feeling Good」な走りを取り戻してあげましょう。