九州道は松橋ICからえびのICまで、南九州道は八代JCTから田浦ICまでが止まっています。合わせて2路線9区間。国道・県道・市町村道も19路線が全線通行止めです。
原因は舗装ではありません。橋桁がずれ、路面に段差とひび割れと隆起が出ています。打ち直して済む損傷ではないので、点検と応急復旧に日数がかかります。
一方で区間そのものは数時間単位で動きます。この記事の数値は2026年7月30日時点のものです。だから先に壊れ方を見て、そのうえで通行可否を自分で確かめる手段を押さえておくほうが確実です。
NEXCO西日本は7月29日11時の第4報に、被災状況の写真を添えた資料を付けています。そこに挙がっているのは次の5箇所です。
| 箇所 | 位置 | 損傷 |
|---|---|---|
| 川田橋 | 宇城氷川スマートIC〜八代IC | 橋梁部ジョイントの損傷、桁ずれ、路面の段差・開き |
| 片野川橋 | 八代JCT〜人吉IC | 同上 |
| 妙見第一橋 | 八代JCT〜八代南IC | 同上 |
| 土工部 | 松橋IC〜宇城氷川スマートIC | 路面段差、ひび割れ、隆起等 |
| 土工部 | 八代IC(ランプ部) | 同上 |
国土交通省の第9報も、九州道と南九州道の通行止め理由を「道路損壊、橋梁損傷」と分類しています。補助国道の2区間はさらに明確で、通行止めの原因が橋そのものです。国道218号(熊本県宇城市)は新山崎橋、国道219号(熊本県八代市)は新萩原橋が損傷しました。熊本県が管理する被災橋梁5箇所には、7月29日から国土交通省が現地で技術支援に入っています。
NEXCO西日本は第4報の時点で「災害発生箇所については詳細な被害状況の確認や応急復旧作業を進めてまいりますが、現時点で通行止め解除の見込みは立っておりません」としています。第5報(7月30日9時50分現在)も、解除した区間と継続中の区間を示すにとどまり、残る区間の見通しには触れていません。
なお、高速道路上を走行中だった利用者の被害は確認されていません。負傷が確認されているのは休憩施設の利用者1名と店舗スタッフ3名です。
国土交通省第9報(7月30日13時30分時点)が挙げる通行止めは次のとおりです。
| 路線 | 区間 | 区間数 | 理由 |
|---|---|---|---|
| E3 九州自動車道 | 松橋IC〜えびのIC | 6区間 | 道路損壊、橋梁損傷 |
| E3A 南九州自動車道 | 八代JCT〜田浦IC | 3区間 | 道路損壊、橋梁損傷 |
九州道のうち坂本PAの工事用出入口からえびのICまでは、緊急車両が通行できます。有料道路と直轄国道に、被災による通行止めはありません。
解除も進んでいます。NEXCO西日本は7月30日9時4分に、E3九州道の益城熊本空港IC〜松橋ICと、E77九州中央自動車道の嘉島JCT〜益城トールバリアの上下線を解除しています。九州地方整備局は同日10時00分現在の第5報で、直轄管理区間である南九州道の田浦IC〜水俣ICを10時30分に開放予定と記載し、開放後にX(@mlit_yatsushiro)で報告しました。7月29日11時の時点で110.8kmだった通行止め延長は、この2日で九州道の南半分と南九州道の一部に絞り込まれています。
解除後も設備は元に戻っていません。E3九州道の緑川PAは、上り線が当面閉鎖、下り線は店舗休止でトイレと駐車場だけ使えます。NEXCO西日本は「緊急車両や緊急物資輸送の円滑な通行確保のため、不要不急の高速道路のご利用はお控えいただきますようお願い申し上げます」と要請しています。
九州地方整備局の第5報(7月30日10時00分現在)が挙げる補助国道・地方道の全線通行止めは、原因別に数えて21件です。ただし熊本県道156号鏡宮原線と熊本県道42号八代鏡線は原因が2つ計上されているため、路線名としては19件になります。
| 原因 | 路線数 | 路線名 |
|---|---|---|
| 橋梁損傷(補助国道) | 2 | 国道218号(宇城市・新山崎橋)、国道219号(八代市・新萩原橋) |
| 落石 | 5 | 宮崎県道205号向山日之影線(日之影町)、宮崎県道142号上椎葉湯前線(椎葉村)、大分県竹田市道駄原目線、熊本県道220号三本松甲佐線(甲佐町)、熊本県道57号益城矢部線(御船町) |
| 道路損壊 | 5 | 主要地方道熊本嘉島線(熊本市)、熊本県道32号小川嘉島線(宇城市)、熊本県道240号今吉野甲佐線(甲佐町)、熊本県道244号下郷北新田線(宇城市)、熊本県道158号中津道八代線(八代市) |
| 橋梁損傷(地方道) | 4 | 熊本県道42号八代鏡線(八代市)、熊本県道239号御船甲佐線(御船町)、熊本県道156号鏡宮原線(氷川町)、熊本県道338号八代不知火線(八代市) |
| 落下物・飛来物 | 3 | 熊本県道156号鏡宮原線(氷川町)、熊本県道322号大牟田大鞘八代港線(八代市)、熊本県道42号八代鏡線(八代市) |
| 法面崩壊 | 1 | 熊本県山都町道金地太田良線 |
| 土砂流入 | 1 | 鹿児島県道333号川内祁答院線(薩摩川内市) |
八代市・宇城市・氷川町と、御船町・甲佐町・嘉島町を含む上益城地域に集中しています。震度7を観測したのが宇城市と氷川町、震度6強が熊本市・八代市・宇土市・美里町・益城町なので、震度の分布とほぼ重なります。
山都町道金地太田良線の法面崩壊では集落が孤立しましたが、隣接する林道の啓開が7月29日10時35分に終わり、孤立は解消しています。第9報の時点で孤立集落はありません。被災地への主要アクセスである国道3号と国道57号のアクセスも確保済みです。
熊本県以外では、宮崎県で2区間、大分県で1区間、鹿児島県で1区間が落石や土砂流入で止まっています。いずれも山間部の県道・市道です。
九州道が松橋ICからえびのICまで切れているため、国土交通省九州地方整備局とNEXCO西日本は7月28日23時時点の合同発表で、広域迂回を呼びかけています。示された迂回ルートは、福岡ICから本州方面へ抜けずに東側へ回り、E10東九州自動車道を経由して宮崎IC・鹿児島ICへ向かう経路です。国土交通省第9報も「高速道路通行止めに伴う、被災地の渋滞を抑制するため、E10東九州道への広域迂回を呼びかけ」と記載しています。
輸送側の措置も7月29日に始まりました。被災地域の物流のため特殊車両通行許可の迅速化が実施されており、緊急救助活動のために災害派遣従事車両の高速無料措置も同日から始まっています。無料措置の対象は災害派遣等従事車両で、一般車両が対象になるものではありません。
九州地方整備局は7月29日15時に「熊本県災害時交通マネジメント検討会」をWEB開催で設置しました。委員には熊本県警察本部交通規制課、熊本県トラック協会、熊本県バス協会、日本道路交通情報センター、九州運輸局熊本運輸支局が入っています。会議では被災状況を関係機関で共有したうえで、道路情報板・HP・SNSによる情報提供と、復旧状況に応じた交通マネジメントを継続することを確認しています。
規制情報は道路管理者が「止めた」と決めた区間を示します。通行実績は、実際に車が通ったという事後の記録です。性質が違うので、両方見ます。公開されているものは、7月30日時点で次の4つです。
| 名称 | 提供 | データの元 | 粒度 |
|---|---|---|---|
| 令和8年熊本地震 通れるマップ | 国土交通省 | 道路規制情報、ETC2.0速度データ(平均速度)、通行実績 | 7月30日16時00分時点。時点別にGeoJSON・画像をダウンロード可 |
| 通れた道マップ | トヨタ自動車 | テレマティクス搭載車の通行実績、Tプローブ交通情報、JARTIC/VICSの交通規制 | 直近3時間/直近24時間を切り替え |
| 通行実績情報マップ | ゼンリンデータコム「いつもNAVI」 | 本田技研工業のインターナビ装着車の走行軌跡データ、JARTIC/VICSの通行止め | 通行実績は過去3時間分、通行止めは過去10分以内 |
| アイハイウェイ | NEXCO西日本 | 高速道路の交通情報 | 24時間更新。マイルート登録でメール通知 |
国土交通省の通れるマップは、ETC2.0の車載器から集めた平均速度をそのまま地図に重ねている点が民間3社と違います。GeoJSONファイルが時点別に置かれているので、7月29日8時から7月30日16時までの各時点を並べて、どの区間がいつ開いたかを追うこともできます。
トヨタの通れた道マップには、災害支援可能な販売店と給電機能を持つ車両を表示するレイヤーもあります。給電車両は燃料残量が赤・黄・水色で色分けされます。
通行実績の読み方には注意点があります。ゼンリンデータコムは地図上に「通行実績がある道路でも、現在通行できることを保証するものではありません」「緊急交通路に指定される等、通行が規制されている可能性もあります」と明記しています。数時間前に通れた道が今も通れるとは限らず、逆に緊急交通路に指定されて一般車が排除されている場合もあります。実績地図は候補を絞る道具で、可否の判定は現地の規制と誘導が決めます。
一般道を含む道路交通情報は日本道路交通情報センター(JARTIC)、高速道路各社の重要なお知らせは高速道路影響情報サイトにまとまっています。九州地方整備局は復旧状況をX(@mlit_Kyushu、@mlit_kumamoto、@mlit_yatsushiro)でも出しています。
熊本フェリーは7月30日の熊本発7時30分始発から運航を再開しました。ただし乗れるのは車だけです。熊本港側の徒歩乗船口が壊れており、歩いての乗船はできません。
原因は岸壁側の設備です。熊本県の財産であるフェリー渡橋が、地震で大きく動揺した着岸中の船体と接触し、先端部が損傷して使用不可になりました。熊本フェリーは修繕について熊本県へ対応を要望しています。熊本港ではガントリークレーンの配電盤も損傷しました。
八代港の被害はさらに広範囲です。くまモンポート・コンテナターミナルの岸壁エプロンなどが被災し、岸壁背後には段差・液状化・陥没が出ました。耐震強化岸壁(水深10m、延長180m)の背後にできた延長40mの段差は7月29日未明に20m分を応急復旧し、海上保安庁の巡視船を受け入れて給水支援に使われています。7月30日未明にはコンテナ岸壁(水深12m、延長200m)が緊急輸送船の接岸可能と判断され、海上自衛隊の支援船が入りました。一方でコンテナ船の入港は当面休止です。ガントリークレーンからは漏油も確認されています。
震度4以上を観測した港湾は、九州西側5県(福岡・佐賀・長崎・熊本・鹿児島)で合計99港ありました。うち震度6弱以上を観測したのは次の7港です。
| 震度 | 港湾 |
|---|---|
| 震度7 | 三角港 |
| 震度6強 | 八代港、日奈久港、鏡港 |
| 震度6弱 | 姫戸港、合津港、上天草港 |
三角港は護岸水叩きと臨港道路にひび割れ、水俣港は緑地と臨港道路に起伏と液状化、田浦港は岸壁と臨港道路に起伏とひび割れが出ています。鏡港では沈下・隆起・クラック、日奈久港ではクラックと桟橋の傾きが確認されました。海事分野では、熊本県内の造船会社の工場の壁にヒビが入り、フェリー事業者の船舶に船体損傷が出ています。航路の運休情報は、7月30日15時30分時点でありません。
事業用車両への影響は、国土交通省第9報(7月30日15時00分時点)にまとまっています。
| 対象 | 状況 |
|---|---|
| 高速バス | 福岡県・熊本県発着便を中心に7事業者18路線が運休 |
| 路線バス | 熊本県内の2事業者で路線運休等。車内転倒事故1件(軽傷) |
| タクシー | 15社で事務所・車庫が一部損壊等 |
| 宅配便 | 5事業者で一部地域の集配遅延・停止等 |
車両そのものより、事務所と車庫が壊れて動けない事業者が多い形です。自動車事故対策機構熊本支所でも天井材の一部が落下しました。
ロードサービスにも影響が出ています。東奥日報などが伝えたところによると、JAFは7月28日18時ごろに公式Xで、熊本県の地震の影響により九州地方の一部地域でロードサービスの出動見合わせ、または現場到着まで時間を要する場合があると告知しました。
7月28日16時27分の震度7以降、7月30日15時00分までに震度3以上の地震が58回起きています。内訳は震度7が1回、震度5弱が4回、震度4が14回、震度3が39回です。
余震が多いと、復旧が単純に前へ進みません。7月29日22時19分に熊本県で震度5弱の地震が起きたあと、国管理河川1水系3河川と県管理河川6水系8河川の点検、都道府県管理ダム1基と利水ダム3基の点検、熊本県内の砂防施設の再点検、八代港の再点検がそれぞれ実施されました。いずれも直前に点検を終えたばかりの施設です。橋梁と土工部の点検も同じ構造にあります。
気象条件も重なります。熊本県では7月30日から8月6日にかけて最高気温35度以上の日が続く見通しで、台風第13号が来週日本付近に影響する可能性があります。
国土交通省の被害状況資料には「これは速報であり、数値等は今後変わることもあります」と注記があります。この記事の数値も同じ性質のものです。整備士オンラインは国土交通省の第10報以降とNEXCO西日本の第6報以降を追っていきます。
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