車検が切れたまま置いてある車、エンジンがかからなくなった車。「これ、処分にいくらかかりますか」と聞かれる場面があります。
そういう車を引き取りに来て、費用を取らず、しかも値をつける先があります。ただし、つけた値は持ち主にも工場にも渡りません。熊本の被災地で車を無償で貸し出す費用になります。
一般社団法人日本カーシェアリング協会が8月1日に始めた「廃車で熊本地震支援プロジェクト」です。全国から350台を集め、1,400万円を確保する計画で、募集は12月25日まで。1台あたりの見込みは約4万円ですが、この数字は目標額から逆算したものではありません。
協会が使うのは「リサイクル寄付」という仕組みです。寄付された車は被災地では走りません。協会と提携する自動車リサイクル業者が車のある場所まで引き取りに来ます。
そこから先は2つに分かれます。協会の説明では、車の状態に応じて「廃車として資源を再利用」するか、「中古車として適切に流通」させるか。後者ではオークションへの出品も行われます。どちらのルートでも、そこで算定された車の価値が業者を介して協会への寄付金になります。

募集する車は「どんな状態の車でも寄付できます。車検切れ、故障している車も大丈夫です」として、対象地域は日本全国。ただし車種と状態によっては、廃車ではなく被災地でそのまま使う「活用寄付」を提案される場合があります。
1,400万円を350台で割れば4万円になります。ただ、協会はその順番で数字を出していません。先にあるのは実績のほうです。
プレスリリースの脚注には、2025年のリサイクル寄付による平均寄付金額として40,349円と書かれています。これを約4万円と丸め、350台を掛けた額が1,400万円です。
同じ4万円は、能登のときには2023年の実績として、その後の2つのプロジェクトでは「過去の実績」として使われています。
では実際にはいくら集まったのか。協会は能登半島地震のときにも同じ仕組みで車を募っています。2024年1月18日から3月31日までの募集で、目標は250台・1,000万円。集まったのは275台で、寄付金は1,080万円でした。
1,080万円を275台で割ると、1台あたり約39,300円になります。見込んだ4万円と、実際の1台あたりの額はほとんど同じでした。
過去の3回と並べるとこうなります。
| 期間 | 名称 | 目標台数 | 目標額 |
|---|---|---|---|
| 2024年1月18日〜3月31日 | 廃車で被災地支援プロジェクト(能登半島地震) | 250台 | 1,000万円 |
| 2024年12月1日〜2025年2月28日 | 廃車で被災地応援・社会貢献プロジェクト | 200台 | 800万円 |
| 2026年1月20日〜3月31日 | 廃車で社会貢献キャンペーン | 100台 | 420万円 |
| 2026年8月1日〜12月25日 | 廃車で熊本地震支援プロジェクト | 350台 | 1,400万円 |
2026年1月の420万円だけ4万円で割り切れませんが、これは提携リサイクル会社の協力で査定額に最大5,000円を上乗せする取り組みを行ったためで、20万円分がその見込みでした。
能登のときは約2か月半で275台が集まりました。今回は約5か月で350台という計画です。協会のリサイクル寄付の年間実績は、2024年が約370台、2025年が約120台。累計では、リサイクル寄付が646台、実際に走らせる活用寄付が1,694台です(いずれも2026年5月12日現在)。
買取業者に持ち込めば、査定額は現金で手元に入ります。寄付では、そのお金が協会に渡ります。リサイクル業者が算定した車の価値がそのまま寄付金になる、というのが協会の説明です。
金額が同じになるとは限りません。協会のリサイクル寄付の平均は、2025年で1台40,349円でした。買取業者は中古車としての再販や輸出を前提に値をつけることもあるため、**車検が残っていて市場価値のある車なら、買取のほうが高くなることがあります。**逆に、値がつかずに引き取り先を探すことになる車では、状態を問わず費用をかけずに手放せる寄付側の条件が効きます。
税金の扱いも、車がどちらのルートに乗るかで変わります。廃車になった場合、普通車はすでに納めた自動車税の一部が還付されます。**軽自動車は還付されません。**中古車として流通するルートでは、抹消が前提になりません。協会は活用寄付について「一時抹消せずに名義変更の後すぐに活用させていただいているため、税金の還付はありません」と説明しており、抹消がなければ還付も起きません。
どちらになるかは車の状態に応じて決まりますが、持ち主にいつ知らされるのかは、協会の資料に書かれていません。
**引き取り費用は原則としてかかりません。**協会のサイトは「お引取に際して、一切費用は掛かりません」としていますが、今回のプレスリリースは「引取費用は原則無料」という書き方です。
例外として挙がっているのは、普通車の寄付での印鑑証明書などの公的書類の取得費用と、相続にともなう寄付での戸籍などの取得費用です。
対象地域は今回「日本全国」とされています。ただし過去の募集では、ここから一部の離島が除かれていたことがあります。
手元に用意するのは3点です。
寄付合意書や名義変更に必要な書類は協会から郵送されます。見当たらない書類があれば、協会が相談に応じます。
日程は協会が引き取りの都合を聞いて業者に伝え、確定すると業者から直接連絡が入ります。書類の準備が整ってから引き取りまでは1〜2週間程度。その先、寄付金額が確定して感謝状が届くまでにどれくらいかかるかは示されていません。
窓口はフォームか電話です。フォームは協会の「車の寄付について」のページ( https://www.japan-csa.org/benefaction/car.php )から入ります。電話は050-5482-3178(平日9:00〜18:00)で、土日祝の問い合わせは翌週の対応になります。フォームから送っても初回の連絡は電話で来るため、車検証を手元に置いてからのほうが早く進みます。
ひとつ注意があります。2026年8月3日時点で、このページには「熊本地震」とも「350台」とも書かれていません。ページの前半は走る車を集める「活用寄付」の募集で、車検が残っていることが条件です。廃車予定の車があたるのは、その下の「②廃車予定や動かない車も大募集!(リサイクル寄付)」のほうになります。
熊本での車の無償貸出に必要な費用は、総額約3,400万円と見込まれています。内訳のうち、このプロジェクトで確保するのが1,400万円です。

使い道として挙げられているのは、車両維持費、運搬費、拠点設置費、旅費、保険料、人件費などの事業費と管理費です。
現地の状況としては、熊本県内で災害ボランティアセンターを運営する社会福祉協議会から計30台分の車両支援要請がすでに届いており、協会は今後約150台を現地に配備する予定としています。3,400万円という試算も、この約150台を前提に置いたものです。支援車両の第1便は7月30日、石巻の本部を出発しました。
貸出は「災害サポート・レンタカー」として7月29日に受付が始まりました。対象は令和8年熊本地震で被災した人と、支援活動を行う団体。住んでいる場所は問いません。貸出期間は8月3日から12月25日までで、日本財団の助成を受けて実施されています。
| 区分 | 車種 | 期間 |
|---|---|---|
| 長期貸出 | 軽乗用車・普通車 | 最長14日間 |
| 短期貸出 | 軽トラック | 最長3日間 |
いずれも期間中は何度でも利用でき、費用は無料です。場所は協会の熊本支部(熊本市西区小島6丁目10-10・小島河川防災センター内)で、貸出時間は10:00〜16:00。
申し込みはWEBフォーム( https://www.japan-csa.org/blog/202607disaster3 )と電話(050-5799-4740、10:00〜16:00、水曜・日曜・祝日休み)の両方で受け付けています。協会は、WEBでの申し込みが難しい場合は電話でと案内しています。完全予約制で、事前の申し込みがないまま拠点に行っても貸し出しは受けられません。申し込みの集中や車両の手配状況によっては、貸出までに時間がかかる場合があります。
**対象外になるのは3つの場合です。**被災地の事業を請け負う企業、医師から運転を止められている人、支援団体などに所属していない個人のボランティア。借りるときは免許証の提示、携帯電話の所有、被災が証明できるもの(被災・罹災証明や被災状況の写真など)の提示が条件になります。
整備工場が客の車をこの仕組みに回す場合、寄付の手続きは持ち主と協会のあいだで進みます。寄付合意書も名義変更の書類も、協会から持ち主へ郵送されます。工場を経由する手順や、工場側の取り分についての定めは、協会の資料にはありません。
自社の車を出す側として関わる道もあります。協会は2025年から「クルマ寄付パートナー」という登録制度を設けています。登録料は無料で、法人・団体・自治体・個人が対象です。
区分は3つあり、累計10台以上の寄付が「リーディングパートナー」、累計1台以上が「アクティブパートナー」、寄付の実績がなくても取り組みに賛同すれば「イイネ!パートナー」になります。営業車の入れ替え、リースアップ車両や下取り車の一部を寄付する形が想定されています。
一覧に並ぶのは大手ばかりではありません。2026年6月29日更新の一覧には、中小の整備工場や鈑金工場、自動車整備振興会の支部、各地の中古自動車販売商工組合が入っています。累計10台以上のリーディングパートナー5者には、日本自動車連盟や用品メーカーに加えて、宮城県中古自動車販売商工組合が入っています。
自治体も加わっています。宮城県丸森町は2026年5月、20年以上使った消防車両2台をリサイクル寄付し、自治体として全国初のパートナーになりました。
被災して動かなくなった車を熊本で手放す場合は、順番も期限も別にあります。市町村・運輸支局・県の3つの窓口を回る手順と自動車税の減免は動かなくなった車の抹消登録と自動車税の減免をご覧ください。抹消と同時にしか申請できない自動車重量税の還付についても分かります。
道路・燃料・工場が発生から数日でどこまで動いたかは発生4日目に動いたのは高速道路の区間数ではないをご覧ください。整備士オンラインは追っていきます。
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