被災して動かなくなった車を手放すには、3つの窓口を順に回ることになります。市町村で被災の証明を取り、運輸支局か軽自動車検査協会で抹消登録し、県へ自動車税の減免を申請する。この順番は入れ替えられません。
そのうえで、減免には申請期限があります。県は「自動車税の減免を受けるには、被害を受けた日又は賦課処分を知った日から2ヶ月以内に申請する必要があります」と案内しています。7月28日に被災した車なら、9月28日(月)です。
証明書の交付や解体の日程が後ろへずれれば、減免の申請もそのぶん遅れます。先に全体の流れを掴んでおかないと、最後の窓口で間に合わなくなります。
| 手続き | 窓口 | 期限 |
|---|---|---|
| 被災の証明を取る | 市町村 | 熊本市の被災届出証明書は10月30日(金) |
| 抹消登録をする | 熊本運輸支局/軽自動車検査協会熊本事務所 | 期限なし |
| 自動車税の減免を申請する | 自動車税事務所・広域本部・電子申請 | 被害を受けた日から2ヶ月以内 |
| 自動車重量税の還付を申請する | 抹消登録と同じ窓口で同時に | 災害発生日から5年以内 |
| 自賠責保険を解約する | 契約している損害保険会社 | 期限なし(残存1ヶ月未満は返戻なし) |
2ヶ月に間に合わない場合の逃げ道は用意されています。県は、申請期限までに申請ができない特別の事情がある場合は「その事情がやんだ日から2ヶ月を経過した日までに申請してください」としています。その事情がやんだ日とは「被災証明書が交付された日や永久抹消登録等が済んだ日など」です。証明書の交付や抹消登録が長引けば、起算日はその分だけ後ろへ動きます。
熊本県自動車税事務所のQ&Aは、この2つをこう区別しています。「『罹災証明書』は、住家の被災程度を証明するもので、『被災証明書』は、住家以外の家財、車等の有形財産の被災を証明するものです」。減免申請にはどちらでも使えますが、車の被害そのものを証明するのは後者です。
名称は自治体によって違います。上天草市は「被災証明書」で、事務所・店舗・空き家などの住家ではない家屋、家屋以外の構築物、家財、車両等を対象と明記しています。宇城市は「罹災届出証明」と呼び、住家以外の被害はこちらだと案内しています。熊本市の名称は「被災届出証明書」です。
熊本市の被災届出証明書は、各区役所福祉課と各総合出張所で受け付けます。受付時間は平日午前9時から午後4時です。郵送でも申請できます。申請書と、110円切手を貼って住所宛名を書いた返信用封筒を、お住まいの区の福祉課へ送ります。問い合わせは健康福祉政策課(096-328-2340)です。
申請期限は令和8年10月30日(金)です。ただし市は「原則、被災後1月以内での申請が必要となります。それ以降の申請については下記様式内の申出書の添付が必要となります」としています。8月28日を過ぎると、申出書が1枚増えます。
住家のり災証明書とは別の書類です。熊本市のり災証明書(住家)は、電子申請が10月31日(土)、窓口が10月30日(金)。対象は住家で、カーポート・倉庫・門扉は対象外と明記されています。
その場合の代替手段を県が用意しています。市町村が自動車についての被災証明書を発行しないときは、被災地区の自治会長・区長・班長・民生委員等が書いた現認書を提出します。勤務先や出張先、旅行先で被災したときは、その事業所や宿泊所が書いた現認書です。
住家のり災証明書で代えられる場合もあります。県のQ&Aは、り災証明書の住家以外の被害の欄に被災した車の登録番号が書かれていれば、それで被災の事実が証明できるとしています。登録番号の記載がないときは、車検証上の使用の本拠の位置と、り災証明書の住家の住所地が同一か一体の土地と判断できることが条件になります。
一時抹消登録は、使用を一時的に中止するときの手続きです。手続き後に交付されるのは登録識別情報等通知書で、自賠責の解約や再登録のときに使います。
永久抹消登録は、リサイクル事業者に引き渡して適正に解体処分した場合の手続きです。申請書には解体報告記録がなされた日と、解体に係る移動報告番号を書きます。解体が終わるまで申請できません。手数料は無料です。
解体の順番待ちで先に登録だけ落としたいときは、一時抹消登録を先に済ませ、解体が終わってから解体届出を出す流れになります。この届出でも自動車重量税の還付申請ができます。
登録車の窓口は熊本運輸支局本庁舎(熊本市東区東町4丁目14番35号、050-5540-2086)です。自動車登録の受付時間は平日の午前8時45分から11時45分と午後1時から4時。九州運輸局は、書類作成に時間がかかるとして、受付終了の30分前までに来るよう案内しています。同支局の本庁舎は7月29日8時30分から、三角庁舎は7月30日8時30分から通常どおり開庁しています。
軽自動車は軽自動車検査協会熊本事務所(熊本市東区東本町16番3号、050-3816-1758)です。業務受付時間は午前8時45分から11時45分と午後1時から4時、休業日は土日祝で、7月30日時点で同事務所からのお知らせは出ていません。
還付申請書は永久抹消登録申請書や解体届出書と一体の様式になっていて、抹消の手続きと同時に運輸支局または軽自動車検査協会の窓口へ出します。抹消を済ませたあとで還付だけを申請する道はありません。窓口で言われるまで気づかないと、そのまま取り損ねます。
還付額は「納付した自動車重量税額 ÷ 車検証の有効期間 × 車検残存期間」で、残存期間が1ヶ月以上あることが条件です。通常の廃車還付では、運輸支局に申請書が出てから税務署が還付金を払うまでおおむね2ヶ月半かかります。
被災した車には別枠の還付措置があります。根拠は租税特別措置法第90条の15です。車検証の有効期間内に自然災害で被害を受けて廃車となった車について、永久抹消登録または滅失・解体の届出と同時に還付申請書を出すと、車検残存期間に応じた重量税が還付されます。この枠の車検残存期間は、自然災害の発生した日から有効期間満了日までを数えます。申請の期限は災害発生日から5年以内です。
ここでいう自然災害は、被災者生活再建支援法の適用を受ける災害に限られます。令和8年熊本地震で7月28日に熊本県の10市10町1村へ適用されたのは、災害救助法です。別の法律にあたります。支援法の適用状況は内閣府が公表しており、7月30日時点の一覧に令和8年熊本地震の記載はありません。整備士オンラインはこの動きも追っていきます。適用がない場合でも、解体を事由とする永久抹消登録なら通常の廃車還付が使えます。
熊本県の災害減免は、被害を受けた自動車に係る被災年度の自動車税が対象です。使用不能なら全額免除、被害額が被災前の価額の2分の1以上なら税額の2分の1相当額の軽減になります。すでに納めていれば、該当する額が還付されます。判定では、被害額から保険金等で補てんされる額を除きます。地震による損害では車両保険は原則として支払われませんが、地震の特約による一時金などが支払われた場合は、その分だけ軽減側の判定が変わります。
県は使用不能を「滅失又は損壊」と定義し、損壊をさらにこう説明しています。修理費が被災直前の中古車価格を上回るなど経済的に修理が不可能な場合、または、フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷が生じたことが客観的に認められ、買換えが社会通念上相当と認められるもの。判定するのは県の窓口です。申請するまで結果は決まりません。
全額免除の申請に要る書類は4点です。災害減免申請書、被災証明書または罹災証明書、被災自動車の被災後の写真(車のナンバーが写っているもの)、そして永久抹消登録証明書。一時抹消でとどめる場合は、4点目が申立書に替わります。抹消できずに解体した場合は、使用済自動車引取証明書に替わります。永久抹消登録証明書の代わりに「永久抹消登録解体届出完了のお知らせ」を出すこともできます。
修理して2分の1軽減を申請するときは、写真までの3点に加えて修理工場の領収書か請求書が要ります。保険金等の補てんがあれば、その金額を証する書類も添えます。
申請は郵送・窓口のほか、熊本県電子申請システムからもできます。ただし修理する場合の2分の1軽減は電子申請の対象外で、自動車税事務所へ連絡することになります。
窓口は自動車税事務所減免担当(096-368-4020、熊本市東区東町4丁目14-37)と、地域ごとの広域本部です。このうち県南広域本部(八代市)と宇城地域振興局は、施設の安全確認のため税務業務を当面の間休止しています。八代市・人吉市・水俣市・氷川町・葦北郡・球磨郡の担当はこの県南広域本部です。当面の相談先は自動車税事務所か電子申請になります。
年度途中で名義が変わっていた車には注意が要ります。4月1日時点の納税義務者から名義変更したあとに被災した場合、被災時の所有者はその年度の納税義務者ではないため、減免は適用されません(相続による名義変更は別扱いです)。
登録車の自動車税種別割は、全額納付後に抹消登録すれば抹消した月の翌月から翌年3月末までが還付されます。還付の申請は要りません。還付通知書が届きます。
軽自動車税種別割にこの仕組みはありません。熊本市は「4月2日以降に廃車又は譲渡を行っても、その年度は、税額の全額が課税され、月割で減額(月割で課税し、差額を還付する制度)されることはありません」と明記しています。払った軽自動車税を戻す道は、市町村の減免しかありません。
軽自動車税は市町村税なので、減免の可否も条例で決まります。県が7月29日に各市町村へ送った事務連絡は、減免について「各市町村の減免に関する条例・規則等に基づき、適切に御対応ください」と書くにとどまります。添付された自治事務次官通知の取扱い例にも、軽自動車税の項目はありません。熊本市の軽自動車税の窓口は市民税課(096-328-2181)です。
自賠責保険の解約に要るのは、自賠責保険証明書と、廃車等が確認できる書類です。後者にあたるのは、登録車なら登録識別情報等通知書、検査対象軽自動車なら自動車検査証返納証明書。どちらも抹消登録を済ませないと手に入りません。解約日は保険会社が書類を受理した日で、遡りません。
満期まで1ヶ月以上残っていれば保険料が戻ります。1ヶ月未満なら返戻はありません。手続きは損害保険各社のWeb申請(One-JIBAI)か郵送です。
所有権が留保されていて抹消登録ができず、留保者が同意しないため解体もできない。この場合について県は、写真により全損状況を確認するとし、「解体、抹消登録できない理由書」を併せて出すよう求めています。様式は県のページからダウンロードできます。
ただし、その年度の減免が決まっても抹消登録ができなければ翌年度の自動車税は課税されます。県はこの点を広域本部の収税課へ相談するよう案内しています。信販会社やディーラーとの所有権解除の話を並行で進めておかないと、翌年また同じ税額が来ます。
写真がない場合や、ナンバーが写った写真がない場合も理由書で申請できます。片付けの前に、ナンバーが読める角度で1枚撮っておくのが一番確実です。
民間の窓口では、ラグザス株式会社の中古車買取サービス「カーネクスト」が7月29日から被災車両の無料相談窓口(0120-301-456、受付9時~18時)を設けています。引き取りや廃車手続きの相談先の選択肢の1つです。
ここまでの内容は、常設の災害減免制度にもとづきます。熊本県のページの更新日は6月2日で、この地震専用に出された案内ではありません。7月30日時点で、県のサイトに令和8年熊本地震に限った自動車税の案内は出ていません。地震専用の取扱いが示されるか、被災者生活再建支援法の適用が決まるか。整備士オンラインはどちらも追っていきます。
車検の有効期間は別の措置で伸びています。対象の見分け方は「【令和8年熊本地震】熊本県に使用の本拠を置く車は車検が8月31日まで伸長」にまとめました。ローンが残っている車の扱いは「【噂の真相】地震で愛車が全損したら「残クレ・一括返済」を迫られるって本当?契約の罠と被災時のリアル」にあります。地震への備えと運転中に被災したときの動き方は「【緊急防災ガイド】熊本で最大震度7の地震が発生―車を運転中に被災したらどう動く?適切な対処法と避難ルール」です。
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