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令和8年熊本地震のあと、車のローンを抱えている人の間で同じ話が繰り返し流れています。「地震で車が潰れたら、ローン会社から残りと残価を一括で払えと言われる」。
残クレなら、毎月の支払いとは別に数十万円から数百万円の残価が据え置かれています。家も車もやられた状態で、残りの支払いと据え置き分の両方を一度に求められる。契約書だけを読めば、確かにそうなります。
ただ、今回の地震では2026年7月28日から、破産せずにローンを減らせる制度が使えます。自動車ローンもその対象です。
自然災害で収入や家を失い、ローンを返せなくなった個人が、破産の手続きを取らずに借金の免除や減額を申し出られる仕組みがあります。「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」といいます。東日本大震災をきっかけに作られ、災害救助法が適用された自然災害のたびに対象が追加されてきました。金融機関が自発的に守ると申し合わせたもので、法律ではありません。
令和8年熊本地震は、災害救助法が適用された2026年7月28日からこの対象に入っています。
熊本に住んでいるかどうかでは決まりません。制度の案内は「本ガイドラインは、災害救助法適用市町村以外にお住まいの方も対象になります」と書いています。県外に住んでいて熊本の勤め先を失った人も、住んでいる場所を理由に外されることはありません。
対象になるローンは住宅ローンだけではありません。Q&Aは「債務整理の対象となる借入れには、自動車のローン、住宅のリフォームローン等も含まれます」としています。残クレも自動車ローンなので、この中に入ります。
使えると3つの助けがあります。弁護士や税理士の支援を無料で受けられます。義援金などに加えて財産の一部を手元に残せます。そして債務整理をしたことが個人信用情報に登録されません。3つ目は、次に車を買うときのローンが組めるかどうかに直結します。
ただし同じQ&Aは、弁済計画を履行できなければ「信用情報登録機関への報告・登録を行うこととなります」とも書いています。減額後の返済が続かなくなれば、そこで記録は残ります。
地震の前から延滞していた人は、原則として外れます。Q&Aは、対象になる条件を「災害が発生する以前において、当該債務者に延滞等の期限の利益喪失事由に該当する事象が発生していなかったことを指します」と説明しています。ただしその場合でも「当該対象債権者が同意する場合には、このガイドラインの対象となる債務者に含まれます」とあり、借入先が同意すれば対象になります。
減額の幅は、財産や収入、借金の総額、返済期間、家計の状況などを見て決まります。借入先の同意も要ります。
家が壊れたときは、り災証明書や被災証明書が要ります。勤め先が被災して収入が減ったときは、勤務先のり災証明書と過去の給与明細などです。市町村のり災証明書はこの手続きで使うので、窓口が混んでいても申請しておいてください。そろわなくても、災害の影響で返せないことが確認できれば対象に含まれます。
申し出は2回あります。止まるのは2回目からで、最初の連絡では止まりません。
1と3のあいだは数週間かかります。その間の支払いを黙って止めれば、ただの延滞です。払えないと分かっているなら、1の連絡のときに猶予や条件の変更を持ちかけてください。銀行や信用金庫であれば、次に挙げる要請がその後ろ盾になります。クレジット会社にも被災者向けの相談窓口があります。
申し出て一時停止に入ったこと自体が、契約違反として扱われることはありません。ガイドライン本体は「前項(1)の申出により一時停止が開始したことをもって、銀行取引約定書等において定める期限の利益喪失事由として扱わないものとする」と定めています。ただしこれは一時停止の開始そのものについての取り決めで、申し出より前に一括請求が始まっていた場合まで巻き戻すものではありません。
専門家の支援そのものは無料ですが、簡易裁判所へ払う費用は自分持ちです。
生活に欠かせない家財道具、一定の額までの現金や預金、被災者生活再建支援金や災害弔慰金は手元に残せます。
この制度を使うのに、代行業者へ報酬を払う必要はありません。運営機関は「本ガイドラインを利用するための支援と称して報酬を求める悪質業者等にご注意ください」「金融庁、財務局及び運営機関が他の事業者に本件事業等を委託することはありません」と注意を出しています。運営機関を装った偽のウェブサイトも確認されています。
銀行や信用金庫からマイカーローンを借りている人には、もう1つ後ろ盾があります。九州財務局と日本銀行熊本支店は2026年7月29日、災害救助法が適用された熊本県内の被災者について、返済の猶予など貸付条件の変更と、このガイドラインの相談に応じるよう金融機関へ要請しました。り災証明書についても「現況の写真の提出など他の手段による被災状況の確認や罹災証明書の後日提出を認める」よう求めています。県外の銀行から借りていても、被災していれば相談の相手になります。
どこに聞けばいいか分からないときは、金融庁が2026年7月29日から相談ダイヤルを開いています。0120-156811(平日10時〜17時)。IP電話からは03-5251-6813、メールは saigai@fsa.go.jp です。
動かない車が駐車場や道路をふさいでいても、レッカー業者や解体業者に引き取らせる前に、まず車のローンを組んだ先へ連絡してください。
完済するまで、車の所有者はローン会社や販売店のままであることが多く、その場合は自分のものでない車を動かすことになります。自分の車の所有者が誰になっているかは、車検証の所有者欄を見れば分かります。車が潰れて車検証を取り出せないときも、分からないまま動かさないでください。
制度の手続きに入った後は、さらに縛りがかかります。ガイドラインは、一時停止の期間中について「全ての対象債権者が同意した場合を除き、その資産を処分してはならず」と定めています。1社の同意では足りません。ただし同じ条文には「対象債権者は、合理的な理由なく不同意とすることはできない」ともあり、ふさいでいる車の撤去を理由なく拒まれる筋合いはありません。
日本損害保険協会は、地震保険以外の保険について「原則として地震、津波による損害は補償の対象となりません」としています。地震で潰れた車にも、津波で水に浸かった車にも、車両保険は原則として出ません。
一方、台風・洪水・高潮による損害は、一般的な車両保険でも、補償を絞った「車対車+A」でも支払いの対象です。同じ水没でも、地震の津波でやられた車と、大雨や台風で冠水した車では扱いが逆になります。補償の中身は会社の商品によって違うので、契約している保険会社に確かめてください。
地震のための特約もありますが、出るのは全損のときだけです。三井住友海上の「車両全損時定額払」特約は、津波を含む地震で「ご契約のお車が全損(注)となった場合に50万円を地震等保険金としてお支払いします」とし、車両保険金額が50万円より少ない契約ではその金額になるとしています。この特約でいう全損は車両保険の全損とは中身が違うと同社が注記していますが、基準そのものは約款とパンフレットに送られており、会社ごとにも違います。特約の名前も会社ごとに違うので、証券に同じ言葉が無くても付いていないとは限りません。付けているかどうかと、どこからが全損になるかは、保険証券と約款で確かめてください。車両保険(一般補償)に入っていないとそもそも付けられません。
一時金が出ても、車が片づくわけではありません。同社は「地震等保険金をお支払いした場合でも、当社はご契約のお車の所有権を取得せず、廃車や撤去等に要する費用を負担しません」としています。
免責の詳しい範囲、請求にり災証明書が要らないこと、保険料の払い込みと契約の更新に猶予があることは【令和8年熊本地震】地震で壊れた車に車両保険は出ないをご覧ください。
完済するまで、車そのものが借金の担保になっています。その担保が地震で消えると、分割で払う約束の前提が崩れます。ローン契約には、この場合に分割払いの権利を失うという条項が入っていることがあり、これが噂の出どころです。手元の契約書で「期限の利益の喪失」の項目を読んでおくと、自分の契約がどうなっているかが分かります。
残クレはここに残価が乗ります。数年後に車を返すことを前提に支払いを据え置いているのに、その車が無くなります。毎月の残高に加えて、残価まで一度に清算する話になるのはこのためです。
借入先の側も被災者向けの相談を受け付けています。たとえばトヨタファイナンスは2026年7月30日に、自動車クレジットやリースの相談窓口を案内しています。
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