首都高速道路株式会社は2026年7月31日、10月1日午前0時から通行料金を改定すると発表しました。1kmあたりの単価を、軽・二輪から特大車まで5つの車種区分すべてで1割上げます。国土交通大臣は同じ日、道路整備特別措置法第3条に基づく事業許可を出しています。
ただし、誰の料金も1割増しになるわけではありません。首都高の料金は1kmあたりの単価だけで決まっておらず、1回の利用ごとにかかる150円の固定額と、下限料金・上限料金がその上に乗っています。今回動くのは単価だけです。この組み合わせが、同じ「1割の引き上げ」を距離帯ごとに違う上げ幅に変えます。
上げ幅が距離でどう変わるか、支払い方法で何が違うか、割引はいつまで続くのか。首都高の説明資料41ページと国土交通省の許可資料から整理します。
ETC車の料金は次の式で決まります。首都高が特設サイトの質問集で示した計算式です。
(「料金距離」×「車種区分ごとの1kmあたりの料金」+「150円」)× 消費税率
150円は首都高を1回使うごとにかかる固定額で、端数は四捨五入して10円単位にします。今回の改定は、この式のうち「車種区分ごとの1kmあたりの料金」だけを1割上げるものです。
| 車種区分 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 軽・二輪 | 23.616円/km | 25.978円/km |
| 普通車 | 29.52円/km | 32.472円/km |
| 中型車 | 35.424円/km | 38.966円/km |
| 大型車 | 48.708円/km | 53.579円/km |
| 特大車 | 81.18円/km | 89.298円/km |
車種区分そのものは変わりません。5区分のままです。
単価に連動して、料金の下限と上限も次のように変わります。中型車以上の括弧内は、後述する特別措置の期間中に適用される額です。
| 車種区分 | 改定前 | 改定後 | 2026年10月〜2027年6月 |
|---|---|---|---|
| 軽・二輪 | 280〜1,590円 | 280〜1,740円 | — |
| 普通車 | 300〜1,950円 | 300〜2,130円 | — |
| 中型車 | 330〜2,310円 | 330〜2,520円 | 330〜2,310円 |
| 大型車 | 400〜3,110円 | 400〜3,410円 | 400〜3,110円 |
| 特大車 | 550〜5,080円 | 550〜5,570円 | 550〜5,080円 |
下限料金は据え置きです。普通車なら300円のまま変わりません。据え置く理由は説明資料にあり、「短距離利用車増加による渋滞を抑制するために設定しており、現行の額を維持します」と書かれています。上限に達する距離も55.0kmのままで、それ以上走っても55kmぶんの額です。ただし上限そのものは単価に連動するので、普通車は1,950円から2,130円になります。
新旧の境目は日付ではなく通信で決まります。2026年10月1日午前0時00分以降に首都高の最初のETCアンテナと通信した走行から改定後の料金、9月30日午後11時59分以前に通過した走行は改定前の料金です。日をまたぐ走行は入った時刻で決まります。
単価だけが上がり、150円の固定額は据え置かれます。すると料金全体に占める固定額の比率は短距離ほど大きいので、短距離ほど改定率は小さくなります。首都高が示した普通車・ETCの実額がその通りに並びます。
| 区間 | 料金距離 | 改定前 | 改定後 | 差 | 改定率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 川崎浮島JCT〜空港中央 | 4.2km | 300円 | 320円 | +20円 | +6.7% |
| 京葉道接続〜錦糸町 | 7.9km | 420円 | 450円 | +30円 | +7.1% |
| 中央道接続〜箱崎 | 18.8km | 780円 | 840円 | +60円 | +7.7% |
| 川口JCT〜葛西 | 33.8km | 1,260円 | 1,370円 | +110円 | +8.7% |
| 三ツ沢接続〜三郷JCT | 56.6km | 1,950円 | 2,130円 | +180円 | +9.2% |
全車の平均改定率は8.1%です。算出の元は2024年度の利用実績データ(ETC車)です。
自分がどのあたりに乗るかは、利用の分布からも見当がつきます。首都高が同じ資料に載せた2024年11月の距離帯別利用台数は、6〜12kmが236千台/日で最も多く、12〜18kmが186千台/日、18〜24kmが175千台/日と続きます。全車の合計は約1,060千台/日で、24km未満が3分の2を占めます。普通車の平均移動距離は18〜24kmの帯にあり、この水準の料金は810円から880円へ70円上がります。
上限の+180円が付くのは55km以上の利用です。距離帯別の台数では48km以上が3帯あわせて44千台/日で、全体の4%ほどにとどまります。多くの利用者に効くのは、首都高が例に挙げた+20円から+70円のほうです。
ETCを使わない場合、料金は距離で決まりません。特設サイトの質問集は「現金車の基本料金は、一部区間を除いてETC車の上限料金となります」と答えています。クレジットカードで払う場合も現金と同じ扱いです。説明資料の注記は「非ETC車は区間最大料金(普通車:2,130円)を適用します。(放射線の下り方向利用等を除く)」となっています。
改定前の上限は1,950円、改定後は2,130円です。4.2kmだけ乗るとき、ETCなら320円、現金なら2,130円で、開きは1,810円。いまの1,650円から180円広がります。
現金・クレジットカードで払うと、首都高に入って最初に通る料金所で車種区分に応じた額を払い、そのまま全線を走れます。ただしETC専用の入口は通れません。専用化の工事は進行中で、資料には料金所ブースの撤去やテレビインターホンの設置が並んでいます。通れる入口は減っていきます。
会社の代車や積載車をETC非搭載のまま運用している場合、10月以降は1回2,130円が既定値になります。
中型車・大型車・特大車は、10月1日から2027年6月30日までの9か月間、改定前の1kmあたり単価が続きます。上の表の括弧内がその額です。この扱いの正式な名称は「道路運送事業(中型車以上)における価格転嫁に向けた環境整備に伴う当面の特別措置」といいます。
据え置きの理由は、質問集に次のように書かれています。
今回の料金改定に際して、2025年12月の意見募集時において、国が貨物自動車運送事業法の改正等を実施し、顧客への価格転嫁に向けた環境整備を進めることとの関係について、意見もいただいたところです。
そのうえで「顧客への価格転嫁の環境整備がより進むと想定される時期(2027年6月末)まで料金を据え置く」としています。運賃に転嫁できる制度が整うまで待つ、という組み立てです。
据え置きは無料ではありません。財源は割引から出ます。「普通車以下のお客さまとの公平性を確保する観点に加え、この据え置きを実施するための財源を確保するため」という理由で、中型車以上の大口・多頻度割引の割引率が2030年7月から2031年3月末までの9か月間、縮小されます。据え置いた9か月ぶんを、4年後の9か月で回収する形です。
中型車以上の利用者にとって、支払額が動くのは3つの時点です。2027年7月1日に単価が改定後へ切り替わり、同じ2027年7月に都心流入割引の割引後の額も変わります。2030年7月に大口・多頻度割引の拡充が25%へ縮み、2031年4月には全車種そろって12%に戻ります。
大口・多頻度割引の割引率拡充は2026年9月末で期限を迎えるはずでした。これが2031年3月末まで延びます。都心流入割引と都心流入・湾岸線誘導割引も同じ期日までの延長です。深夜割引と環境ロードプライシングは現行の割引がそのまま続きます。
割引率の中身は月間利用額の帯ごとに決まっています。【】内は、中央環状線の内側を通過しないETC車に限った拡充分です。
| 月間利用額(車両単位) | 現行 | 軽二輪・普通車 2026.10〜2031.3末 | 中型車以上 2026.10〜2030.6末 | 中型車以上 2030.7〜2031.3末 | 2031.4〜 |
|---|---|---|---|---|---|
| 5,000円以下の部分 | 0% | 0% | 0% | 0% | 0% |
| 5,000円超〜10,000円以下 | 10% | 10% | 10% | 5% | 2% |
| 10,000円超〜30,000円以下 | 20%【+10%】 | 20%【+10%】 | 20%【+10%】 | 10%【+5%】 | 5% |
| 30,000円超〜50,000円以下 | 25%【+10%】 | 25%【+10%】 | 25%【+10%】 | 15%【+5%】 | 8% |
| 50,000円を超える部分 | 25%【+10%】 | 25%【+10%】 | 25%【+10%】 | 15%【+5%】 | 12% |
これに契約者単位の大口割引が加わります。月間100万円を超え、かつ自動車1台あたりの平均利用額が5千円を超える契約は10%で、中型車以上は2030年7月から5%、2031年4月以降は0%です。合計の最大割引率は、現在の45%が2031年3月末まで維持され、中型車以上だけ2030年7月からの9か月が25%になり、2031年4月にすべての車種が12%へ戻ります。
最大割引率は2012年1月に30%、2016年4月に35%、2022年4月に45%と段階的に上がってきました。拡充前の水準が12%で、2031年4月に戻る先もそこです。今回の継続は期限を5年延ばす措置であって、12%を超える部分に期限が付いている構造は変わりません。
都心流入割引は、対象の出入口と都心環状線の出入口の間の料金距離が一定を超えると、表の額まで料金を頭打ちにする仕組みです。割引そのものは続きますが、単価が上がるぶん、頭打ちの額が上がります。
| 対象出入口 | 料金距離 | 軽・二輪 | 普通車 |
|---|---|---|---|
| 湾岸線(川崎浮島〜大井) | 17.5km | 670円 | 790円 |
| 羽田線 | 13.7km | 560円 | 650円 |
| 渋谷線 | 13.7km | 560円 | 650円 |
| 新宿線 | 14.4km | 580円 | 680円 |
| 池袋線 | 22.4km | 810円 | 970円 |
| 川口線 | 24.1km | 850円 | 1,030円 |
| 三郷線 | 22.0km | 790円 | 950円 |
| 小松川線 | 13.3km | 550円 | 640円 |
| 湾岸線(葛西〜高谷) | 21.5km | 780円 | 930円 |
| 大師 | 15.2km | 600円 | 710円 |
中型車以上にも同じ表があり、たとえば川口線は中型車1,200円、大型車1,590円、特大車2,530円です。ただし2027年6月までは特別措置期間の額(同じく1,100円・1,460円・2,320円)が適用され、7月に切り替わります。
都心流入・湾岸線誘導割引は、料金距離が24.1kmを超え、かつ湾岸線の東扇島〜川崎浮島JCTを通る場合が対象です。改定後の割引後の額は軽・二輪850円、普通車1,030円になります。
首都圏では2016年度以降、圏央道・外環経由と首都高経由を選べる区間について、首都高経由のほうが安ければ圏央道・外環経由の料金をそこまで引き下げています。同じ発着なら経路を選ばず同じ額になる、という仕組みです。首都高が上がれば、その基準額も上がります。
普通車・ETC車が平日昼間に八王子〜つくば中央を走る場合、首都高経由(103.9km)の3,710円が基準額になっていました。改定後は3,840円です。圏央道経由(125.9km)の対距離料金3,870円と、圏央道・外環経由(146.4km)の4,580円はどちらも変わりませんが、支払う額は3,710円から3,840円へ130円上がります。首都高に1メートルも入らない走り方をしても、です。
逆向きの例もあります。厚木〜久喜は首都高経由(99.5km)が3,720円で、圏央道経由(98.9km)の3,330円より高くなります。この場合は圏央道経由が据え置かれ、首都高経由だけが3,850円へ上がります。
外環道迂回利用割引にも影響します。常磐道と都心環状線の間を、外環道を1JCT間だけ迂回して走る場合、直行経路と同額になるよう割り引く仕組みですが、その直行経路(6号三郷線)の首都高分が880円から950円へ70円上がるため、迂回した場合の合計も950円になります。
東日本高速道路は同じ7月31日、この波及を告知しました。「軽自動車等・普通車における、起終点を基本とした継ぎ目のない料金、外環道迂回利用割引及び千葉外環迂回利用割引については、首都高速道路の通行料金を基に適用される料金の額または割引額が変更となる区間があります」としています。
改定後の料金・ルート検索は特設サイトにあり、10月以降の額をいま調べられます。
一方、東日本高速道路のドラぷらは同日の告知で「ドラぷらの料金検索結果は、令和8年10月1日からの首都高の料金改定を踏まえた高速道路料金を表示しておりません。料金検索は9月下旬頃から可能となります」としています。首都高をまたぐ長距離の見積もりを8月・9月に出すなら、この時期のドラぷらの結果は改定前の額だという前提で扱うことになります。
7月31日に道路整備特別措置法第3条の事業許可を受けたのは首都高速道路株式会社だけです。国土交通省の発表も首都高1社を挙げています。
東日本・中日本・西日本の各高速道路会社、阪神高速道路、本州四国連絡高速道路は、7月31日時点で自社の料金改定を発表していません。東日本高速道路が同日に出したのは、上に引いた首都高の改定に伴う連続利用の告知であって、自社料金の改定ではありません。
同じ資料の後半に、ETC車(軽・二輪、普通車)を対象とする事前申し込み制の定額乗り放題サービスの検討が載っています。対象は湾岸線全域と晴海線・台場線・横浜地区で、対象日は土曜・日曜・祝日(除外日を設定予定)。エリアまでの往路1回とエリア内の乗り降り自由、復路1回を定額にする組み立てです。実施時期と価格は「決定次第」とあり、この資料には出ていません。
改定後の料金・ルート検索はすでに公開されています。周遊パスの時期と価格、中型車以上が切り替わる2027年7月に向けた案内は、これから出てきます。整備士オンラインは追っていきます。