冬タイヤへの交換の時期、自分で替えた直後に走行中にタイヤが外れる事故が北海道で3件―異音がしたら走り続けてよいか、交換のあとにナットが緩む理由、締め方
北海道で2026年10月26日と27日、運転手が自分でタイヤを替えた車のタイヤが走行中に外れる事故が3件ありました(旭川と岩見沢は冬タイヤへの交換と報じられています)。旭川市の乗用車、岩見沢市の大型トラック、小樽市の軽乗用車です。旭川では外れたあと駐車中の車に、小樽では近くの会社の小屋に衝突しました。3件ともけが人はいません。
タイヤ交換のあとの増し締めは、50〜100km走ってからが目安です。3件で外れたのは、交換した当日から翌日でした(交換のあと何km走っていたかは報じられていません)。異音に気づいて自宅に戻る途中、違和感があって近くの駐車場に向かう途中、業者に増し締めを頼みに行く途中です。
原因について警察の説明が報じられているのは旭川の1件だけで、ナットの締めが甘かったとみられる、というものです。本文では、異音や違和感が出たときにどこで止まり何を確かめるかと、ナットが緩む作業の抜けを見ます。
3件で起きたこと
| 旭川市 | 岩見沢市 | 小樽市 |
|---|
| 車 | 乗用車 | 大型トラック | 軽乗用車 |
| 外れたタイヤ | 左前輪 | 左後輪2本(ダブルタイヤ)。8個あるナットはすべて外れていた | 前輪(運転手の通報は「左前部」) |
| 交換 | 当日の午前中に運転手が自分で | 前日に運転手が自分で | 前日に運転手が自分で |
| 外れた日時 | 10月26日午後4時前 | 10月27日午前10時ごろ | 10月27日午後1時半前 |
| 外れる前の状況 | 異音に気づき、タイヤを確かめようと自宅に戻る途中 | 違和感があり、近くの駐車場に向かう途中。江別市を出て約30km走ったところ | 業者に増し締めを頼もうと走っている途中 |
| 外れたあと | 駐車中の車に衝突 | 車道上で外れた | 近くの会社の小屋に衝突 |
岩見沢はナットが全部外れていましたが、締め忘れか緩みかは報じられていません。警察は岩見沢の事故のあと、交換後はナットの締め忘れや緩みがないかを確かめ、少し走ってから増し締めをするよう呼びかけています。
脱落が左側に多いという国の統計は大型車だけを数えたもので、この統計に乗用車の件数は含まれません。
異音や違和感が出たら
旭川と岩見沢は、異音や違和感に気づいたあと、確かめる場所まで走っているあいだに外れています。旭川と小樽の警察は、異音がしたらすぐに安全な場所に停車し、ナットの締め付けの状態などを確かめるよう呼びかけています。
自宅や整備工場まで確かめに行くと、そこまでの道のりは、ナットが緩んでいるかもしれない状態で走る距離になります。
一般道で止まって確かめること
止める場所は走る車線から外れ、地面が固く平らな所(駐車場など)です。ハザードランプを点け、パーキングブレーキをかけます。トヨタの取扱説明書は、タイヤの作業をする場所を「地面が固く平らで安全な場所」としています。
その場で目で見て分かるのは、ナットが無い、明らかに浮いている、ボルトのねじやホイールの穴が傷んでいる、といった異常までです。ホイールナットレンチを掛けてナットが回らなかったとしても、正しく締まっているとは言えません。コンチネンタルタイヤは、ねじ部にゴミやサビがあると締めたときに「偽のトルク」が出て、手応えがあっても正しく締まらないことがあると書いています。
| 見えたこと | そこから先 |
|---|
| ナットが無い・浮いている・回る、ねじやホイールの穴が傷んでいる | 走らずにロードサービスを呼び、運んでもらいます |
| 目に見える異常は無い(止まったら異音や違和感が消えた場合も) | 見た目と音が消えたことだけでは、正しく締まっているとは判断できません。走って確かめに行かず、ロードサービスに相談します |
トヨタの取扱説明書は、ボルトやナットのねじ部、ホイールのボルト穴につぶれや亀裂などの異常がある場合は、販売店で点検を受けるよう書いています。その場で締め直しても、締め付けの力が規定どおりかと、ねじや座面が傷んでいないかは、トルクレンチと点検が無いと確かめられません。
運んでもらう場合のJAFの料金は、会員なら20kmまでのけん引が無料です。会員でない人は、昼間の一般道での故障車けん引が27,700円からで、別に1kmごとに830円かかります(JAFが示す一例)。
高速道路で
NEXCO中日本は、高速道路で人がはねられる重大事故が多いとして、その例に「路肩で修理中・タイヤチェーン脱着中」を挙げています。路肩でナットを確かめたり締め直したりするのは、この修理に当たります。
止まったら、ハザードランプを点けます。NEXCO中日本は、発炎筒と停止表示器材(三角停止板)を車の後方に「無理のない範囲で」置き、置くときは車線から離れてガードレールなどの防護柵より外側を通るよう書いています。乗っている全員が、車より後ろの、防護柵より外側の安全な場所に移ります。車内は安全な場所ではないと、NEXCO中日本は書いています。通報は110番、非常電話、道路緊急ダイヤル(#9910)です。
増し締めを頼みに行く前に
小樽の1件は、異音の話は報じられておらず、業者に増し締めを頼みに行く途中で外れています。自分で替えたあとに店へ増し締めを頼むときは、出かける前に家で、ナットが全部付いているか、浮いているものがないかを目で見ておけます。異常があれば、その車で店まで走らずに相談します。
交換のあとにナットが緩む理由
増し締めの「50〜100km走ってから」は、正しく締めたナットでも起きる緩みに合わせた目安です。国土交通省は、締め付けたあとは初期なじみでナットの締め付け力が下がるとして、50〜100km走ったあとを目安に増し締めをするよう書いています。大型車向けの資料ですが、乗用車向けのコンチネンタルタイヤの説明も同じ距離を挙げ、車体の重さ、回転、温度の変化、路面の段差の衝撃でナットの座面がわずかにずれ、締まりがきつくも緩くもなると書いています。
50〜100kmは、それまで安全に走れると保証する距離ではありません。コンチネンタルタイヤは、交換のときの締め付けトルクが適切でないと、走るうちにまれにナットが緩むことがあると書いています。
締め付けの力が足りなくなる作業の抜けは、取扱説明書とタイヤメーカーの資料から次のとおりです。
| 作業の抜け | 起きること | 書いている資料 |
|---|
| ホイールの接触面の汚れを落とさない | 走っているうちにナットが緩み、タイヤが外れるおそれ | トヨタの取扱説明書 |
| ナットのねじ部やナットとホイールの間に、ゴミ・砂・サビが残る | 締めたときに「偽のトルク」が出て、手応えがあっても正しく締まらない | コンチネンタルタイヤ |
| ホイールに合わないナットを使う | ナットが緩み、ホイールが外れ落ちるおそれ | トヨタの取扱説明書 |
| ナットを裏返しに付ける | 同上 | トヨタの取扱説明書 |
| ねじ部にオイルやグリースを付けたまま締める | 必要以上に締め付けられ、ボルトの破損やホイールの損傷のおそれ | トヨタの取扱説明書 |
夏と冬でホイールが違うときのナット
夏タイヤと冬タイヤでホイールの種類が違う車では、ナットも合わせて替える必要があることがあります。
トヨタのアクアの取扱説明書はナットの当たり方をホイールで分けて書いています。スチールホイールではナットのテーパー部(先が円すい形になった部分)がホイールの受け側に当たり、アルミホイールではナットの座金(平らな当たり面)がホイールに当たります。そのうえで、使っているホイール専用のナットを使うこと、ナットはテーパー部を内側にして付けることを、守らないとナットが緩みホイールが外れ落ちるおそれがある項目として挙げています。ホンダアクセスが売るN-BOX用のアルミホイール用ナットには、スチールホイールには付けられないと注記があります。
ホイールの組み合わせによっては専用のナットが要ります。夏と冬でホイールを替えるときは、そのホイールに合うナットを取扱説明書か販売店で確かめられます。
自分で替えるときの締め方
ここに並べるのは、ナットの締め付けに関わる部分の抜き出しです。ジャッキの掛け方・輪止めの位置など車の持ち上げ方は車ごとに違うので、その車の取扱説明書の手順に従います。トヨタの取扱説明書は、ジャッキで上げる前に、地面が固く平らで安全な場所に移り、パーキングブレーキをかけ、シフトをPにし、輪止めをするよう書いています。
- ホイールの接触面、ボルトとナットのねじ部の汚れ・砂・サビを落とす
- ねじ部にオイルやグリースは塗らない。付いていたら拭き取る(トヨタの取扱説明書)
- そのホイールに合ったナットを、取扱説明書が指定する向きで付ける(トヨタのアクアはテーパー部を内側)
- ジャッキで上げた状態で、タイヤががたつかない程度まで手でナットを仮締めする(アクアの取扱説明書では、スチールホイール同士で替えるときはナットのテーパー部がホイールのシート部に軽く当たるまで、アルミホイール同士ではナットの座金がホイールに当たるまで)
- 車体を下ろしてから、トルクレンチを規定トルクの半分に合わせ、決まった順で全部のナットを締める。ナットが4本なら十字の対角線順、5〜10本なら星を描く順(車ごとの順序の指定があればそれに従う)
- トルクレンチを規定トルクに合わせ直し、同じ順で締める
- 50〜100km走ったら、ナットを点検し、必要であれば締め直す(増し締め)
5と6はコンチネンタルタイヤが書く整備士の締め方です。十字レンチなどで先に力いっぱい締め込んでから最後にトルクレンチを掛けても、締めすぎは戻りません。コンチネンタルタイヤは、締めすぎるとねじ山がつぶれたりボルトが伸びたりすると書いています。
交換の作業として締め終わったと言えるのは、6で規定のトルクまで締めたときです。そのあとに7の点検が残ります。トルクレンチが無ければ、整備工場などトルクレンチのある所で締めてもらう必要があります。大型車向けですが、全日本トラック協会のリーフレットも、トルクレンチを持っていない場合は整備工場など備わっている所で増し締めをするよう書いています。
規定のトルクは車で違います。取扱説明書の値の例です。
| 車(取扱説明書の版) | ホイールナットの締め付けトルク |
|---|
| トヨタ アクア(2026年3月〜) | 103N・m |
| ホンダ N-BOX(2024年) | 108N・m |
| トヨタ センチュリー(2025年12月〜) | 140N・m |
自分の車の値はその車の取扱説明書で確かめます。同じメーカーでも車種で値が違います。
手順2のねじ部に油を塗らないという記載はトヨタの2車種の取扱説明書のもので、ホンダ N-BOXの取扱説明書には塗る・塗らないの記載がありません。どちらにするかは自分の車の取扱説明書の記載に従います。
日本気象協会の気象予報士は10月27日、28日の北海道は12月並みの寒気が流れ込み、28日午前6時からの24時間に上川中部の多い所で30センチの雪が降る見込みで、29日以降も雨や雪の日が多くなりそうだとしていました。札幌では28日が初雪の平年日です。
大型車の資料と乗用車の違い
大型車の車輪の締め方にはJIS方式とISO方式があり、油を塗る場所が違います。東北運輸局のタイヤ交換作業管理表(様式例)は次のように分けています。
| JIS方式 | ISO方式 |
|---|
| 潤滑剤を薄く塗る | ボルトとナットのねじ部、ナットの座面(球面座) | ボルトとナットのねじ部、座金とナットのすき間。ハブのはめ合い部(インロー部)にはグリース |
| 油脂や塗装を付けない | (記載なし) | ハブのホイール取付面、ホイール合わせ面、ホイールと座金の当たり面 |
同じ様式は締め付けを対角線の順に2〜3回に分け、最後をトルクレンチで規定トルクにすること、50〜100km走ったあとに増し締めをすることも求めています。国土交通省はJIS方式のダブルタイヤの締め付け方法には特に注意するよう書いています。
大型車の様式でねじ部に油を塗るのを見て、乗用車で同じことをすると、トヨタの取扱説明書とは逆の作業になります。
出典
一次情報(官公庁・メーカー)
準一次情報(タイヤメーカー・業界団体・道路会社)
二次情報(報道)
© 2025 合同会社エン・リンクス. All rights reserved.
本サイトの著作権、商標権、その他の知的財産権は合同会社エン・リンクスに帰属します。 商用利用に関する権利は当社が独占的に保有しています。