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    第5回:未来のモビリティはどこへ向かう? ― 「所有」から「接続」へ、街全体が動く時代

    整備士オンライン編集部
    2025年11月23日 22:22
    約17分
    387回表示

    目次

    第5回:未来のモビリティはどこへ向かう? ― 「所有」から「接続」へ、街全体が動く時代
    ■ 導入:モビリティショー2025で見た「未来の全体像」
    ■ Part1:自動運転は「車の未来」ではなく「社会インフラ」の未来だった
    ● 「レベル4」は物流・バスから日常へ
    ● 本命は「物流クライシス」の救世主
    ■ Part2:都市交通は“空・陸・データ”の三層構造へ
    ● 陸の移動:銀座・お台場で始まった「未来の日常」
    ● 空の移動:eVTOLは「夢」から「産業」へ
    ● デジタルツイン:街を“予測”して動かす
    ■ Part3:燃料・インフラ・街づくりの「三位一体」
    ■ Part4:「乗り物を買う時代」から「移動を選ぶ時代」へ
    ■ Part5:結論 ― 日本は「選択肢の実験場」になる
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    第5回:未来のモビリティはどこへ向かう? ― 「所有」から「接続」へ、街全体が動く時代

    ■ 導入:モビリティショー2025で見た「未来の全体像」

    モビリティショー2025の会場を一通り回り終えて、ふと気づいたことがある。かつてモーターショーの主役だった「新型車の馬力」や「流麗なデザイン」が、もはや脇役に過ぎないという事実だ。

    キャンピングカー、物流、燃料、新車戦略……これまで全4回にわたり個別のテーマを追ってきたが、この会場でそれらはすべて一つの線でつながった。最後に強く感じたのは、「モビリティの未来は、個々の技術(ハードウェア)ではなく“つながり方(インターフェース)”で決まる」ということだ。

    会場のあちこちで語られていた共通言語は、以下の4つだ。

    • Mobility DX(デジタルトランスフォーメーション)
    • RoAD to the L4(レベル4自動運転の社会実装)
    • eVTOL(空飛ぶクルマ)の商用化フェーズ
    • Woven City(実証実験都市)の始動

    どれも単体ではまだ「新しい乗り物」や「技術」に過ぎない。しかし、これらがデータでつながった瞬間、モビリティは単なる「移動手段」を超え、都市のOS(基本ソフト)へと昇華していた。

    ■ Part1:自動運転は「車の未来」ではなく「社会インフラ」の未来だった

    かつて「夢の技術」として語られた自動運転は、今回、極めて現実的な「社会インフラ」としての顔を見せていた。派手なコンセプトカーよりも、実用・商用領域での進化が著しい。

    ● 「レベル4」は物流・バスから日常へ

    政府主導のプロジェクト「RoAD to the L4」が掲げた『2025年度を目途に50か所程度で無人自動運転サービスを実現』という目標は、着実に現実のものとなりつつある。
    ホンダ、日産、トヨタなどのブースでは、高速道路における「レベル3(条件付自動運転)」の実装普及に加え、限定エリアでの「レベル4」を見据えた車両制御技術が標準化しつつあることが示された。自動運転はもはや「高級車のオプション」ではなく、「安全のための標準装備」だ。

    ● 本命は「物流クライシス」の救世主

    物流エリアで際立っていたのは、「2024年問題(ドライバー不足)」への明確な回答だ。
    トヨタ・日野・いすゞなどが連携して進める「大型トラックの自動隊列走行」や、高速道路区間の無人化構想は、単なる技術展示ではなく、日本の物流網を維持するための“生命線”として提示されていた。
    ラストワンマイルを担う自動配送ロボットも、法改正を経て公道を走る姿が当たり前になりつつあり、ここでは「車」というより「自律移動するインフラ」としての側面が強い。

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    ■ Part2:都市交通は“空・陸・データ”の三層構造へ

    次世代モビリティは、もはや平面(地上)だけでは語れない。空、陸、そしてサイバー空間(データ)が重なり合う「三層構造」へと進化している。

    ● 陸の移動:銀座・お台場で始まった「未来の日常」

    読者の中には、銀座や湾岸エリアで、見慣れないセンサーを積んだ車両を見かけた人もいるかもしれない。実は、自動運転タクシーの競争は、すでにショーの会場を飛び出し、私たちの日常に入り込んでいる。

    • Waymo(Google系)× GO: 2025年春から、銀座を含む東京都心(港区、渋谷区、中央区など)で、配車アプリ「GO」と連携した走行テストを開始。世界屈指の実績を持つAIドライバーが、日本の複雑な交通環境を学習し始めている。
    • Honda × GM Cruise: お台場エリアを拠点に、2026年初頭の無人タクシーサービス開始に向けた最終調整に入っている。特定のルートではなく「都心全域」をカバーしようとしている点が革命的だ。
    • MONET Technologies: 豊洲・有明エリアでアプリ配車による自動運転サービスを実証中。

    これらが示唆するのは、都市部は将来的に「マイカー禁止エリア」になり、MaaS(自動運転タクシーやシェアモビリティ)が主役になる未来だ。

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    ● 空の移動:eVTOLは「夢」から「産業」へ

    一方、空のエリア(Advanced Air Mobility)は最大の熱気を帯びていた。
    特に注目すべきはHondaのeVTOLだ。2025年末のフルスケール試作機完成、そして2026年の飛行試験開始をターゲットに据えている。他社がバッテリーEV(BEV)中心であるのに対し、ガスタービンハイブリッドによる「都市間移動(400kmレンジ)」という独自の勝ち筋を明確にし、空港~都市、都市~地方を結ぶ新たな公共交通としての地位を確立し始めている。

    ● デジタルツイン:街を“予測”して動かす

    これら陸と空の動きを統括するのがデータだ。トヨタの「Woven City」(2025年秋 第1期オープン)では、街全体をデジタル空間に再現(デジタルツイン)し、渋滞予知、道路工事との連携、救急車両への優先路確保などをリアルタイムで行う実験が始まる。「街全体で最適化する」アプローチこそが、次世代の都市交通の正体だ。

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    ■ Part3:燃料・インフラ・街づくりの「三位一体」

    第3回の燃料編で触れた「マルチパスウェイ(全方位戦略)」は、街づくりレベルで実装されていた。

    • EV×電力網(V2G): 停車中のEVは「走る蓄電池」として、地域の電力需給を調整するグリッドの一部となる。
    • 水素×地域特性: Woven Cityでも実証されるように、持ち運び可能な水素カートリッジや、地域の再エネ由来水素(例:北海道の風力水素)が、モビリティと家庭のエネルギーをシームレスにつなぐ。

    車はもはや単独で走るものではなく、エネルギーネットワークの末端デバイスとして機能し始めている。

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    ■ Part4:「乗り物を買う時代」から「移動を選ぶ時代」へ

    ショー全体を貫いていたのは、「所有(Ownership)」から「利用(Usership)」への不可逆的なシフトだ。

    ユーザー体験(UX)の展示は、「どんな車に乗るか」ではなく「どう移動するか」に焦点が当てられていた。

    • 日常の通勤はサブスクリプションの小型EV
    • 週末のレジャーはキャンピングカーのシェア
    • 急ぎの出張はeVTOL
    • ちょっとした買い物は自動配送ロボットに任せる

    これらを一つのアプリ(MaaSプラットフォーム)で管理し、決済まで完結させる。「車庫に車がある」ことよりも、「必要な時に最適な足が手に入る」ことの方が、よりリッチな生活であるという価値観の転換が提案されている。

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    ■ Part5:結論 ― 日本は「選択肢の実験場」になる

    未来のモビリティに、たった一つの正解はない。
    今回のショーで見えたのは、「多様性(ダイバーシティ)」こそが最強のインフラであるという結論だ。

    • EV、水素、ハイブリッドが共存するエネルギーの多様性
    • 自動運転バス、eVTOL、シェアサイクルが混ざり合う移動手段の多様性
    • 都市部と過疎地で異なる解決策の実装

    日本という国は、複雑な地形、四季、過密な都市、そして少子高齢化という「課題先進国」であるがゆえに、世界で最も多様なモビリティが共存する「実験場」になり得る。

    銀座の交差点をAIが走り、空にはeVTOLが飛ぶ準備をする。「どの技術が覇権を握るか」を競うフェーズは終わり、「どの組み合わせで街を幸せにするか」を競う時代が、2025年、ここから本格的に始まったのだ。

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