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フロントガラスの上部に自動ブレーキや車線維持のためのカメラが付き、特定整備の対象になる車は、ガラスを交換したあと、カメラの向きを車に合わせ直す作業(エーミング)が要ります。国土交通省は、この作業をしないと衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)や車線維持の機能の働きに影響するおそれがあるとしています。飛び石でひびが入ったガラスを替えるときも、この作業がついてきます。
ADAS(先進運転支援システム)はこうしたカメラやレーダーを使う運転支援の装置をまとめた呼び名です。国の資料では同じ種類の装置が「ASV(先進安全自動車)」の技術として扱われ、それを積んだ車は「運転支援車」と呼ばれます。
どの機能がどのセンサーで前を見ているかが分かると、どの作業のあとに合わせ直しが要るかの見当がつきます。認証を受けた工場でなければできない作業の範囲も、自動ブレーキや車線維持に使う前方のセンサーと、その情報を処理するコンピューター、センサーが付いた部品を軸に決まっています。
ADAS(エーダス)はAdvanced Driver Assistance Systemsの頭文字です。カメラやレーダーで車の周りを検知し、運転する人に警告したり、ブレーキやハンドルの操作を助けたりする装置をまとめて指します。
国土交通省は同じ種類の技術を「ASV(先進安全自動車)」の技術として扱っています。ASVは先進技術を使って運転する人の安全運転を支援するシステムを積んだ自動車のことです。国土交通省の用語集では自動運転レベル1とレベル2の車を「運転支援車」と呼び、サポカー(安全運転サポート車)も運転支援車に当たるとしています。
運転支援車では、運転操作をするのは運転する人です。国土交通省は衝突被害軽減ブレーキなどの運転支援装置について「機能には限界があり作動しない場合もあります」としています。
国土交通省のASV推進検討会がまとめた一覧には、乗用車向けだけで28項目の技術が載っています。よく目にするものは次のとおりです。
| 機能(通称と、国土交通省の共通名称) | 何をするか |
|---|---|
| 衝突被害軽減ブレーキ(衝突被害軽減制動制御装置) | 前方の障害物との距離と相対速度を検知し、衝突の可能性が高いと判断すると警報を出す。衝突が避けられないと判断すると自動でブレーキをかける |
| 全車速アダプティブクルーズコントロール(全車速域定速走行・車間距離制御装置) | 運転する人がセットした速度で走り、遅い先行車がいれば車間距離を保つ。先行車が止まれば止まり、止まった状態を保つ |
| レーンキープアシスト(車線維持支援制御装置) | 車線を認識し、車線の中央付近を走るためのハンドル操作の力を軽くする。車線から外れそうになると警報を出す |
| 車線逸脱警報(車線逸脱警報装置) | 車線から外れたとき、または外れそうなときに警報を出す |
| リアビークルモニタリングシステム(後側方接近車両注意喚起装置) | 斜め後ろの車を検知して知らせる。その方向にウインカーを出すと注意を促す |
| ペダル踏み間違い時加速抑制装置 | アクセルの踏み間違いが疑われ、障害物への衝突が予測されるとき、エンジン出力やブレーキの制御で急発進・急加速を抑える |
| ブレーキ付周辺ソナー(低速度域車両周辺障害物衝突被害軽減制動制御装置) | 駐車時や渋滞時の低速走行で周りの障害物を検知し、衝突の危険があればブレーキをかける |
同じ名前の機能でも、作動する速度や条件はメーカーによって違います。ASV推進検討会も、一覧の定義は目的と機能を紹介するもので、作動の詳細を決めるものではないと断っています。
| センサー | 付いている場所 | 得意なこと・苦手なこと |
|---|---|---|
| 単眼カメラ | 主にフロントガラスの上部(大型トラックなどはダッシュボードの上) | 車両や歩行者を見分けるのは得意。距離の推定は一般に他の方式より精度が劣る |
| 複眼(ステレオ)カメラ | 主にフロントガラスの上部 | 間をあけた2つのカメラの画像の差を使い、見分けと距離の測定の両方に優れる |
| ミリ波レーダー | 主にフロントグリルやバンパーの裏側 | 先行車などとの距離と相対速度の測定に強い。雨・霧・雪の影響を受けにくい。物の種類を見分ける力はシステムによる |
| 赤外線レーザー | 主にフロントガラスの上部 | 距離の精度は高いが、測れるのは数mから数十m。逆光や天候の影響を受けやすく、30km/h程度以下の低速だけで働くものが多い |
| 超音波センサー | 車の前後の角と中央(トヨタ LAND CRUISERの取扱説明書の例) | 壁などの止まっている物とのおおよその距離をつかむ |
| 後側方レーダー | リヤバンパーの裏の左右(米国向けホンダ資料の例。位置は車種で違う) | 斜め後ろの死角にいる車や、バックするときに横から近づく車をつかむ |
カメラがとらえるのは前方の人や車、道路の白線で、標識を読み取れるものもあります。その反面、光や天候の影響を大きく受けます。赤外線レーザーの照射方向を細かく変え続けて、物が何かまで見分けられるようにした技術がLiDAR(ライダー)です。
衝突被害軽減ブレーキとレーンキープアシストが前を見るのに使うのは、単眼・複眼のカメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザーなどです。どれも主にフロントガラスの上部か、フロントグリル・バンパーの裏に付いています。この2か所の部品を外したり替えたりする作業が、次に見るエーミングの要否に関わります。
国土交通省は自動運転のレベルごとに、誰が運転操作をするかと車の呼び名を決めています。
| レベル | 状態 | 運転操作をするのは | 車の呼び名 |
|---|---|---|---|
| レベル0 | 自動運転のための技術が何もない | 運転する人 | ― |
| レベル1 | アクセル・ブレーキ操作か、ハンドル操作のどちらかが部分的に自動化されている | 運転する人 | 運転支援車 |
| レベル2 | アクセル・ブレーキ操作とハンドル操作の両方が部分的に自動化されている | 運転する人 | 運転支援車 |
| レベル3 | 決められた条件を満たす場所で、システム(自動運行装置)が運転操作の全部を代わりに行う。システムが正常に働かないおそれがあるときは警報が出るので、運転する人は応じなければならない | 自動運行装置(作動が難しいときは運転する人) | 条件付自動運転車(限定領域) |
| レベル4 | 決められた条件を満たす場所で、システムが運転操作の全部を代わりに行う | 自動運行装置 | 自動運転車(限定領域) |
| レベル5 | システムが運転操作の全部を代わりに行う | 自動運行装置 | 完全自動運転車 |
前の車に付いて走る機能(ACC)か、車線からはみ出さないようにする機能(LKAS)のどちらか1つならレベル1、2つを組み合わせて車線を保ちながら前の車に付いて走るならレベル2です。国土交通省の用語集は、レベル2までの車は運転支援車で、自動運転車ではないとしています。衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシストを積んでいても、それだけで自動運転車になるわけではありません。
この呼び名は、使う人が機能を過信せず、運転操作を正しく行うように決められました。国土交通省は、自動車メーカーがテレビCMや広告、パンフレットで車を宣伝するときに使うことを想定しています。
衝突被害軽減ブレーキは国連の基準(協定規則第152号)に合うものを新車に備えることが義務になっています。対象は乗車定員10人未満の乗用車と、車両総重量3.5t以下の貨物車です。二輪車、三輪車、被牽引自動車などは対象外です。大型車にはこれより前から別の基準で義務がかかっています。義務がかかるのは新車で、すでに使われている車に後から付ける義務はありません。
| 区分 | 国産車 | 輸入車 |
|---|---|---|
| 新型車(新しく出るモデル) | 2021年11月 | 2024年7月 |
| 継続生産車(前から作り続けているモデル) | 2025年12月 | 2026年7月 |
ただし、貨物の運送に使う軽自動車(軽トラックに限らず軽バンなども含む軽貨物車)の継続生産車は2027年9月からです。2026年10月の時点で、まだ適用日が来ていないのはこの軽貨物車の継続生産車だけです。
基準が求める性能は主に次の試験で確かめます。国土交通省が2021年の改正の際に示した乗用車の例です。
| 試験 | 相手 | 試験車の速度 | 求められること |
|---|---|---|---|
| 止まっている車 | 停止した車両 | 40km/h | 衝突しない |
| 走っている車 | 20km/hで走る車両 | 60km/h | 衝突しない |
| 歩行者 | 5km/hで横切る歩行者 | 40km/h | 衝突しない |
| 自転車 | 15km/hで横切る自転車 | 38km/h | 衝突しない |
ほかに、エンジンをかけるたびにシステムが自動で待機状態になることと、緊急ブレーキの前(車両に対しては緊急ブレーキの0.8秒前)までに警報を出すことが求められます。
自転車の試験は2021年9月の改正で加わりました。この要件は、新型車が2024年7月1日、継続生産車が2026年7月1日から適用されています。ただし軽貨物車の継続生産車は2027年9月1日からで、2026年10月の時点ではまだ適用されていません。
次に義務化されるのは、ペダル踏み間違い時加速抑制装置です。
| 内容 | 対象 | 新型車 | 継続生産車 |
|---|---|---|---|
| 止まった状態からの急加速を抑える | クラッチペダルの無い乗用車(乗車定員10人未満) | 2028年9月1日(輸入車は2029年9月1日) | 発表は新型車の時期のみ |
| クリープで動いている状態からも抑える。検知する障害物に歩行者を加える | 上の乗用車と、車両総重量3.5t以下のクラッチペダルの無い貨物車 | 2030年9月 | 2032年9月 |
エーミングは決められた位置に標的(ターゲット)を置き、整備用スキャンツールを使って、カメラやレーダーが車体と進行方向に対して正しく向くように合わせる作業です。止まった状態で標的を使う方法と、テスト走行で合わせる方法があり、両方を続けて行う車もあります。
国土交通省は、カメラやレーダーが付いたバンパー、グリル、窓ガラスを外して付け直すだけでも、そのあとエーミングをしないと衝突被害軽減ブレーキやレーンキープの働きに影響するおそれがあるとしています。整備主任者になるための講習のテキストも、バンパーやフロントガラスを交換したときは、それまで不具合が出ていなくても調整するとしています。
トヨタ MIRAI(2024年11月以降)の取扱説明書にも同じことが書かれています。レーダーを脱着・交換したとき、フロントバンパーやフロントグリルを交換したときはレーダーの再調整が、フロントガラスを交換したあとは前方カメラの再調整が必要です。レーダーやフロントグリル、フロントバンパーに衝撃を受けたときは、販売店で点検を受けるよう求めています。
ホンダは STEP WGN(2026年)の取扱説明書で、ホンダ純正品以外のフロントガラスを使うとシステムが正常に作動しなくなる場合があるとしています。
ホイールアライメントのあとにエーミングが要るかは、トヨタとホンダがアメリカで整備工場向けに出した資料で扱いが分かれています。同じ米国向けでも、メーカーと発行年が異なる資料です。日本向けの車が同じ扱いとは限りません。
| メーカー | アライメントとエーミングの関係 |
|---|---|
| トヨタ(2018年の整備工場向け冊子) | ミリ波レーダーを備えた車でホイールアライメントを行う修理では、レーダーのゼロ点校正が必要。レーダーが車体と進行方向に対して正しく向いていることを確かめるため |
| ホンダ(2025年8月の作業手引き) | 整備マニュアルなどの指示が無い限り、ホイールアライメントのあとにカメラやレーダーの調整は要らない。事故でエーミングが要るときは、先に4輪アライメントを点検し、規定から外れていれば直してからエーミングする |
国土交通省の講習テキストは、車両にゆがみがあると電子制御装置整備(エーミングなど)が適切に終わらない可能性があるとして、作業の前提として四輪アライメントやボディアライメントに不具合がないことが重要としています。MIRAIの取扱説明書も、車高や傾きが変わる改造をしているときを、センサーやシステムが正しく作動しないおそれがあるときに挙げています。ホイールアライメントがずれているときも、運転支援の機能が正しく働かないことがある状況の1つとして載っています。
アライメントのあとにエーミングが要るかは、車種ごとの整備要領書で確かめます。同じ講習テキストは整備要領書の入手先として日本自動車整備振興会連合会の運営するFAINESや、メーカー、ディーラーを挙げています。
2020年4月から、自動車の整備のうち認証が要る範囲は「特定整備」に改められました。エンジンやブレーキなどを外して行う従来の「分解整備」に、「電子制御装置整備」が加わっています。電子制御装置整備は次の作業です。
2つ目と3つ目は、ハンドルやブレーキの働きに影響するおそれがあるものに限られ、その装置が保安基準の適用を受けている車が対象です(下の「対象になる車の見分け方」)。機能の調整にはカメラをつないだことを車のコンピューターに覚えさせる作業や、カメラを外さずに行う向きの調整も入ります。前を見るセンサーの付いていないガラスやバンパーの脱着は、2つ目と3つ目の電子制御装置整備に当たりません。自動運行装置の作業はこれとは別に、その働きに影響するおそれがあるかどうかで1つ目に当たるかが決まります(施行規則第3条第9号)。
アライメント調整そのものは電子制御装置整備として挙がっている作業に入っていません。施行規則の定めに当てはめると、下の見分け方で対象になる車で、アライメントのあとに衝突被害軽減ブレーキやレーンキープに使う前方のカメラやレーダーの機能を調整すれば、その調整は電子制御装置整備になります。
前に挙げた2つ目と3つ目の作業で対象になるのは、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープの装置が保安基準の適用を受けている車です。自動運行装置の作業はこの見分け方ではなく施行規則第3条第9号で判定します。同じような機能があっても、基準の適用前に作られた車は対象外のことがあります。適用の時期は用途や車両総重量で違うため、国土交通省の電子制御装置整備の対象車両のページから、メーカーごとのリストで型式を調べます。乗用車メーカー8社、大型車メーカー4社のほか、輸入車は日本自動車輸入組合のページにつながっています。
対象外の車でも、国土交通省は安全面を考えれば認証工場に任せるほうが安心としています。
経過措置は2024年3月31日で終わりました。今は、認証を受けていない工場が対象車のエーミングや、カメラ・レーダーの付いたバンパー・ガラスの脱着をすることはできません。指定工場は電子制御装置整備の認証が無いと、対象車の保安基準適合証を交付できません。
| 項目 | 電子制御装置整備だけを行う場合の要件(普通乗用車の例、自動運行装置を除く) |
|---|---|
| 作業場 | 奥行6m×間口2.5m(うち屋内3m×2.5m)。床面は平滑で、天井はエーミングに十分な高さ |
| 車両置場 | 間口3m以上×奥行5.5m以上 |
| 計器・機器 | 水準器、整備用スキャンツール(少なくとも1車種を整備できるものを1台) |
| 情報 | 整備要領書などを入手できる体制 |
| 人 | 工員2人以上。整備士(1〜3級・車体・電気装置)が全工員の4分の1以上。1級(二輪を除く)か、1級(二輪)・2級・車体・電気装置の整備士で講習を受けた人が1人以上いて、整備主任者もこの資格の人 |
自動運行装置も扱う工場は、これに加えて、自動運行装置の点検・整備に必要な技術情報を入手できることが求められます。
分解整備もあわせて行う工場は、両方の要件をすべて満たす必要があります。その場合の整備主任者は1級(二輪を除く)か、1級(二輪)・2級の整備士で講習を受けた人に限られ、車体・電気装置の整備士は選べません。
ターゲットは必要なときに手に入れられれば持っていなくても構いません。事業場どうしで共同で持つ、借りるといった形も認められています。作業場は今の事業場から離れた場所に設けることも、他の事業者と共同で使うこともできます。
ガラスの交換を請け負う業者は、認証を受けていなくても、電子制御装置整備の認証を受けた工場の構内で、その工場の管理のもとで作業するという取り決めを書面で交わせば作業できます。特定整備を行ったら、作業の内容を特定整備記録簿に書く義務があります。
2024年10月(輸入車は2025年10月)から、車検にOBD検査が加わりました。対象の車では検査用のスキャンツールで故障に当たる情報が記録されていないかを確かめます。確かめる装置には衝突被害軽減ブレーキと、かじ取り装置のうち運転を補助する機能の部分が入っています。OBD検査で不合格になれば、修理しなければ車検に通りません。
エーミングの道具と手順、作業場所で気をつけることは、【プロの現場】バンパーを外したら必須?「エーミング作業」のリアルな手順と注意点をご覧ください。自分の車や入庫した車が次の車検でOBD検査を受けるかは、OBD検査の対象車両―対象になる条件、輸入車の扱い、車検証・型式一覧・特定DTC照会アプリでの調べ方で確かめられます。
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