熊本県が8月2日午前の災害対策本部会議で、避難のため車中泊をしていた70代の女性が熱中症の疑いで死亡したと発表しました。発見は7月30日。車のガソリンは切れていました。
エアコンで車内を涼しくでき、人目もありません。だから多くの人が車で夜を過ごしています。熊本地方気象台が8月2日11時に発表した予報では、熊本の最高気温は3日に40℃です。
車の中が涼しいのは、燃料が残っているあいだだけです。空になれば、涼むこともできず、涼しい場所へ動くこともできません。残量がどこまで減ったら車から降りるか、今日のうちに決めておいてください。
県が車中泊の人に配っているチラシは、めまい、手足のしびれ、こむら返り、頭痛、吐き気、だるさ、倦怠感を熱中症の疑いとしています。返事がおかしい、意識がない、けいれん、体が熱いときは救急車(119)です。
同じチラシには、車の中でできることも書いてあります。
どこで給油できるかは市町でばらつきます。八代市と宇城市では給油できるスタンドが増えましたが、氷川町は8月1日6時時点で営業中ゼロのままです。携行缶で持ち帰るときは、セルフの店でも自分では入れられません。
熊本県が8月2日午前の第11回災害対策本部会議で示した資料では、人的被害143名のうち死亡は38名です。内訳は3つに分かれています。市町村が災害を原因と確認した死者が35名、災害による負傷の悪化または身体的負担による疾病により死亡した可能性のある死者が1名、災害との関連を調査中の死者が2名。このうちの1名が、車中泊をしていた70代の女性です。
7月30日、止まっている車の中で見つかり、熱中症の疑いで病院へ搬送されたあと、死亡が確認されました。発見時、車のガソリンは切れていました。読売新聞と日本経済新聞は、エアコンが停止した状態だったとも報じています。発見場所は調査中です(熊本日日新聞)。
災害と関連する可能性がある死亡という区分は、前日8月1日14時時点の発表にはありませんでした。今回の地震で、災害関連死が疑われる最初の1件です。まだ災害関連死と確定したわけではありません。県は資料に「正式には市町村に設置される審査会を経て決定」と注記しています。
「車中泊をされている皆様へ」という1枚の紙が、この8月2日の会議の配布資料に入りました。車中泊の人だけに向けた資料が会議に出たのは、これが初めてです。県の健康づくり推進課のページにも同じものが載っています。
書いてあるのは熱中症とエコノミークラス症候群の2つです。熱中症の項はこうです。
めまい、手足のしびれ、こむら返り、頭痛、吐き気、だるさ、倦怠感等の症状は、熱中症の疑いがあります。特に返事がおかしい、意識消失、けいれん、体が熱い等の症状がある際は救急車(119)を要請してください。
予防は、のどが渇く前に水分と塩分をとることと、暑さを避けることの2つです。暑さを避ける方法は3つです。車両は日陰や風通しの良い場所に駐車する。車内はエアコンや扇風機で温度管理する。風通しの良い服を着用し、保冷剤などで体を冷やす。乳幼児等を車の中で一人にさせないように、という注意も添えられています。
エコノミークラス症候群の項は、足にできた血栓が肺に詰まって胸痛、呼吸困難、失神などが出ると説明し、予防を4つ並べています。長時間同じ姿勢でいないこと、足の指をこまめに動かすか歩くこと、適度な水分をとること、時々深呼吸をすること。
県は同じ日に、避難所向けの「避難されている皆様へ」も配っています。避難所向けの「日中の外出を控え、帽子や日傘を利用する」が、車中泊向けでは「車両は日陰や風通しの良い場所に駐車する」に、「室内はエアコンや扇風機で温度管理する」が「車内は」に変わっています。乳幼児の一文は車中泊向けにだけあります。
避難所と違って名簿はないので、届け方は放送と掲示になります。県はチラシの掲示と配布のほか、テレビ・ラジオや県のSNSで呼びかけ、市町村には防災無線での呼びかけを依頼しています。
エアコンの冷房が出るのは、エンジンがベルトで回しているコンプレッサーが動いているあいだです。エンジンが止まれば冷房も止まります。ハイブリッド車や電気自動車はコンプレッサーの回し方が違いますが、こちらも電気が減れば冷房を続けられません。エアコンのどこで燃料を使っているか、何を我慢すると何が減るのかは【令和8年熊本地震】車中泊のエアコンをご覧ください。
止まるのは冷房だけではありません。燃料が空になった車は、冷房のある避難所へも、給油できるスタンドへも動けません。
燃料を残そうとすれば、暑さを我慢することになります。宇城市で自宅そばに車を停めている住職の稲田実勝さん(69)は西日本新聞の取材に「小まめにエンジンを切り、節約している。夜は暑くて2時間置きに目が覚めてしまい、疲れがたまっている」と話しています。
停電が続いている3市町のスタンドの営業状況は次のとおりです(経済産業省情報、8月1日6時時点)。
| 市町 | スタンド数 | 営業中 | 営業停止中 | 確認中 |
|---|---|---|---|---|
| 八代市 | 45 | 30 | 12 | 3 |
| 宇城市 | 25 | 17 | 6 | 2 |
| 氷川町 | 6 | 0 | 6 | — |
前日の7月31日6時30分時点では、八代市の営業中が21か所、宇城市が10か所でした。八代市で9か所、宇城市で7か所増えています。氷川町は調査対象のスタンド数が7か所から6か所に変わりましたが、営業中はどちらの時点でもゼロです。
ガソリンそのものは届き始めています。ガソリンを溜めてスタンドへ送り出す八代油槽所は、7月30日から出荷を再開しました。タンクローリーは全国から集まり、通常時の2倍以上にあたる65台程度が配備されています。八代からだけでなく福岡県・大分県・鹿児島県の拠点からも応援配送が行われていて、輸送は国土交通省や警察と連携して、通行止め区域を避けるルートで組まれています。共同通信によると、隣県拠点からの融通などで、8月1日までに通常時の最大4倍の供給力を確保できる見通しになりました。
それでも1台あたりに入る量は制限されています。熊本日日新聞によると、宇城市松橋町のJA熊本うき本所の直営スタンドは1台20リットルの給油制限を設け、職員の体調を考えて1日2回2時間ずつの営業にしています。日本経済新聞は、1人あたり2,000円までに制限し、夕方4時に燃料が尽きて営業を終えたスタンドの例を伝えています。並んでも満タンにはならないことがあります。
停電していても自家発電で給油できる住民拠点SSは、熊本県内に312箇所あります。制度の中身と探し方は停電しても給油できる「住民拠点SS」は熊本県内に312箇所をご覧ください。県は営業中のスタンドを探す先として、資源エネルギー庁の検索ページを案内しています。
車を動かせないなら、缶で運んでもらうことになります。県南ではその携行缶が売り切れていて、地元のホームセンターだけでなく県境の鹿児島県出水市の店舗にまで影響が及んだと熊本日日新聞が伝えています。
総務省消防庁は、セルフのスタンドでもガソリンの容器への詰め替えは従業員が行う必要があるとしています。給油機の前で自分では入れられません。
買うときは本人確認があります。令和2年2月1日から、ガソリンを容器に詰め替えて売る店には、買う人の本人確認と使い道の確認、記録の作成が義務づけられています。何に使うかを聞かれます。本人確認の例は運転免許証です。免許証を持たずに行くと、給油してもらえないことがあります。
容器も決まっています。灯油用のポリ容器にガソリンは入れられません。ガソリンは電気を通しにくく、流れるときに静電気が起きやすいので、金属製の容器でなければならないからです。ガソリン携行缶に入れられるのは、消防法令で最大22リットルまでです。
そして、持ち帰った缶を車の中に置くと、中身が熱くなります。国民生活センターが8月中旬の晴天日に、日当たりの良いアスファルト路面に停めた普通乗用車で測ったところ、中身の温度は直射日光が当たる助手席の上で62℃、直射日光が当たらない後部の荷室でも56℃まで上がりました。缶の中の圧力が上がった状態でキャップを外すと、中身が噴き出します。エア調整ねじが付いた缶なら、開ける前に少しずつ圧を抜きます。
ガソリンはマイナス40℃でも揮発します。蒸気は空気より3〜4倍重く、低いところに溜まります。トラックの助手席に携行缶がある状態で、たばこに火をつけて引火し、顔から首にかけてやけどを負った事故があります(2019年8月、30歳代男性、国民生活センター)。缶はしっかり栓をして、風の通る場所に置きましょう。
県は8月2日、避難所の熱中症対策を緊急に強化すると示しました。飲料水を増やし、トイレを整え、経済産業省の支援でスポットクーラーの配備を進めます。トイレを整えるのは、足りないと避難者が水分をとる量を減らすからです。
避難所は8月2日7時30分時点で210か所、避難者は9,226名です。
車中泊の人数が公表されているのは、熊本市が指定した車中泊避難場所2か所だけです。アクアドームくまもとは7月30日夜に47台でしたが、8月1日14時30分時点では9台9人になりました。ここでは保健師が定期的に見回り、体調を確認していると西日本新聞が伝えています。
指定された場所の外にいると、その見回りは届きません。美里町の職員は同じ取材に「私たちが分からない場所で車中泊をする人もいるだろう。対応が難しい」と話しています。
冷房が使える民間施設は、県が震度6弱以上を観測した市町村を対象に3か所公表しています(7月31日現在)。施設名と開放時間、受入人数は【令和8年熊本地震】車中泊のエアコンをご覧ください。地震の影響で利用できない場合があるため、施設の状況を確認してから向かうよう県は注意しています。
車内はエアコンや扇風機で温度管理する、と県は呼びかけていますが、それも燃料が残っているあいだだけです。空になった車は、涼む場所でも、涼しい場所へ動く手段でもなくなります。残量がどこまで減った時点で車から降りて別の場所へ移るかを、決めておいてください。
このほかは、次の記事をご覧ください。
整備士オンラインは、令和8年熊本地震の状況を追っていきます。
一次情報
二次情報