8月1日から、補修用の鉛バッテリーのメーカー出荷価格が上がりました。ジーエス・ユアサ バッテリーが20%以上(8月1日出荷分から)、パナソニック オートモーティブシステムズが約10%(同お届け分から)です。9月1日にはタイヤ4社が上げます。
円が急に戻ったのは、この8月1日の直前の2日間です。
7月30日から31日にかけて、ドル円は163円台から159円台まで戻りました。財務省は8月3日、米国財務省と協調して円買い介入を実施したと発表しています。仕入れが楽になる、と読んだ方もいると思います。
値上げを公表した9社の発表と、日銀と財務省が出している統計を並べると、戻った円が仕入れ値まで届くのかが見えます。本記事の数値は2026年8月3日時点のものです。
2026年に実施する改定を公表したのは、タイヤ5社とバッテリー4社の合わせて9社です。公表は10件あります(横浜ゴムが2回)。公表日は2025年12月から2026年6月までに散らばっています。
| 社名 | 公表日 | 実施 | 改定率 | 対象 |
|---|---|---|---|---|
| ジーエス・ユアサ バッテリー | 2026年6月19日 | 8月1日出荷分 | 20%以上 | 補修用鉛蓄電池の全機種(自動車用・オートバイ用・サイクルサービス用) |
| パナソニック オートモーティブシステムズ | 2026年6月23日 | 8月1日お届け分 | 約+10% | 補修用鉛蓄電池の全製品 |
| 古河電池 | 2026年5月15日 | 7月1日出荷分 | 10%以上 | 自動車用・二輪車用鉛蓄電池 |
| エナジーウィズ | 2026年4月28日 | 6月出荷分から順次 | 10%〜 | 自動車用・産業用・産業車両用の鉛蓄電池、電源機器 |
| ブリヂストン | 2026年6月15日 | 9月1日 | 平均5% | 国内市販用タイヤ(夏/冬)、チューブ、フラップ |
| 住友ゴム工業 | 2026年6月29日 | 9月1日 | 平均6% | ダンロップ・ファルケンの国内市販用タイヤ、チューブ、フラップ |
| 横浜ゴム | 2026年4月2日 | 6月1日 | 平均5% | 乗用車用・バン用(夏) |
| 横浜ゴム | 2026年6月19日 | 9月1日 | 平均5% | 乗用車・バン(冬・オールシーズン)、小型トラック・バス、トラック・バス、建設・産業車両、農業機械、リトレッド、チューブ、フラップ |
| 日本ミシュランタイヤ | 2026年4月15日 | 夏6月1日/冬9月1日 | 3〜5% | ミシュラン・BFグッドリッチの乗用車・ライトトラック、二輪車、トラック・バス、鉱山建設車両、産業車両、農業機械、チューブ、フラップ |
| コンチネンタルタイヤ・ジャパン | 2025年12月17日 | 夏・オールシーズン3月1日/冬7月1日 | 平均5% | 国内市販用タイヤ |
いずれもメーカーが出荷する価格の改定です。パナソニック オートモーティブシステムズは「※店舗での金額はあくまで小売店が決定されます」と付記しています。
改定率の示し方は、タイヤとバッテリーで違います。タイヤ5社はいずれも、改定率が商品によって違うと断っています(ブリヂストンは「※商品により改定率が異なります」)。横浜ゴムとコンチネンタルタイヤ・ジャパンは、商品に加えてサイズによっても違うとしています。日本ミシュランタイヤの3〜5%は各商品グループの平均です。**バッテリー4社にこの断りはありません。**示されているのは下限(20%以上・10%以上・10%〜)か概数(約+10%)で、ジーエス・ユアサ バッテリーは自動車用・オートバイ用・サイクルサービス用の3区分とも20%以上、区分ごとの差を出していません。
トーヨータイヤはこの9社に入れていません。同社は2025年に夏タイヤを6月1日、冬タイヤを9月1日から最大10%上げていますが、2026年に実施する改定は公表していないためです。この9社は、各社の公式リリースで確かめられる範囲です。ピレリジャパンについては、業界紙が2026年4月1日からの改定を伝えていますが公式リリースにあたれていません。日本グッドイヤーは販売店の告知しか見つけられませんでした。どちらも9社に入れていません。
二輪の車両を扱っている場合も対象に入ります。ただし原文が二輪を明記しているのは3社で、ジーエス・ユアサ バッテリーのオートバイ用、古河電池の二輪車用、日本ミシュランタイヤの二輪車用タイヤです。ブリヂストンと住友ゴム工業の対象は「国内市販用タイヤ」とだけあり、二輪が入るかどうかは対象の書き方からは分かりません。
各社のリリースには、なぜ上げるのかが書いてあります。9社ぶんを並べると、為替に触れているのは1社だけです。
エナジーウィズ(2026年4月28日)。
近年、原材料価格の高止まりに加え、世界的なエネルギーコストの上昇、物流費の増加、為替変動の影響などにより、事業を取り巻くコスト環境は依然として厳しい状況が続いております。
残る8社が挙げているのは、原材料価格・エネルギー費・物流費・人件費の組み合わせで、そこに社ごとの事情が足されています。
パナソニック オートモーティブシステムズ(6月23日)は「昨今の中東情勢の不安定化に伴い、樹脂および錫(すず)の価格が高騰しており、今後の見通しも不透明な状況となっております」。この8社で中東を名指ししているのはここだけですが、さきほどのエナジーウィズも「中東地域を含む地政学的リスクの高まり」を挙げています。日本ミシュランタイヤ(4月15日)は地域を書かず、「地政学的リスクなどを背景とした燃料費・輸送コストの上昇」としています。ジーエス・ユアサ バッテリー(6月19日)は「世界情勢の不透明化により原材料の調達コスト高止まりも見込まれています」。住友ゴム工業(6月29日)は「タイヤの原材料価格の高騰、人件費や物流費、エネルギー費などのコスト上昇」。どこにも為替は出てきません。
書かれる時期と書かれない時期があります。同じエナジーウィズが2022年12月23日に翌年4月からの改定を告げたときは、こうでした。
鉛を中心とした原材料調達コストの継続的な上昇に加えて、ウクライナ情勢に端を発した国際的な燃料供給不足や、更なる円安の進行等により、電気・ガス、樹脂材、セパレータ、鋼板など、広範にわたりコストが継続的に上昇しております。
理由の書き換えは、同じ社の2か月のあいだにも起きています。横浜ゴムの4月2日のリリースは「物流費や人件費、エネルギー費等のコスト」だけを挙げていましたが、6月19日のリリースには「タイヤ原材料価格の高騰に加え」が付きました。
理由の欄に為替がないことは、為替が効いていないことを意味しません。ここに並ぶのは、その社が値上げの説明として選んだ項目です。為替がどこまで乗っているかは、次に見る輸入価格の統計に出ています。
日銀が毎営業日まとめている東京市場の記録では、7月29日午前9時のドル円は163円86〜88銭でした。31日は午前9時が160円17〜19銭、この日の東京市場は159円39銭から160円90銭のあいだで動いています。東京の取引時間の外でついた値は、この記録には入っていません。
介入について、財務大臣は7月31日の記者会見で問われて答えていません。記者が尋ねているのは、朝の囲み取材でも聞いた前夜からの動きです。
問)朝の囲みでもお伺いしたんですけれども、外国為替市場で急激に円高が進む動きがありました。介入があったのかどうか改めてお聞かせください。
答)お尋ねの点につきましてはお答えは差し控えさせていただきます。
認められたのは、その3日後です。8月3日の財務大臣談話は「米国東部時間7月31日(金)、日本国財務省は、米国財務省と協調して円買い介入を実施した」と書いています。米国東部時間の31日は、日本時間の7月31日の昼過ぎから8月1日の昼過ぎにあたります。
談話が触れているのは31日の分だけで、30日夜の急落について当局は今も何も言っていません。
その30日に、日銀の記録で1つだけ普段と違う数字があります。紙面が「前営業日出来高」として載せているスポットの売買額です。7月28日は22億5,400万ドル、29日は25億500万ドル。30日は346億8,500万ドルでした。日銀はこの数字に、理由も、集計した時間帯の定義も書いていません。
金額もまだ出ていません。財務省は介入した実績額の総額を1か月ごとに、実施日・介入額・売買通貨の内訳を四半期ごとに公表しています。直近に出たのは6月29日から7月29日までの分で、この期間は0円。その前の5月28日から6月26日も0円ですが、さらにその前、4月28日から5月27日の期には11兆7,349億円が入っています。8月末に出るのは7月30日から8月27日までの合計1本で、この月次の数字では30日の分と31日の分は分かれません。
談話は、この介入が2025年9月11日の日米財務大臣共同声明に基づくものだとしています。その声明で両者は、介入を「過度な変動を伴う、又は無秩序な減価・増価への対応として等しく適切」だという前提のもと、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きに対処するためのものに留保されるべき」ものと位置づけていました。談話の「最近見られた円の過度な変動や無秩序な動きに対処したもの」という書き方は、この文言をなぞっています。ある水準を守ると約束したものではありません。
輸入品の値段は、2通りに数えられます。ひとつは日本の会社が実際に払った円の額。もうひとつは、売り手が値札に付けている通貨のままの額です。日銀の企業物価指数は毎月その両方を出していて、前者を円ベース、後者を契約通貨ベースと呼びます。
2026年6月の速報(7月10日公表)では、輸入全体の前年比が円ベースで29.7%、契約通貨ベースで17.8%。自動車と二輪車、その部品が入る「輸送用機器」は、円ベースの13.8%に対して契約通貨ベースが5.6%でした。

ゴムや樹脂の原料を含む「化学製品」は円ベース9.6%に対して契約通貨ベース2.0%、「金属・同製品」は40.7%に対して27.1%。どの類別も、売り手の通貨のままで見ても上がっています。
2つの差を作っているのは為替です。ただし引き算した値をそのまま為替の寄与とは読めません。どちらも指数で、掛け算で重なるものだからです。契約通貨ベースにはドル以外の通貨も混ざるので、ドル円の動きそのものでもありません。
方向としてはこう言えます。外貨建てで契約している分については、円が戻った分が次の改定で円で払う額を押し下げるほうへ働きます。ただし売り手の通貨で見た値段自体が上がっているので、押し下げた分がそのまま残るとは限りません。
国産はまた別の動きです。同じ統計の国内企業物価指数で、輸送用機器は前年比2.1%、6月は前月比マイナス0.1%でした。
これは日本全体の輸入価格と国内価格で、個々の部品の卸値ではありません。
輸入代金がどの通貨で決まっているかで、円が6円動いたときに請求額が動くかどうかが変わります。円建てで契約していれば、ドル円が動いても請求額は変わりません。
財務省が7月30日に公表した令和8年上半期の集計では、日本への輸入のうち米ドル建てが67.5%、円建てが24.7%、ユーロ建てが3.3%でした。ただし相手先で大きく違います。
| 輸入元 | 米ドル | 円 | ユーロ | 3通貨以外で最大 |
|---|---|---|---|---|
| 世界(全体) | 67.5% | 24.7% | 3.3% | 元 2.3% |
| アメリカ | 79.9% | 19.6% | 0.3% | スイス・フラン 0.1% |
| 中国 | 70.3% | 19.7% | 0.5% | 元 9.3% |
| 台湾 | 77.1% | 20.5% | 0.3% | 台湾ドル 2.0% |
| タイ | 53.8% | 27.1% | 0.4% | タイ・バーツ 18.4% |
| 韓国 | 53.0% | 42.8% | 0.4% | 韓国ウォン 3.7% |
| ドイツ | 11.9% | 53.3% | 32.2% | スイス・フラン 2.4% |
いずれも金額の比率です。貿易統計に計上されたデータのうち、取引通貨が分かるものだけを集計しています。国別の数字は2021年の貿易相手国の上位10か国が対象で、その国から来るすべての品目をまとめた比率です。自動車部品に絞った集計ではありません。
ドイツからの輸入は半分以上が円建て、中国と台湾からの輸入は7割から8割がドル建てです。
自分の店の仕入れがどちらなのかは、統計ではなく取引条件のほうに書いてあります。仕入先との基本契約か注文請書の価格の通貨、それと請求書の通貨欄です。商社や部品商を経由していれば請求書は多くの場合円で来ますが、その手前でどの通貨だったかは仕入先の取引条件に残っています。
会社は事業計画を立てるとき、1ドル何円で回すかを先に決めます。日銀の短観はこれを集計していて、2026年6月調査(7月1日公表、回答期間は5月28日から6月30日、回答率99.4%)では、輸出をしている大企業の製造業が2026年度の前提に置いていたのは1ドル151円49銭でした。全規模・全産業では152円57銭です。
円が戻ったあとの7月31日、東京市場は159円39銭から160円90銭で動いていました。この前提より、まだ円が安いところにあります。151円49銭を割り込む水準が続くなら、この節の話は逆を向きます。
同じ調査には、仕入れと売値の実感も出ています。上がったと答えた割合から、下がったと答えた割合を引いた値です(日銀は仕入価格判断、販売価格判断と呼びます)。2026年6月調査では、中小企業の非製造業が仕入れ68・売値38、中小企業の製造業が仕入れ76・売値40でした。大企業の製造業は仕入れ62・売値40です。
次の調査で前提が置き直されれば、7月末の為替がそこに映ります。
この9社の実施日は、3月1日・6月1日・7月1日・8月1日・9月1日と、6月出荷分から順次の1社です。4月1日と10月1日はありません(分母の外では、ピレリジャパンが4月1日)。タイヤは夏用と冬用で実施日が分かれていて、コンチネンタルタイヤ・ジャパンと日本ミシュランタイヤは同じ公表のなかで2つの日を置いています。暦の半期には寄っていません。

4月と10月に寄るのは、別のサイクルです。中小企業庁は、価格交渉を促す月間を毎年3月と9月に置いていて、理由をこう書いています。
価格の改定は、半期に一度、4月と10月に行う企業が比較的多いことから、中小企業庁では、その前月である3月と9月を、「価格交渉促進月間」と設定し、価格交渉・価格転嫁の促進のため、広報や講習会、フォローアップのための調査を行っています。
これは受注側の中小企業が発注元と価格を話し合う場面の話で、タイヤ・バッテリーメーカーの出荷価格の改定日ではありません。工場が客先や取引先と工賃・部品代を改めるときのサイクルとしては、こちらのほうが近い。改まるのが4月と10月で、話を持ちかけるのはその前月の3月と9月です。
その交渉で上がったコストをどれだけ売値に乗せられたか(中小企業庁は価格転嫁率と呼びます)は、2026年3月時点で54.2%でした。内訳は原材料費が55.7%、労務費が50.0%、エネルギーコストが48.9%。30万社に配って69,625社が答えた調査で、「価格交渉が行われた」割合は90.7%です。
7月末の円が価格の話に載る場所は2つあります。9社の次の改定と、9月に持ちかけて10月に改める客先との交渉です。前者に9月1日の分は入りません。対象も率も6月までに公表済みで、公表されたこの内容が円で変わることはありません。
部品が届くかどうかの話——中東情勢がゴム・樹脂系の補修部品の納期と海上輸送費をどう押し上げるか——はホルムズ海峡封鎖が整備現場に届く日 — 補助金48.1円、ゴム部品、UAE輸出停止の連鎖をご覧ください。
介入した金額は8月末に期間の合計が、実施日ごとの内訳は四半期の公表で出ます。整備士オンラインは追っていきます。
一次情報